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【彼女の見た今日】 前編

美人さん目線です。

みなさん、初めまして!あたしは王国副騎士長、ロゼッタ。


王国騎士って、平民だろうが元乞食だろうが、貴族と同じくらいの権力を持っているから、巷ではロゼッタ様って呼ばれてる。


ふふ、特にあたしは右の炎剣士様って言われて尊敬されてるの。私の剣筋が見えにくくてまるで炎の乱舞のよう…ってことらしいわ。

ちなみに、左は騎士長様。左の氷剣士!これは、氷のように冷たく鋭い剣筋だから♪私はその剣筋に人生を救われたことがあるのよ?いいでしょう?


………左右でセットだから夫婦とかカップルとか言われてるけどね、騎士長様は私のこといい部下としか思って無いみたい。

こっちは騎士長様に憧れて騎士になったって言うのに!結婚してないみたいだし、あたしにもチャンスはあると思うんだけどなぁ……。

まぁ、騎士長様の職場男ばっかだし、女だってあたしほどの美人はいないし、恋仲になるとしたらあたしだけよね!





なーんて考えてたあたしをぶん殴りたいわ。右ストレートよ、全力の。掛け声は「どっりゃぁぁぁぁあ!」で。

今日、なんか不審者が現れたみたいであたしたちのチームが見に行くことになったの。そしたらそいつ、真っ白いローブをかぶっててね、まぁ、怪しいし取ってもらうことになったのよ。



…そしたらなんと!そいつ、すっごい美人だったの…っ!

ツヤツヤさらさらのロングストレートの黒髪、真っ白な肌、プルプルの唇にスリムな体、そして何よりキラキラの黒曜石みたいな大きな瞳!

つり目気味なんだけど、やる気が無いみたいでジト目になってるのがまた可愛い!ちくしょう…


…えぇ、人生で最大の敗北感だったわ……騎士の馬鹿どもが見とれてるのがまた腹立つ!どうしよう、騎士長様が、惚れてしまったら………いえ!いいえ!こいつは罪人よ、悪い奴には騎士長様はなびかない、はずよ!えぇ、罪人には、罪人には!





そして、ただいま馬車の中。この罪人…アーリを取調室に連れて行くのが目的。うぅ、もう誰か喋りなさいよ…っ!空気が重い…気まずい!

そんな思いでなんとなくちらちらアーリを見ていると、アーリが意を決したように口を開いた。よし!喋りなさい!


「あの、王国騎士ってなんなんですか?」


馬車の空気が、一気に固まった。

え、うそ、正気?あ、冗談?こんなの知らないのいまどき箱入り令嬢ぐらいよ!?

……ん?あ、もしかしてあたしたちがだらしないから、なにしてるの?最近の王国騎士ってなんなの?みたいな、そんな意味?さすがに怒るわよ!

…相手の実力がわからないからなるべく下手に出とけって言われてるけどね?


「そ、それは我らがあまりにも軟弱すぎたり、だらしないからどうなっているのだ、お前ら本当に騎士か、という意味だろうか?」


あっ!騎士長様も同じことを思ってた!そうよね、そういう意味よね?

あら?なんか罪人が慌て出した。どうしたのよ?


「違います!そういう訳ではなく、あなたたちがどういった職業をしているのか純粋にわからないのです。ただのおっさん…失礼しました、おじさんの集まりなのか、それとも偉い方々なのか、私にはわかりません。」


慌てて訂正し出した………けど、私は聞き捨てならないことを聞いた気がする。

……おっさん、と確かに聞こえた。

騎士長様をた・だ・の、おっさぁん?あぁん?おっさん?かっこ良くてお美しくてお綺麗で才能溢れて、お優しくてそこらのおっさんとは月とすっぽん、天と地ほどの違いの、素晴らしい騎士長様をただのおっさん?


「……………おっさん?」

「うえっへん。こら、そんなことで怒るな。…失礼した。そういうことだったのだな。」


なんかおこられちゃった。でも、でも、でも、おっさん………おっさん…ただのおっさん…あたしの世界一尊敬する騎士長様を、おっさん、ただのおっさん呼ばわり…………


「ダスガ様は騎士長なんですよね?ということはかなり高い地位をもっているのですか?」


ふ、ふふふ…ダスガ様、だと?あたしでさえ出来ない名前呼びを堂々としやがって…?罪人のくせに、なんて恐れ多い!

ふと、私の何かが切れた音がした。具体的には、おそらく堪忍袋の尾。


「いや、そうではない。わたしはただ王国騎士をまとめる仕事をしているだけで、地位は他の王国騎士と変わらな「違う!」」


「騎士長様は!威張らない素晴らしいお心をお持ちだから、他の王国騎士とおんなじ地位だなんていってるだけ!ほんとはとっても偉いの!それなのにあなたはただのおっさんの集まりなんて抜かして!不躾に地位を聞いて!挙げ句の果てに騎士長様を名前で呼んで!なんて馬鹿「ロレッタ、謝れ!」あっ…!」


きりっと、騎士長様がこっちに怒った。冷水を浴びせられたその声に途端に恥ずかしくなって、目を伏せたまま謝る。


「…ごめんなさーい」

「いえ、私が悪かったですし」


うん、そうね。80%あんたが悪いわ…!王国騎士として感情が高ぶったことは認めるけど。


「本当に済まない、騎士たるもの、男たるものは強さに関係なく女性は守らなければいけないのに…」


……やっぱり素敵、騎士長様……。女性は守る、の言葉に涙が出そうになる。戦場でも私を守ってくれるものね。


「あの、女扱いはやめていただけないでしょうか?お気持ちは有難いのですが、女だと思われたくないので…」


でも、女性の代表!みたいな美しい顔をしたアーリが、そんなことを言った。

えっ!なんで?……もしかして、なんか訳あり?なのかしら。さっきの後ろめたさからふとそんなことを考えた。王国騎士知らなかったし、本当に箱入り令嬢かも。


コンコン


そんな中、不意にドアがノックされた。そういえば、いつからか馬車が停まってる。もうついたのかしら?

ドアを開けると、降りる準備を整えた御者が立っていた。


「なに?」

「はっ!王宮に到着いたしました!」

「ご苦労さま」


どうやら目的地についたみたい。さぁ、騎士長様を取られないようにがんばるわよ!


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