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たい焼き屋の坂を登る6


6.

 日曜、部屋で漫画を読んでいた。続きが異常に気になって、何も手がつかなくなること数時間。そんなに気になるなら続きを自分で勝手に考えてやろうとするも全く想像がつかない。だから面白いのだなぁ、と納得。気分が晴れたせいで夕食のから揚げが倍おいしく感じる。松田からメールが届いていた。

“明日話したいことがある。“

わざわざメールするほどの用件でもない気がして首をひねる。

 翌日。松田から一体どんな告白があるのかと思いきや何もない。あれだけ思わせぶりなメールをしておいて、それはないだろうと問い詰めたが、そもそもそんなメールは送っていないと言う。何かがおかしかった。松田にはそれ以上何も言わない。取りあえず変なメールのことは胸の内にとどめておいて、後からもう一度確認する。

“明日話したいことがある。“

確かにそのメールは存在している。


 恵子に言われた。

「松田君と白石さんって不思議な感じだよね?」

「どこが不思議?」

「なんていうか。恋人じゃないっていうのは良く分ったけど、友達にしてはディープじゃない?」

恵子の言うほど私と松田はディープでもないと思うのだが、彼女がそう感じるのは自由ではある。

「白石さんたちみたいな関係いいなぁ。」

相変わらず恵子との会話は返事に困った。でも最近恵子と二人でいても気づまりにならないのは進展である。


 ドライフルーツを口に含みながら考えていた。松田から着たはずのメールは一体何だったのか?可能性はいくつかあると思う。一つ目は、松田は確かにあのメールを送ったが、送ったことを忘れていた。二つ目は、やっぱり私に話したくなくなってメールなんて送っていないと嘘をついた。三つめは、松田はメールを送っていない。松田のアドレスを悪用して誰かが私にメールを送って来た。一番あり得そうな話は二つ目だが、三つ目と一つ目だってないとも言い切れないだろう。じんわりと嫌な予感が背筋をなぜた。

 忘れていたにせよ、嘘をついていたにせよ、松田を問い詰めればはっきりするかもしれない。ケータイに記録は残っているだろうし。消していなければ…。


 家で動画を見ている。たくさんのきれいな写真のスライドショーにテンションの上がる洋楽。なんだかもうメールなんてどうでもいいような気もしたのだが、改めてもう一度読み返すことにしてケータイを見る。そのとき、ふとこの頃気になっていたことと、このメールが何か関係しているのではないかと気づく。別に嫌な感じはしなかった。なんとなく、そうか、と思っただけ。松田にメールしておいた。

“明日話したいことがある。”


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