実験ログ:00 「組織と能力」
暗い町、冷える夜、揺れるバイク。舗装された道路を走るバイクは、怖いくらい静かだった。手錠をかけられた私は、いったい何処へ運ばれているのだろうか。子を迎える里親というものは普通こんなものなのだろうか。
「どこにいってるの?」と、私は尋ねた。だけど、何の言葉も返ってくることはなかった。
私の名前は朧木真壱。生まれてすぐに両親を亡くし、孤児院で育った、5歳の少女である。
でも、私には普通の人とは違うところがある。多分だけど、私には幽霊が取り憑いてる。目の前で物がテレビの砂嵐とかポリゴンみたいなのを纏って消えたりする。まるでバグっているかのように。
私を乗せたバイクは異様に長いトンネルを通った。一部だけめっちゃ光っていたのが気になった。光っている所を通ると、いつの間にか森に来ていたのだ。私があたふたしていると運転手が、「ワープ完了だ。」と言った。
ワープ?ワープだと!?そんな物がこの世にあるのか!?こう見えても、私は漫画オタクなのだ。漫画は良く孤児院にあったものを見ていたのだが、特に異世界転生ものが好きで、転移魔法とかワープとかの演出が大好きなのだ。
私を乗せたバイクは森を抜けた。
森を抜けた先には、変な建物があった。建物の名前があったけど、なんて書いてあるか読めなかった。運転手に聞いてみた。運転手は少し黙ったが、溜め息を一つついた後、「あれは雲島能力者研究施設って書いてあるんだ。」と言った。
ほほう、ワープに続いて能力者とな。ここはホントに日本なのか?研究施設と聞いて少し恐怖を覚えたが、これから起こりそうなことへのワクワクが恐怖を打ち消した。
研究施設の駐車場に着いた。私は降ろされ、内部へ連れてかれる。何だか重厚感のある扉を通り、金属探知機とかの検査を受け、地下へ続く階段を降りた。私は、非常にワクワクしている。こんな近未来的なところ、ワクワクしない訳がないじゃないか。
最深部は、なんだか不気味だった。暗いし、肌寒いし。でも、暗いのはただ単に電気が付いてないだけだった。ここは培養カプセル的な物が沢山あった。ここもワクワクポイント。
かなり近未来的といっても、別に誰かいるわけでもなく、今ここにいるのは私と、私をここに連れてきた青髪の男だけである。
研究室を一通り見ている途中、部屋の扉が開いた。そこには、二人の白衣を着た女性と、三人の子供達がいた。どうやら私は一番乗りだったらしい。
金髪の研究員らしき女性は言った。
「ようこそ、子供たち。私の研究施設へ。」
続けて、一緒に来た眼帯をつけた茶髪の女性は言った。「あ、あの所長、まずは自己紹介とかじゃないですか?子供達多分混乱してますよ。多分先輩もそう思ってます。」
金髪の研究員は言う。
「あー、そう、そうだよね、よし。それでは自己紹介をしよう。私はここ雲島能力者研究施設の所長、雲島螺旋だ。ここで能力者に関する研究や実験をしている。キミたちはラセンとでも呼んでくれ。」
茶髪の女性も続く。
「わ、わたしは有明天音です。皆んなはアマネって呼んでください。特技は書記、趣味は漫画鑑賞、あと、それからそれから…」
私を連れてきた青髪の男は言う。
「有明、もういいから。あー、コホン。俺は時槍暦。
まぁコヨミとでも呼んでくれ。
…さて。研究員の紹介も終わったことだし、キミたちにも自己紹介してもらおう。…じゃあ、そこの嬢ちゃんから右に順番に言ってくれ。」
コヨミはラセンが連れてきた少女を指差して言う。
少しした後、少女は答えた。
「えーと、私の名前は潮風愛華。よろしくね。」
笑顔の下に、知性的な目を隠している。赤いスカートを靡かせ、帽子を被る、なんてことない普通の少女。
次にラセンが連れてきた金髪の少年が言った。
「俺は雲島和泉。イズミって呼んで。……こんな感じでいいの?姉ちゃん?」
イズミが姉ちゃんと言った人はラセンだった。
「まぁいい方じゃない?次はもっといろいろ話してね。それじゃ、次はキミだよ。」
ラセンは私を指差した。
すぐ来るのは知ってたけど、急にくるとビックリするものだね。話すことは…まぁ漫画オタクってこと話しとけばいいか。
「私は朧木真壱。漫画が好きで、特に異世界転生ものが好き。よろしくね。」
「漫画?漫画が好きなの?!私も好き!え、なになに、どんなのが好き?教えて教えて!」 さっきまで静かだったアマネが興奮し始めた。
「え…えっと、転◯ラとか?」一応答えた。
「転◯ラいいね!他には他には?」アマネはぐんぐん聞いてくる。
コヨミが腰に携えていた刀の持ち手で軽くアマネをこづく。
「おい有明、マイもビックリしてるぞ。程々にしとけよ。
…よし、それじゃ最後はキミだ。自己紹介どうぞ。」
長い刀だな。自分を里親として迎えにきたときから気になってたんだよね。それに、鍔についたあの青い宝石。恐らく、あの刀には何かある。私の勘が囁いてる。それはともかく、最後の子の自己紹介だ。
最後の子を見てみると、なんと立ったままうたた寝している。
アマネが急いで起こしに行く。「いてて…ほらミタマ、起きて。自己紹介して。」
うたた寝していた青いメッシュの少女はゆっくり目を覚まし、ゆっくりと喋る。
「…んぁ?なに?自己紹介?えーと、暁月御霊。寝ることと泳ぐことが好き。
あとは……ふわぁ…」
一つ大きなあくびをした後、今度は床に倒れて完全に寝てしまった。
アマネはミタマを持ち上げ、おんぶして話す。
「もう、ミタマったら。それじゃあ所長。自己紹介も終わったことですし、この子たちを連れてきた理由を説明してください。
ラセンは頷き、話す。
「わかった。それでは、少しキミたちにお話をしよう。
この世界には、超稀に生まれる『能力者』と呼ばれる特別な力を持った人間が存在し、各地に息を潜め暮らしている。といっても、その化け物の見た目は人間となんら変わらない。ほら、キミたちも、まだ私たちが能力者ということに気づいていない。」
そういうと、ラセンは虚空からライフルを取り出した。
「私のライフルは五月雨って言うんだよ。放たれた弾は私だけが自由に操ったりできる、特別性の銃なんだ。」そういうと、ラセンは銃を壁に向かって撃った。放たれた弾は壁に当たらず、空を飛び回った。空を自由に泳いだ銃弾は、なんとコヨミの方へ飛んでいく。
コヨミに向かった銃弾は、瞬く間に真っ二つに分かれ、地面に落ちた。その間コヨミは指一つ動かしていなかった。コヨミが言った。
「俺が時を止めて、その隙に銃弾をこの刀で切り落とした。」
すごい…!すごすぎる!まだ時が止められたという実感が沸かないけれど!私は興奮が止まらなかった。そんな私をよそに、ラセンが話す。
「私たちの役目は、能力者の鎮圧と武力提供。時々、能力者というものは時折何処かで力が暴走するんだ。それを私たちの力で鎮圧する。そして、鎮圧した能力者を確保し、全てをなかったこととして、新たな人生を歩ませる。実は私たち、これでもちゃんとした国家公認の機密組織なのさ。」
何か引っかかったのか、アイカが質問した。
「待って。それじゃ、その暴れた能力者を鎮圧する際、人に見られたらどうするの?」
確かに、私も気になった。機密組織というくせに、街中とかで暴走した能力者を止めるには、必ず誰かに見られなければならない。
アマネが質問に答えた。
「いい質問ですね。見られたら、ではなく、特殊公安などから要請を受けて出動するので、必ず誰かには見られてるんです。そこで活躍するのが私の能力『記憶処理』と『ワープゲート』。これらで瞬時にその場に出動し、能力者を鎮圧。そして、その光景をみた民間人の記憶を消去して、全てを無かったこととする。これで解決です。
これは雑談ですけど、皆んながここに来る時、長いトンネルを通る際、一部だけ光っていた所がありましたよね?あれ、実は私の力でトンネルから別の空間へワープしているんです。」
私もあることが気になって質問してみた。
「じゃあ、なんでそんなすごい所が私なんかを連れてきたの?」
全員がこっちをみる。ミタマもやっと目を覚ます。空気が張り詰める。
ラセンが今までにない真剣な顔で話す。
「そうだね。ではこっちもキミたちに質問する。
キミたちは、能力者になるつもりはないかい?」
呼んでくれてありがとうございます。
次は3日後とかそれぐらいかな。次も楽しみにしててね。




