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美人さんのターン

《ん……》


目が覚めて最初に感じたのは眩しさだった。

その明るさが目をつぶっても判るぐらい眩しい。


反射的に顔を覆うと、うぎゃあー!っと何か叫ぶような声が遠くから聞こえた。

妙に焦っている、聞いているこっちがドキッとするような声だ。


《うぉ!……あれ?》


びっくりして起き上がって初めて、自分がベットに寝ていたことに気がついた。

あれ?なんで俺、ベットで寝て……?

たしか、二時間ぐらい幼女さんの話を聞いて……ふらっふらになったところで美人さんが無理矢理帰って、道で「あの子はなにかにハマりやすいのよー(笑)」『そうなんですか!』みたいな会話をして……で……それから……


あ!!


確か路地裏を抜けたあたりで美人さんが悲鳴を上げて……それから……それから……後ろから攻撃っぽいのをされて……天使ちゃんとか名乗る女の子……あぁそう、天使さんに会って、話したっけ?えっと、そのあと……あれ?ん、えっと……?

良く思い出せないが、気が付いたらここにいた、と。


バァン!


《うおぁ!》


そうやって寝呆ける頭で一生懸命現状把握していると、突然ドアが勢いよく開いた。


慌ててそっちを見てみると、凄い形相で立っている美人さん……と、何故か肩に担がれている幼女さん。

じたばたと暴れているが、美人さんの美しい細腕にがっちりホールドされて動けていねぇ……

ちょっと昔飼ってた猫を思い出した。よく姉貴に抱きしめられてじたばたしてたなぁ……


「アーリ!起きたのっ!?」

「離せぇぇ!」

《……えっと、もしかして、俺かなり寝てました?》

「うん、えっと……丸三日ぐらい?ものっすっごく心配したんだからねっ!」

「離せぇぇ!」


当然の様にスルーされている幼女さんをどう扱うべきか少し迷ったが、とりあえずスルーしておく。

っつか、俺丸三日も寝てたのかよ!何やってんだよ!


《…その、ご迷惑をお掛けしました。》

「あら、別にどうってことないわよ?それぐらい。私の手にかかればねっ!」

「嘘つけい!この部屋の手配も何もかも我がやっただろう!」

「あれ?いたの?ルグレ」

「…っ!貴様!肩に担いでたくせに存在を認識していなかったのか!?」

「ふふ、冗談よ〜」

「冗談でもそれはそれで問題じゃろがいぃぃぃ!!!」


きっしゃああああ!と威嚇するように文句を言う幼女さん。

猫っぽい。和むなぁ…じゃ、なくて!


《ようじょさ…っと、ルグレさん。ありがとうございました。》

「貴様今何を言いかけたぁぁぁああああああ!!!」

「あっははは、あっははははは!ナイス!ナイスアーリ!」


…しまった。お礼を言おうと思ったら、つい幼女さんよわばりしちまった。


「笑うなロレッタ!アーリはそこへ直れ!」

「あはは、ははっ!もうルグレもそんな怒らないでー、可愛い間違いじゃない?」

「可愛くなああああい!!!!」


ぎゃあぎゃあと怒る幼女さん。やっべ…身の危険を感じたので素早く幼女さんの前に正座する。

そこで初めて、自分が、ピンクのフリフリのネグリジェを、着用していることに、気がついた。


《…!?》

「なっ!お前、なぜ我の寝間着をき……っ」

《え!?これ幼女さんのなんですか!?》

「いや違う!えっと、これは、そのだな」

「あ、それルグレの部屋に置いてあったからかわいいなーって着せてみたよっ!」

「なっ!まだ我も一度も袖を通していない限定デザイン物をなんだとっ……あっ」

「あはは、やっぱりルグレのだったんだ!」

「違う!」

《えっと……とりあえず、これ脱ぎましょうか?》

「やめろ!そんな目で我を見るな!」

「あはは、脱いであげなさいよー?」


顔を真っ赤にさせて言い訳している幼女さん。もう自分が担がれていることは気にしてないみたいだ。

つーか、美人さん……幼女さんに対するいじりスキル凄ぇな!


「やめろ!いい!本当に脱がなくていい!」

「えー、いいのぉー?」

《……》


けらけらけらと大笑いする美人さんは、いきいきしていてほんとうに美人だと、ふと思った。

そういや、こうやって改めて見てみると…忘れかけてたが二人とも絶世クラスの美女じゃないか?これ。

肌さらさらつやつやだし。プロポーションいいし。髪もきゅーてぃくる…だったっけか?がつやつやしてるし。


そんなことをふと思いつつ、俺はぼんやりと正座していた。

つーか……ふりふりネグリジェ……その状態で正座……コレ何て羞恥プレイ。やめてくれ。


お、ひょいっと、美人さんが幼女さんを肩から降ろした。んで、幼女さんが高級そうなソファに座った。

おぉ……踏ん反り返ってる。威厳は……あるけど……うん、何か可愛い。


……いいなぁ……ソファ。俺……正座……やめていかな、これ……

ふりふり着ながら正座って……あの、恥ずかしーんだが……その……



「えー、どうしても自分のじゃないって認めるの?」

「ったりまえじゃ!」

「本当にぃ?」

「……?あ、あぁ」

「どうしてもぉ?」

「う、うむ」

「認めないためならなんでもするぅ?」

「……いや、なんでもは」

「えー?じゃあ認める?」

「うぐぅ……貴様っ……認めん!」

「じゃあさ、一つだけ、なんでも聞いてよ。お願い?」


手を合わせてにこっと微笑む、美人さん。気持ち動揺する幼女さん。

おう、あれだよな、うるうるして見上げるより無邪気に小首を傾げて笑うほうが断りづらい時って……あるよな。爽やかに、でも甘えるように笑うその顔には、幼女さんを黙らせる効果があるようだ。


「ひ、一つ叶えたら……認めなくていいのだな」

「うん!」

「……ついでに、ネグリジェは返すか?……あくまでも、ついでだぞ?」

「うふふ〜もっちろん!」


ルグレと私の仲じゃない♪と笑う美人さん。…どの口が言う。ちゃっかりしてんなぁ。


「いいだろう!なんでも!叶えてやる!」


きりっとした顔で吠える幼女さん。

……あれだな、なんでも叶えるってこの短時間に決意した所で幼女さんの美人さんに対する信頼が伝わるよな。

絶対にこいつなら理不尽な事……いや、死んで♪とかお金くれ♪とか言わないって言う。

仲良いなぁ。和むぜ。

……やべぇ、足痺れてきた……正座やめたい。

耐えろ!耐えるんだ俺の両足!今はまだ、目覚める時じゃない……

……我ながら、何が目覚めるんだ?怖えーよ。


と、一人で足の痺れでちょっと寂しく遊んでいると。


「じゃあ、明日までにアーリが学園に転入できるようにして♪」

《えっ》「……は?」


……美人さんがまた言い出した。

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