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【彼女の見た今日】 後編

続きの取り締まりでいろんなことを聞いた。

お金がないこと、家がないこと、知り合いもいないこと、そして━━━━自分が何者かもわからないこと。

たぶん記憶をなくされたんだと思う、よくあることよ。大事なことを知ってるかもしれない貴族の記憶を、殺すかわりに奪う。そっちの方が罪悪感も少ないしね。あーあ、もう、許せない!

…なんか、騎士団一の話し上手ロバートが生き生きしているのが気になるけど。あいつの語り口はまさにプロ!宝が持ち腐れまくっている話作りの達人で…あ、そういえば…なんだっけ?じゅえっか様の加護持ち…とかいってた気がする。ま、どうでもいいわね。あ、そんなことを聞いてるうちにメイドが泣き出した。


「ううぅ、ぐすっひっくうぅ…ごめんなさいっ!あなたみたいな不幸な少女を取調べ室につれて行くなんて…」


そしって謝りだした。それにならってあたし達も。


「本当に済まなかった」

「えぇ、今回は謝るわ」

「「申し訳ございませんでした」

「父に溺愛されていた貴族令嬢で、父が死に家から追い出されたなんて知らなかったの!」


あっ、こら、もう!メイド!そんなこと言わないでよ、思い出させちゃダメ!今だけでも、つらい現実を忘れさせてあげて!


「そうだ、金がないと言っていたな。後で1000ギル渡そう。」

「あ、ありがとうございます?」


‥‥‥なんで疑問系?あ!もしかしてお金の単位もわからないの?


「やだ!お金の単位もわからないの?……わかったわ、一からぜーんぶエリウス王国のこと教えてあげる!」


さぁ、あたしに任せなさいっ!


「さっ!早速行くわよ!ついてきて!」


百聞は一見にしかずっていうしね、それに思い立ったが吉日、今すぐ!いってきまーす
















おっそいわねぇ、もー息切れなんかしてるし。


「はぁ、はぁ」

「おそーい!」


追いついたアーリの不満そうな目を見て、アーリが箱入り令嬢だって気づいた。


「はっ!ごめんなさい、箱入り令嬢だったわね!走れるわけないかぁ。」

「はっ、はぁ、ふぅ、ロレッタ様が速いだけです…」


言うと同時に倒れ込むアーリ。


「ふふん、そりゃそーよ!あたしは王国、いえ大陸一足が速いんだから!!」


…なによ、その目は。


「まぁ、着いたからもうどうでもいいわね。…みなさい!」


ドアの上にデカデカと冒険者ギルドと書いてある看板を掲げている茶色の建物を指差す。

……………ふふん、戸惑ってる驚いてる。


「ここは冒険者ギルド!お金が欲しい無職どもガキども誰でも、仕事を手に入れることができるの!じゃ、次行くわよ!」


アーリは驚いてるみたいだけど、こんな酒臭い建物には入りたくないからね、さっさといきましょ、れっつごー!






「はぁ、はぁ」


またアーリの息切れが聞こえる。

もう、これしきのことで何息切れなんて起こしてるの?ゾンビみたいになってるわよ?


「次はここ、雑貨市場!」

「へ、へぇぇ…」


むぅ、疲れて話も聞けないようね。もー、なんか水でも買ってきてあげよっと。


「おじいさーん、なんか飲み物ある?」


店主に声をかける。

ここ、雑貨市場の醍醐味は何でも売ってるところ!飲み物から武器から、使用人まで!

あ、この店はこの雑貨市場の飲み物人気店ランキング堂々の6位!怪しい者さえ売ってなければたぶん1位のおいしさ!


「ほれ、飲み物屋だからあるにきまってんじゃろ。新作ジュース、飲むかー?」

「ありがと、二人分ちょうだい!」

「はいさ、100ギルじゃ」

「はーい」

「あ、あれぇ?副騎士長様、な、なにかかうのですか?」

「あら?アーリ、生き返ったの?」

「生き返るって‥‥私はゾンビかなんかじゃないんだから………」

「すっごーい!あたり、ゾンビ☆」

「ひどっ!」

「ほれ、ゾンビの嬢ちゃんには特別なやつをやろ。」


年甲斐もなく落ち着かない、まるで悪戯少年のようにウキウキとした声に、ぞっと背筋が冷えた。それって、え、ちょ…まちなじじい!


「え、ありがとうございます。でも私ゾンビじゃありません!」

「えーからのめのめ「だめだめだめ!飲んじゃダメぇ!」」


この店の店主はときどき怪しい液体を客に飲ます。それさえなければいい店なんだけどね!でも本当にこれは洒落になんないのよ。

この店主の被害にあった者は数知れず、女になったり空に打ち上げられあげたり反対に地面に打ち付けられたり大変だからね、あーもう店主、何してくれたの、もぉ!


「え、もう飲んじゃいましたけど………!」

「あああああ!」

「むははは」


どうしよどうしよ、まって、落ち着け、と、とりあえず店主を絞めなきゃ!……じゃなかった、飲んだらどうなるのか「落ち着けィ、そんなえらいもんじゃないわい」

「でも、でも!」

「なぁに、いまに効果が出てくるさぃ、待て待て」

「待てるわけないで《あの、これ飲んだら能力が使えなくなっったって聞こえ!?》え!?」

「ふむん、声が男になったのぉ」

「あああ!女の子なのにッ」


アーリは、声が男になる液体を飲まされたみたい。男の声になっちゃった‥‥


《お、ラッキー》

「ラッキー、じゃない!………あ、ラッキーなのかな?女の子扱いされたくないって言ってたよね?」


むぅ、結果オーライなのかな?折角可愛い声だったのに…


「結果おーらいじゃのぉ、むはは」

「………」


なんかむかつくなー。この悪戯爺むかつくなー。物凄くイラってするなー。


《あ、でも能力が使えないのは困るなぁ》

「解毒剤あるぞい」

「毒だったの!?」

「これさ、ほれ」

《牛乳?》「あれ?美味しそう!」

「むはは、ちょーまずいぞう、にっがーいのじゃ」

《なんでいうんですか!?言わなければ飲めたのに!》

「飲まなくていいぞい☆」

「いいぞい☆じゃなーいッ!お前のせいじゃないの?!」


あーむかつく!このジジイ!


「コラ!今度は何したの、おじいちゃんッ!」


ダーン!という音がして店から誰か出てきた。

茶色の三つ編み、ぼろっちいエプロン、そばかす、なんか田舎娘みたい?でもかわいい。むぅ。


《え?だれ?》

「むはははははっ、わしのかわいい孫娘ぞ!」

「叫び声がしたから来てみれば!おじいちゃんまたやったの!?」

「そうよ!あんたのジジイがかわいそうな貴族令嬢をいじめたのよ!」

「おじいちゃん!あぁ、なんてことを!」

《いや、大丈夫です。結果オーライですから》

「ひぃっ!だ、だれ?」

「あんたのジジイの被害者よ!」

「そ、そうですか。ちょっと怪しげですね」

「事情があんのよ!」


もぉ、失礼なやつ!ほら見なさい、アーリが傷ついてるじゃない!

白いローブの中、小柄な体をしゅん…ってしてる。


《怪しい…》

「ご、ごめんなさい」

「むぅ、ほんっと失礼なやつら!お詫びの品もないの?」

「うわぁ、がめついのぉ」


うるさいくそじじい、ジュースの腕前以外にいいところないの?


「なにいってんの?聞こえてるわよ!」

《お、お礼なんていいですよ。》

「いえ!そんな訳には行きません。そうだ、今日このぼけジジイから服をもらったんです!差し上げますよ!」

《いえいえいえいえいえ、大丈夫ですって》

「いいわよ、もらっときなさい!」

「やらん!わしは愛する愛しい愛孫にやったんじゃ!」

「どうぞー」

《あ、ありがとうございます…》

「のおおおお!」

「ありがとう、じゃあねー」

「ありがとうございました!」


こんなところじゃなくて、もっといい次の場所いくわよ!


《ま、まってくださーい!》

「もう!手を貸しなさい!」

《え、ちょっと、うわわあああああーー!》


白いローブのせいで走りにくそうなアーリをひっぱって道を爆走、目指せ次の目的地!









「ついたわ!ここが本日最大のメイン!王立学園付属図書館!」

《はぁ、はぁ、おう、おぉ………うっわ!でっけぇ!》


ふふん、すごいでしょう!

この王国一の学園だからね、すっごい図書館が必要でしょ!


「学園中の生徒が全部入りきるのよ!」

《え?学園なんてあるんですか?》

「あるにきまってんでしょ!」

《はぁ、ひぃ、へぇ‥‥いいなぁ、入りてぇ》


‥‥‥‥そっか、箱入りだから学園にも行ったことがないのね。かわいそうに‥‥

「はいる?」

《え?》

「学園に入ればいいじゃない!」

《え?私、入れるんですか?》

「入れてあげる!」


幸い理事長と知り合いだから、たぶん入れてあげられるはず。

学園なら寮生活もできるし、ちょうどいいわね!


「待っててね、今許可取るから!」

《え、え?ちょ、ちょっとまって》

「あ、もしもし?」

《‥‥!》






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