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14 smoke books〜その選択の果てに――〜

作者: 絢香redeyes
掲載日:2026/05/16

日本 北海道 智恵文市ちえぶんし

令和八年 夏

朝 晴れ


彼はあることについては中途半端だが、中学校をサボることはまったく断行できる。黒い短髪の中背で、長袖のワイシャツ、紺のジーパンを着ている彼――カラトは今日も学校をサボり、その田舎町――盆地――の森の中にいる。彼が立っているのは遊歩道の上だが、人は滅多に来ないし、その入り口はすぐカーブしているので、一人になりたい時はもってこいだ。そのカーブの少し先で、彼は今日もぼんやりと立っている。くだらないことをしないように。

やがて、彼はふと森を出る。目の前は道路が横たわっている。彼はその道を右に行き、数分後、公園に着いた。貸しボートや売店もある広い公園には誰もいない。彼は遊具のそばのベンチに腰かける。そしてまたぼんやりとする。昼まで――とはならなかった。ふと、彼は彼の目の前を横切ろうとした相手に声をかけられた。キミもサボり? と不審げな表情で。

彼は、その黒髪のロングヘアで薄い緑色の長袖ワンピースを着た中背の相手に見覚えがあった。

「意外だな、キミもサボるなんて」と、カラトは不思議そうに言った「ノリエさんだよね? クラスは違うけど知っているよ」

「あらどうして?」と、彼女はやはり不審げな表情で聞く「私が富豪の娘だから?」

カラトはうなずく。

と、ノリエはがっかりしたようだが、ふと微笑して、「まぁそうよね。――どうしてここにいるの? 私のこと待ち伏せしていたの? カラト君」

「えっ? 違うよ」

どうして私の名前を? と、彼は付け加えた。

ノリエはまた笑い、「さぁね。――隣、いいかしら?」

「どうぞ」

「ハンカチ敷いてくれる?」

「ハンカチ? 持ってないよ」

「あらそうなの?」と、ノリエはシアン色のハンカチを取り出し、カラトに差し出す「使う?」

「さすがだね。いいの?」

「一万円」

カラトは苦笑して、「ハンカチ屋の娘らしいね。けれどちょっと高いな」

「甘いハンカチだからね。で、使うの?」

「後払いできる? 今何も持ってないんだ」

「良いわよ、成立」

カラトはハンカチを受け取り、広げてベンチに敷く。

「どうぞ」

「ありがとう」と、ノリエは座る「何も持ってないってなんで? 不便と退屈でしょ?」

「まぁ不便だね。でも退屈じゃないよ。――そう、私は何も持ってないわけじゃないんだ」

「へぇ、かっこいいわね。それは何? 教えて」

「悪いけどそれはできない。――ていうか、ベンチにハンカチを敷くってデートのマナーじゃないか。なんでハンカチを頼んだんだ?」

「そうね、ここじゃあまり必要ないわね。――ねぇ、また会ってくれる? 今度は学校で」

「学校は嫌だな」

「じゃ“サージョー”の一階にあるフードコートでどう? 今日の夕方に」

と、ノリエは立ち上がる。

「良いけど、すぐ再会だね」

ノリエは微笑して、「嬉しい?」

「えっ?」

「なんてね。じゃ“サージョー”の入り口前に集合ね。今度は財布持ってきてよ」

と、彼女は去った。

昼ちょっと前、カラトは市役所の前にいる。

またぼんやり立っていると、「すみません」と、ふいに横から話しかけられた。

見ると、褐色の外国人異性が二人いた。

(親子かな?)

と、思ったカラトは片方の同年代の少女を見て、

(……なんでおどおどしているんだ?)

と、不思議に思った。

「市役所はここでいいですか?」と、もう一人の若い女性がカラトに聞いた。

「そうです」

「ありがとうございます。それでは」

「待って」と、カラトは少女――長い黒髪を後ろで束ね、小柄な身体に学生服を着た――を見る「なんでキミ、そんなおどおどしてるの?」

「……自分に自信がないからです……」

「どうして?」

「……自分には何もないから」

「なら私と一緒にいればいい。そうすればキミは自信が持てるよ。一緒にいよう」

「えっ!?」

「名前は?」

「キャ、キャシー……」

カラトは微笑する。「いい名前だね」

少女はぽっとする。

「キャシー」と、女性が呼ぶ「手続きは私がするからキミは彼といなさい」と、微笑みながら言って、カラトを見る「キミの名前は?」

「カラトです」

女性はうなずき、キャシーに、「いいわね?」

「う、うん」

女性は市役所へ向かう。

「なんの手続き?」と、カラトはキャシーに聞く。

少女は戸惑いを見せながら、「転入届です。この街に引っ越してきたから」

「まだ自信について悩んでいるようだね? まぁそれもそうかな。――中学生?」と、カラトは少女の服装を見て聞いた。

「はい。中一です」

「じゃ同い年か」

「えっ? そうなんですか?」と、キャシーは驚いて言う。

「うん。――お腹減らない? どこか食べに行こうよ」と、カラトはキャシーの手を取る「行こう」

少女は赤くなって、「は、はい……」

二人は市役所などが面した駅前通り――南北に横たわる――を北へ歩き出した。

「同い年なら敬語はいらないね」と、手を繋いで並んで歩きながらカラトは言う「学生服なんで着てるの?」

「転入届の手続きが終わったら学校へ行こうと思っていたんです」

カラトは微笑して、「敬語はいらないよ」

「う、うん。――カラトはどうして外にいるの? 学校は?」

「サボった。そうだ、キミもサボろう」

「えっ? それは駄目だよ」

「けれどそうじゃないと一緒にいられないだろ? 大丈夫、一緒にいれば。だからサボろう?」

「う、うん……」と、少女は戸惑いながら、ちょっと笑って答えた。

数分後、二人は食堂の前で足を止めた。

「ここは小さいけど味は中々だよ」

「じゃここにしたい」

「うん。――ごめん、財布取りに家に帰る。キミは――そうだな、食堂か図書館で待っていてくれ」と、カラトは食堂の隣の建物を指差す「これが図書館」

「私も一緒に行きたい」キャシーはためらいながら言った。

「そう? なら行こう」

「あっ、待って。図書館で本を借りたい。この街の歴史の本」

カラトは首をかしげる。「いいよ。――本が好きなの?」

「うん。特に歴史の本」

その本は司書に聞いてすぐに見つかった。

それから二人はカラトの家へ。彼の家――三階建て六部屋のマンション――は駅前商店街の近くで、数分で辿り着いた。彼の部屋は最上階だ。カラトはキャシーを居間に案内した。

「座ってて」と、カラトはソファーを勧めた。

キャシーはうなずくが、「親は?」

「別々に暮らしてる。そういう教育方針さ」と、カラトはソファーの前のテーブルを指差す「本、テーブルに置けば?」

「うん。――食事のあと、ここで一緒にこの本を読まない?」

「うん、分かった」

そうやって過ごして、夕方、カラトはふと思った。

「ちょっと用事がある。――キミも行く?」

「うん」

カラトはキャシーを連れて、集合場所の“サージョー”へ。そこは老舗の百貨店――二階建て――で、彼の自宅の近くにあった。

「あら?」と、すでに入り口前に来ていたノリエ――学生服姿――は、カラト達を見て不思議そうな顔をした「その子は?」

「彼女はキャシー」と、カラトは言った「キャシー、彼女はノリエさん。私のクラスメイトだ」

「どのクラスでも見たことないわね」と、ノリエは戸惑っている様子のキャシーを見て言った「転校生?」

キャシーはぎこちなくうなずいた。

ノリエは、「そっか。――もしかして兄がいる?」

「いいえ」

「そう。上の学年にもいるのよ、似たのが。だから兄妹かなって。――カラト君、財布は持ってきた?」

「うん」

「なら行きましょう。――キミも一緒にどう?」

「えっ?」と、キャシーは戸惑いながらカラトを見る。

彼は、「行こう?」

「う、うん」

フードコートは主に学生達で混雑している。しかしカラト達はすぐテーブル席に座れた。男子学生グループが快く譲ってくれたからだ。

「カラト君」と、ノリエは向かいの彼を呼ぶ「飲み物は何が飲みたい?」

「飲み物? ――コーラが飲みたいな」

ノリエは微笑して、「コーラね。もらってくるわ」と、立ち上がる。

「えっ、別に自分でやるよ」

「いいからいいから。――キャシーさんは何にする?」と、ノリエはカラトの隣の少女に聞く。

「あっ、じゃ私もコーラで」

「分かったわ」と、ノリエは席を離れる。

「カラト」と、キャシー。

「何?」

「ノリエさんとはどういう関係なの……?」と、キャシーは不安そうな顔で聞く。

「カワイイね、キミ」

と、二人の前からそう聞こえた。見ると、学生服を着た褐色の外国人男子が立っていた。彼は微笑しながら、「一目惚れした。私と付き合ってくれないか?」と、キャシーに言った。

「えっ!?」

と、戸惑うキャシーは、ふとカラトの腕に触れる。

と、褐色の外国人男子はカラトを見て眉をひそめる。

「キミは確か一年の。キミは彼女にふさわしくない。消えろ」

カラトはむっとする。「それは彼女が決めることだ。キャシー、手にキスしていいか?」

「えっ!? う、うん……」

カラトは彼女の手を取る。

「やめろ! それ以上するな!」褐色の外国人男子は怒鳴る「不良が調子に乗りやがって! 表に出ろ! すけこまし!」

「良いよ」と、カラトは立ち上がる。

「カラト!」

「大丈夫だよ、キャシー。キミはここにいて?」

男子二人は屋上のがらがらの駐車場へ。

「言っておくが、私は勉強もスポーツも万能だ」と、褐色の外国人男子は言った「ルックスはハリウッドスター並み。そしてケンカが強い。彼女から手を引くなら今だぞ?」

ふいにカラトの顔が曇る。だが次の瞬間、彼はふっと笑い、「先輩、そんなんじゃモテないですよ?」

「ほざけ!」

「そこまでだ!」

と、横のほうから声。見ると、スーツ姿の若い男がいて、「カラト君に危害を加えることは許さない。立ち去れ」と、褐色の外国人男子に言った「学校に通報するぞ?」

「くっ……。分かりました」

と、褐色の外国人男子は言われた通りにした。

「意外だな」と、カラトは男に言う「暴力を止めるなんて」

「そうかな? それより今日はいなかったな? 無意味に思えるだろうけど頼むよ」

「うん」

カラトは席に戻ると、「大丈夫!?」と、キャシーは心配する。

「大丈夫だよ」と、カラトは座る。と、彼はコーラを一口飲み、「ありがとう、ノリエさん」

「話は聞いたわ。あいつに勝ったようね?」と、ノリエは微笑しながら言い、立ち上がる「また会ってくれる?」

「良いよ」

「じゃメアド交換しよ?」

「携帯は持ってない」

「あらそう。ならばったりに期待するわ。じゃね」

と、ノリエは立ち去った。

「カラト、私にもまた会ってくれる……?」

「もちろんだよ、キャシー」

キャシーは微笑して、「海に行きたいな」

「海? なら今すぐ行こう」

「えっ? 今すぐは無理じゃない?」

「なんで? 夜の海は嫌?」

「夜の海? ――うん、夜の海は怖いな」

「私と一緒なら大丈夫だよ。まだ一緒にいたほうがいいんじゃない?」

「……うん。今から海に行きたい」

翌日の昼前、カラトは市役所の前にいる。

と、横から声をかけられた。見ると、ノリエ――赤い長袖ワンピース姿――がいて、「浮かない顔してるわね。何かあった?」

「キャシーの親に叱られたんだ。夜中まで彼女と遊んでいたから」

「それで落ち込んでるの? 叱られるのなんて慣れてるんじゃないの?」

カラトは苦笑する。「ちょっと違ってね。――学校は?」

「キミに会いに来たの。今からどこか行かない?」

「悪いけどちょっと用事が――」

「大丈夫。私が言ってあげるから」と、ノリエは遮った「“今日の分”」

「何!? ――どこまで知っているんだ?」

「その必要はない」

と、カラトの背後から声。振り返ると、若い男――黒い短髪。中背。緑色のジャケット、白いワイシャツ、黒いジーパン姿――がいて、「私はキミを攻略するからな、カラト」と、自信ありげに言った。

「キミは誰だ? 攻略?」

「私はハジメ。キミをどうにかしたい。そうじゃないと本当の夜は訪れない」

「どうにかしたい? どうやって?」

「人質を使う。昨日の黒人の少女だ。私に従わないと彼女が危ないぞ?」

カラトは眉をひそめる。「卑劣だな」

ハジメは肩をすくめる。「邪悪なキミに言われたくないよ。で、どうするんだ?」

カラトはため息をつく。「面白くないな。まるでヒーローだな、私は」

「ヒーローは私だ」

「いいえ、私よ」と、ノリエはカラトの隣に来てハジメに言った「人質はやめなさい」と、ピストル――オートマチック――をハジメに向ける「消えなさい」

「くっ……。分かったよ」

と、ハジメは立ち去った。

「なんでピストルなんて持っているんだ?」カラトは驚きながら聞く。

ノリエはピストルをしまう。「富豪の娘だから可能なのよ。キミの“拠り所”を知ることもね」

「何!?」カラトは驚愕する「なんで知ろうと?」

「場所を変えて話しましょう? 二人だけになれる場所知らない?」

カラトは考えて、「私の家は?」

「へぇ、いいわね」

ノリエはその居間で、「取引しない?」と、言った。

「取引?」

ノリエは微笑して、

「私はキミが好きなの。私と付き合いましょう? キミにはキャシーさんがいるけどいいわよね? キミはゲスなんだから。付き合ってくれたらキミの秘密は誰にも言わないであげるわ。さて、了承ならキスしましょう?」

呆然としているカラトは、ふいに笑って、

「キスってどこに?」

「まずはここ」と、ノリエは自分の唇を触った。

(本気なんだな……)

と、ドキドキしながら、カラトはそこにした。

「帰るわ」と、ノリエは言った「カラト君、家の電話番号を教えて?」

カラトは教えた。

「カラト君、隣の部屋には私のメイドが住んでいるわ。カモフラージュよ。私がキミのマンションに出入りしても不自然じゃないようにね。だから、今後私と過ごす時はそのメイドの部屋で過ごしましょう」

今日の予定は? と、彼女は付け加えた。

「本屋に行くくらいかな?」

「そう。じゃ私は帰るわ。見送りは結構よ」

ノリエが帰ると、カラトも外に出る。“サージョー”の本屋に行こうと誰もいない駅前通りを歩く。

「カラト」

背後から呼ばれた。振り返ると、ハジメがいて、「カラト、私はやはりキミを攻略する。昨日の黒人少女にキミの秘密を教える。知られたくなれば私の言う通りにしろ」

カラトは肩をすくめる。「怖い物知らずだな、キミは。――天塩中川てしおなかがわ駅に行け」

その瞬間、ハジメはぱっと消えた。

「アンモナイトでも楽しむんだな」と、カラトは歩き出す。

三十分ほど本屋に滞在したあと、カラトは家に戻る――部屋の前にはキャシー――学生服姿――がいた。

「カラト、やっと会えた」と、キャシーは笑顔で言った。

「どうしたの? 学校は?」

「キミに会いたくて抜け出してきた」

カラトは微笑して、「これ」と、本を差し出す「お詫びのプレゼント」

「えっ? どういうこと?」

「いや、昨日悪いことしちゃったから」

「私全然気にしてないよ?」

「じゃただのプレゼント。受け取って」

「うん、ありがとう」キャシーは微笑みながら受け取る。

「キャシー、お昼は? まだならどこかで食べないか?」

「うん、食べたい。――昨日言ってた美深びふかの食堂は?」

「じゃそこにしよう。――本、私の部屋に置いていかない? 荷物になるから」

「うん、そうする」

二人は智恵文駅に着き、カナトは二人分の切符を買う。そうして彼は、壁のポスターを見ているキャシーに切符を渡す。

「ありがとう」

「何見てたの?」

「コンサートのポスターだよ」と、キャシーはポスターを指差す「音威子府おといねっぷであるんだって。ねぇ、行ってみない? ――カラト? どうしたの?」

「えっ?」

「なんか悲しい顔してる……大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ」

その指摘は、翌朝、ノリエにもされる。一緒に居間――彼女のメイドの部屋の――のソファーに座ってテレビを観ている時に。

「別になんでもないよ」

ノリエは面白そうに笑って、「そうかしら? 何かあるなら言ってよ。言わないとキミの秘密をバラすわよ?」

カラトは苦笑して、前を見る。「この番組がちょっと」

「ワイドショーがどうかしたの?」

カラトはまた悲しげな顔をして、「出演者の職業が羨ましくて」

「えっ? キミ、歌手とかお笑い芸人とかになりたいの?」

「いや。彼らは他人から見て立派なものじゃないか。すごいよ。――私は違う……」

「はぁ? キミだってすごいじゃない? 秘密を持っているんだから」

「うん。でもやっぱり気になるな……」

「ふーん。――カラト」と、ノリエは笑う「私がいるじゃない? 私と付き合っているんだからいいでしょ?」

カラトは答えない。

「出て行って!」ノリエは怒鳴る「このクズが!」

「えっ?」

「消えなさい!」

「わ、分かったよ……」

カラトはマンションの前に出た。

「カラト」

「キャシー」

「……また悲しい顔してる。どうしたの?」キャシー――学生服姿――は心配そうに聞く。

「いや別に。――学校は?」

「サボった。どこか行くの?」

「えっ? うんまぁ」

「私も一緒に行っていい?」

下川町しもかわちょうにうどんを食べに行くんだ」と、カラトは嘘をつく「うどんは好き?」

「うん、好き」

「なら行こう」

夜、二人は智恵文駅でバスを降りた。

「カラト、お金は大丈夫?」街灯の光――オレンジ色――の下、バス停でキャシーが聞いた。

「お金? なんで?」

「だって二人分のお昼や夕飯代や温泉代、それにバス賃も払ってくれたから」

「ああ、全然問題ないよ。私はお金持ちの息子だからね」

「そうなの?」

「うん。だから気にしないで。お金には一生困らないからさ」

「そうなんだ。――聞かなければよかったな」と、キャシーはなんでもなさそうに言った。

「えっ?」

「カラト、私の夢はね、キミのお嫁さんになることなんだ」キャシーは恥ずかしそうに、嬉しそうに言った。

「えっ!?」

「えっ? どうしてそんなに驚くの? ……嫌だった……?」

「違うよ! その、私なんかのお嫁さんでいいの?」

キャシーは首をかしげる。

ふと彼女は微笑み、「うん。私はキミを愛しているから」

カラトはプレッシャーを感じる。

「カラトは? 私のことどう思っているの……?」

プレッシャーを感じる彼はふと表情が曇り、

「キャシー、私は働く気はない。お金があるから。そんな私のお嫁さんでもいいの?」

「良いよ」キャシーは即答した「なんでそんなこと聞いたの?」

彼女の不思議そうな表情を見て、カラトはふいに笑う。

彼の胸にはプレッシャーがある。

だが、悪いものとは感じない。

「キャシー、実は今日下川町に行く予定はなかったんだ。本当は森の中に行きたかったんだ」

「森?」

「うん。私のお気に入りの場所なんだ。キミと一緒に行きたいな」

「嬉しい。今から行こう?」

「今から? 暗いよ? 怖いんじゃない?」

「キミがいれば大丈夫。行こう?」

カラトは微笑み、彼女の手を取る。

「うん、行こう」

翌朝、学生服姿のカラトは市役所から出た。待っていたキャシー――やはり学生服――は、「終わったの?」

「うん。これで手出しはできなくなったよ」

「よかったね。――でもどうして私は狙われたの?」

カラトは苦笑して、「私に嫌がらせをするためだよ。“選択”をしないで“中途半端”にしているからね。――キャシー」

「何?」

「愛してる」

と、カラトはキスした。


〈了〉

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