発光体との出会い
起きているか?
“わっ!?だ、誰だお前”
怖がるな、俺はお前の味方だ。
さっきはすまなかった。急に、その、死体を見させて。
“お前かっ?俺にあれを見せた奴!おい!めちゃくちゃ怖かったんだぞ!”
ああ、俺だ、本当にごめん。
迂闊だった……これはトラウマが残るかもな。
まぁ、できる限りのことはしよう。
ま、その話は後だ。時間がないので本題にはいらしてもらう。
“……?あ、ああ”
まず、これは夢じゃない。死んだ奴が夢を見られるわけないだろ。
“え、俺、死んでんの!?”
……記憶を遡れ。どーやっても死んだだろ。
“あぁ……でも俺生きてるぞ?”
転生って言葉知ってるか?
生まれ変わったんだお前。最近流行ってるだろそーゆーやつ。
“目を覚ましたら変なところで放置プレイかまされて、やっと外に出たと思ったら死体を見るやつなんて流行らないぞ?”
しかも女になってるしな。いや、それも申し訳なかったが。
“本当だよ。つーか、流行っているものって中世っぽい世界観のやつだろ?”
この世界も中世だぞ?まぁわかんないだろうが。
“マジか……現代という選択肢はなかったのかよ!?”
それは俺の管轄外だ。まぁこの世界もいいところだぜ?魔物もいるし。
“よくねぇ!あ、そういや本題はこれだけか?他にあんのか?”
忘れてた!ついつい話し込んじまったな。
よし、じゃあ話すぞ……お前はロボットに生まれ変わったのだ!!
“は?ロボット?え?嘘だろー?”
うそついても俺の得になんねえよ。
ま、人っぽいロボットでよかったな…過ごしやすいぜ?。あ、一応説明書置いとく。
“人っぽくてもやだよ!なんでロボットをセレクトしたんだよ!”
知らん。不老不死だからじゃないか?
お、そろそろ時間だな。じゃあな、楽しかったぜ〜。
“はっや!!ちょっと待て、聞きたいことがある!!なんで俺が転生なんてするんだ!!そしてなぜにロボット!?ちょ、おい!いくなああああああああ”
「あああああー!!」
はっ!ゆ、夢か、嫌な夢だったな。そして妙に腹たつ。
突然光る黄色い男が出てきて、恐怖心をブチって感じでもぎ取られて、転生だかロボットだかわけのわからないこと言われる夢とかふざけんなよ。誰だよあいつ。発光してんじゃねぇよ。かっこいいな!
……ん?
なんだこれ説明書?
座り込んでる俺の腰の方に、説明!とかいてある紙の束が落ちていた。
なんとなく嫌な予感がしたんで開いてみる。
《ロボットに転生しちゃったあなたへ☆
慌てなくてもだいじょうぶ!これを見ればご飯の食べ方から戦い方まで
丸わかりしちゃうよーーー!!!by天使ちゃん》
……誰だよ天使ちゃんって!!
つか夢じゃなかったってことか?これ。……もう、うん、いいや。夢ってことで。
考えることが面倒になった。もうんなこと知るか、ってスタンスで行こう!
んーでなになに?
《まずはインプットしてみよう!これを床に置いて手を当てればインプット完了!書いてあることが全て自分の知識となりまーす(やったね超チート☆)ちなみにこれは他の紙でも使える能力だよ☆この能力を【理解】 と言います!》
紙を床に置いて手をそっと置いてみる。
「!?」
いきなり、ちょっと頭がすっきりしたような、アップデートしたような感覚がきた。…何これ、ちょっと気持ちいい。
中身を覗きつつ記憶を見てみると、確かに書いてあることは全ての頭に入っている。
でも、なんだよアイシーって……
まんまだろうが!!英語でなるほど言っただけだぞ!?ネーミング━━━━!楽すんじゃ!ねぇ!
でも、これは確かにチート、つまり『ズルいほどできる』かもしれない。
いい感じに、ご飯の食べ方から戦い方まで丸わかりした!……けど。
食べ方おんなじだし、戦い方技名と結果しか書いてねぇし!
なんだよ『【焦点】:敵を撃つときこれを使うと百発百中☆』って?
便利そうだけどやり方わかんねぇよ?唱えりゃいいの?唱えたらどうなんの?何が起きるの!?こ!え!え!よ!
というか俺はチートなんていらねぇ!!
戦いには嫌な思い出しかねぇ!!どうせくれるなら生産チートのほうが欲しかった!!楽しそうじゃねぇか、何でも作れる夢のファンタジー能力!
それなのに……敵を撃つって。
元文化部、現中小服飾メーカー会社員に何をしろと。こちとらホラーは見ざる聞ざる言って堪るかでござる、の3ざるで生きて来たんだぞ!
前世でよく「無骨ですげェ強そうだよな。」とか、「暴力団潰したって本当?」
とか言われていても!いらんだろチート!!
アイドントライクバトル、アイライク平和……はぁ。
ピーピーピー
突然、頭の中に電子音が響いた。
うわぁ、物凄くピーピーピーピー言ってる…何これ目覚まし?
いや、これが【通知:神様からのアドバイスとかお願いとかを知ることができるよ☆】か?
《外に出て【翼】を使ってお前から見て右の町に行け》
……うわっ!?びっくりしたぁ。なんだ、これ急に。
物凄く知らない男の声が突然頭に響けばそりゃビビるよ。ヤッホーとか返せねぇよ。
……あーでも……そうだよなぁ、外に出なきゃなぁ……。
この出口に死体がお出迎えしてる場所で夜を明かすとか死んじゃうし、かといって意気揚々出口から出て陽気にご遺体にご挨拶、とかできないし。
いやでも、間違いなく外に死体があるという事実は俺の心のHpを削って行く。
いや確かに心を落ち着けることができる能力はあったぜ?でも少しなんだよなぁ。
恐怖心は見たら絶対戻ってくると思うし…
なんかないかなぁ…
知識、として入っている俺の技?の中から探してみる。
パラパラパラ……と、記憶を掘り返す。
新しい記憶を自力で操れることに喜びを感じつつ、つらつらと効果を見て行く。
あっ!こんな能力あった!!
【指人形:自分を操り人形にして、意識をなくして行動☆】
これ、いいかもしれない!自分の意識をなくして行動できるっていうことだろ?
……ちょっと怖いけど、唱えてみるか!
「マリオネット!」
ー了解、【翼】を発動しますー