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美人さん無双

「な、なな…」


幼女さんが電動歯ブラシみたいに震え始めた。怖い。


「貴方なら出来るわ……私は、信じてる。」


漫画の感動回みたいに情感たっぷりに幼女さんの肩を優しく叩く美人さん。

幼女さんはまだ言ってんのか此奴!みたいな顔をしてフリーズ。

何これ、申し訳ない。いたたまれない。


「学園長たる者が、約束を違えたり、しないわよね?」

「うぐ……っ、…冗談だろう?」

「冗談なんて、私、言ったことないわ。」


嘘つけ。堂々と嘘を吐いた美人さん。…おぉう、めっちゃいい顔をして微笑んでやがる。


「…あと三日で学園のイベント……聖歌祭が、ある。」

「うん、うん」

「我は、その準備に追われている……」

「そうね、頑張ってる!」

「転入生の準備には、いくら頑張っても丸一日掛かる……」

「へー」

「我のやるべき仕事は、許可、準備、授業……山ほど、ある……」

「ほぉほぉ、で、だから約束を破る?」

「……破らん」

「そうね、頑張って!」

「まて!流石に……校長が……行事の前に……転入生を……優先するわけには……」

「でも、破らん!のよね♡」

「う……だが……し、しか……し」

「破らん!のよねっ♡」


おーっと!そこで出ました美人さんスマイル!先程の!先程の技です!にこにこです!


……と、一人取り残されまくっている俺は実況ごっこして見たり。

言動のゲスさを微塵も感じさせない無邪気な笑みを浮かべている美人さん。

たじろぐ幼女さん。ひとりぼっちとなっている少女さん。俺だ。


めっちゃ、寂しい。しかも、幼女さんにものすごく申し訳ない……

美人さんがこっちに目配せしてきたから黙ってるけども……


「……しかし、な。我は……校長として、やるべきことがあるのだ…必ずアーリを学園に入れると誓う。だから……」

「んー?」


苦々しそうに幼女さんが話し出した。


「我とて、大変なのだ。な……?頼む、わかってくれ…約束を破る、と言う訳では無く」

「そうね、ルグレ、わかったわ!」

「そうか!わかってくれたか!」

「で、アーリは明日転入ね、ちゃんと男って事にして置くのよー。」

「貴様我の話のどこを聞いていた!?」

「ーーー聞いてなかった☆今日の晩御飯なにかなーって」

「…………ロレッタ……貴様……」


ぷるぷるぷるっと涙目で幼女さんが美人さんを睨む。わわわ…大丈夫か?美人さんを見ると、楽しそうに笑って居た。ふと、幼女さんがギリッ…と奥歯を噛み締め…


「ーーーーーっ!もう知らん!ロレッタめ!今に見てるのだ!」


ソファをギシッ!っと音を立て幼女さんは勢いよく立ち上がった。

美人さんを指指しじと目を僅かに吊り上がらせ、頬を上気させて言い放つ。

美人さんがニヤッと笑う…怖い。


立ち上がった勢いそのままに、幼女さんはドアを開け放った。


「それと、今日の晩御飯はハンバーグだ!」

「わ!やった!」


いい人な捨てゼリフを残して。美人さんが手を叩いて喜ぶ。

……なんだろう、ちょっとほのぼのした。


《……あの》

「んー?なーに、アーリ?」


にこっと、ドアを見ていた美人さんがこっちをくりっと振り返った。

いい笑顔に一瞬黙り込んだ……が、美人さんはにこにことこっちを待っていてくれた。


《えっと、幼女さん行っちゃいましたけど……》

「うん!まぁ、あの子責任感強いしすっごく有能だからきっとどうにかするのよ!」

《へ、へぇ〜》

「ま、終わらなかったら私も手伝ってあげるし?」

《……何か、迷惑掛けちゃってすみません》

「ううん、平気よーこれぐらい。迷惑なんて掛けられてないわ!」


ぱややーっと笑う美人さん。きらきらした表情が眩しいぜ……

優しさにじんわり心があったかくなったが、同時に物凄く申し訳なくて涙が出そうだ。

いい年して、物凄く手を掛けられている。自己嫌悪に潰されそうだった。


「?どうしたのー?アーリ?……大丈夫?」


小首を傾げて心配してくれる美人さん。曖昧に微笑んで誤魔化す。

うぅ、優しい……。やべぇ、心苦しい。


「……元気無いみたいね?……そうだ!明日の寮生活に向けて、ちょっと買い物行きましょ!」


ぱぁあっといい笑顔で笑う美人さん。めっちゃ輝かしい明るい笑顔。

これ以上心配させたくなくて、俺は《はい!》と笑った。


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