表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/27

プロローグ

初めまして、ホワイトニャイガーです。

それは、熱中症になりそうなほど暑い日のことだった。


頭上をじりじりと照りつける太陽と、辺りを埋める蝉の声。

こうも大音量で鳴いてると、風流も何もあったもんじゃない。高らかすぎるぜ。


汗をしきりにハンカチで拭き、暑さでぼーっとする頭で道を歩いていた。


俺は藤原晃(ふじわらあきら)

今年で25、中小服飾メーカーに勤めている平凡な会社員である。


中学、高校の頃は平和に美術部をやっていた、根っからの文化系。

ジャンケンでさえもわざと負けたい平和主義者だ。


それなのに!偶然同じ道を歩いていたチンピラが騒ぎを起こし、それに巻き込まれて退学にされた……ちょっと人間不信になったぜあれは。トントン拍子に誤解されたからなぁ……何?開口一番君が首謀者か!って?通行人ですよ!


まぁ、こんな良い会社の会社員になれたのは奇跡としか言いようがない。

今平凡に生活できているのはあの時採用してくれた面接官さんたちのおかげだな、うん。


うん。


う……ん。


━━━━━━━━━!!


暑い!!!


もわもわとしたいやーな熱気が体中に纏わり付く。

汗でべたべたした服と相まって余計に不愉快だ!!


━━━━あぁ、いっそのこと、この橋から飛び降りてしまおうか?

間違いなく死ぬだろーが、橋の下にきらめく川はとっても綺麗で、涼しそうで、涼しそうだ。


なんて、少し危険なことを考えていた俺。

その後ろから少年の笑い声が聞こえてきた。


「きゃはは、きゃはは!」


少女の声も混じっている。


はぁ、子供は元気で言いなぁ……


肩越しに後ろを振り返ってみると、10〜13くらいのカップルのようだ。

先輩が同級生がと話していた。

どうやらかなり浮かれているようで、周りの目なんて気にしてない。


(あー…うん、青春だね……)


「よーし、ここからあそこまで、競争な!」

「えー?ちょ、ちょっとぉ!待ってよぅ!」


そして、走り出す音。

うわ、はええ…運動部かなんかのモテる男子だな。


やさぐれるぞ、まったく。


妙にはしゃいでいる子供の声に嫉妬しつつも、それでも相変わらずぼーっとしていた。


「邪魔!」


不意に後ろから響いた、子供のきつい一言。

反射的に横に飛び退いた俺を攻めないで欲しい。

いや、自分でも情けないが。なんか妙に感情がこもった声だったからなぁ。

情けない心持ちでなんとなく頭を掻く。……そんな時だった。


どん!と、後ろから何かが当たった衝撃。押し出された俺はそのままに少年は走ってゆく。あっ!という少女の声が耳をかすめた。


「うあ!!」


慌てて起き上がろうとしたが、手は空気をつかむばかり。

内臓がフワッと浮くような嫌な感覚が、自分が落ちたのだということを理解させた。


川の臭いが鼻を撫で、そしてーーーー



(あ、これは死んだか?)



そして不思議と落ち着いたまま、橋の下、きらめく水の中で俺は、死んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ