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1224 second next〜他人の少女の指先から――〜

作者: 絢香redeyes
掲載日:2026/01/04

日本 北海道 名寄なよろ

令和七年 夏


駅前に出ると、誰もいないそこで佇むことにした。――出ないか。よし。それにしても人いないな。良いことだ。札幌さっぽろもそうあってほしいぜ。さて、これから何をしよう? 私はちょっと考える。“次”はどうせなら――思いつかない。せっかく良い街に来たのにな。まぁいい。やることはやった。――とりあえず歩くか。

一ヶ月後の朝、私はまた名寄を訪れた。――やはり出ないな、としばらく駅前にいて私は嬉しく思った。やはり人もない。さて、これからどうしよう?

一週間後の朝、私は名寄の駅前で思う。出ない、と。スッキリするぜ。

と、笑い声が聞こえた。横?

見ると、十代後半の外国人の少女がいて、「よく来るね、キミ」と、笑いながら私に言う「そんなにこの道北の田舎が好きなの?」と、私を指差す「もう住んじゃえば?」で、なにしに来たわけ? と少女は付け加えた。うざいな。私は無視した。

何で無視するの? 物足りない顔してるくせに、と少女は続けた。物足りない顔?

と、ふいに少女は指を鳴らした。「じゃ私が目的を与えてあげるよ」少女は誇らしげに言う「私がやりたいことの手助けをして」と、私を指差す「目障りなのよ。よく分からなくて」

私ははっとした。「ここにも出るのか?」私はがっかりしながら聞く。

「出る? 何が?」

違うか。「なんでもない」

「で? やるの?」

私は無視した。

と、少女は肩をすくめた。「ポコチンのつけぞんね」少女は呆れたように言う「キミは人生失敗しているわね。青年男性の時点で。可哀想」

「殺してやる」私はキレた「むしろ真逆なんだよ、私の人生は。現時点でな」

「なら年上の余裕を持ってよ」少女は動じずに言う「やるの? やらないの? ――私の『名前』? クリスオラよ。キミは?」

「ダテだ」私は落ち着いて、言う「やるよ、クリスオラさん」

「ありがとう」と、少女は微笑む「でもなんでさんづけ?」

「示したんだよ、私達の距離感」

「ふーん。――まぁいいわ」

「やりたいことって?」

「とりあえず都会の札幌に行きたいわ」

昼頃、私達は札幌の駅前に出る。

「ここも誰もいないじゃない」と、クリスオラは言う「札幌はゴーストタウンになったの?」と、不思議そうに呟く。

目の前に“紫色の椅子”が倒れている。私は憂鬱になる。

「あら、“椅子”が倒れているわ」と、クリスオラは言う「綺麗な“紫の椅子”。でもなんで“椅子”だけがあるの?」

「キミにも見えるのか!?」私は驚いて聞く「あの“椅子”が」

「見えるけど、それがどうかした? ――なるほど。ウザいから逃げたかったわけね」

「意味が分からないからな」私は肩をすくめる「――いや。『調べたり』しないよ。興味ない」きっぱり答えた「キミのやりたいことは?」話を変えた。

少女はふいに真剣な顔になる。

「私は復讐がしたい。だから相手を探しましょう」

私は苦笑した。

「何がおかしいのよ?」クリスオラは眉をひそめる「本気なのよ?」

「クリスオラさん、キミはずいぶんくだらない少女だな」私は真面目に言う。

「なんですって?」

「復讐なんてくだらないよ、クリスオラさん」

「意味あるわ」彼女は断言する「復讐できたらキミのように人生の成功者よ。キミは成功者なんでしょ? 分からないの?」

「分からないな」

「ボクは分かるよ」

私達は横を見る。若い男がいて、ふいに私を指差す。

「キミにはポシビリティー、可能性を感じることを」と、男は微笑む「ボクはレン。ダテ、一緒に来てもらおう。さもないと名寄でも“椅子”を見かけるようになるぞ」

「お前の仕業か! 不愉快だ! 殺す!」

「ダテ!」と、クリスオラが呼ぶ「これ」

私は少女を見る。日本刀?

と、彼女はそれをこちらに放った。私はキャッチする。

その瞬間、私は理解した。

私は刀を抜いて、男を斬る。血が出ない男はその瞬間、消えた。

「ためらわなかったわね?」と、クリスオラは怪訝そうに聞く「でも復讐は反対。キミは何者?」

「話すことは好きだが、そういうことは話したくないな」と、日本刀を鞘に納める「私と探してどうする? 私に何をしてほしい? 斬ってほしいのか?」

「キミにあげるわ。その刀、“基本刀クモチュウショクゴ”」

「ダテ」

呼ばれて私は横を見る。レンだ。「更新された」と、彼はクリスオラを指差す「キミの方が面白い。一緒に来てもらう」

面白い? こいつの方が? 私はむかつく。

「どうして」クリスオラは聞く。

「誰もいないこの光景、それはキミのおかげだ」

そうか、と私はクリスオラを見る。こいつの仕業なのか。だがどうやって?

「おかげ?」

レンはうなずく。「手間が省ける。キミをコピーさせてもらう」

「コピー?」

ふとレンは私を見る。「キミもいていいが、我々の邪魔はするな」

はぁ?

「ボクはどうなんだ?」

その声に、私達は横を見る。刀を腰に差した、青年男性がいた。

「キミもダテと同じようだ。我々の邪魔をしなければいい」

「邪魔をする」と、青年は刀を抜いた「迷惑なんだ」ふいに私を見る「ボクは彼女持ちだ。共感できるだろう? 迷惑な理由」

いつか殺してやる。「ああ。加勢するか?」

「結構」と、青年は駆け出す。そしてレンを斬った。血の出ない相手はやはり斬られた瞬間に消えた。

と、青年は刀をしまう。「ボクはガイ。同行していいかな?」と、青年はクリスオラに聞く「キミ達といたらボクの目的は果たせそうだ。ボクはレンが迷惑だ」

「良いわよ。私はクリスオラ。――なんて名前の刀?」

「“ウンカマンプク”だ」と、ガイは私を見る「よろしく」

「ああ」

「ボクもよろしくしたいな」

私達は横を見る。若い外国人男性が一人。その腰には刀が。

「ボクはドラゴン。キミ達の仲間になりたい」

鬱陶しいな。

「クリスオラさん、私はキミとの付き合いをやめる」と、私は言う「群れるのは好きじゃないんだ。私は人間嫌いでもある」

「我慢しなさい。私といる方が楽よ」と、クリスオラは笑う「レンの話聞いてなかったの?」ドラゴンを見る「私はクリスオラ。よろしく」

「ありがとう。――これは“テンジョウクウフク”だ」

「キミ達」横の方にはレンがいた「我々は無限に現れる。大人しく彼女を渡してほしい」

それはうざいな。

「断る」ガイがきっぱりと言う「当たり前だろ?」

「同意見」と、ドラゴン。

こいつらもうざいな。

「ダテは?」と、クリスオラが聞く「――なんで答えないの?」睨んでくる「もしかして私の邪魔をする気?」

はぁ? こいつ何言ってんだ? 私はいらつく。

「ダテ」と、レン「キミは用済みです」

はぁ?

「――クリスオラさん、ここは私に任せて二人と行け」と、私は言う「早く」

「分かったわ」

三人は駅の中へ。

「清々した」と、私はレンを指差す「あとはキミだけだ」

「我々の目的を話しましょう」

「黙れ」私は即答した「うざいんだよ。そもそも興味ない」

「我々は未来が分かる」

「うるさい」

「キミは、将来クリスオラの新たな復讐対象になります」

「そうなの?」

私は振り返る。

怖い目の少女は、「なら、今のうちに殺さないと」

「信じるのか?」と、私。

「どうせ殺人者になるのよ? いいじゃない?」

私は呆れ果てた。「二人を呼んでこないのか?」

「必要ないわ。他人任せにしたくないわ」

「ご立派だが死ねよ」と、私は刀を抜く「ホントバカなヤツだな、キミは」

「悪い?」と、少女は真剣な目で見つめてくる。

うっ……。私は圧倒された。

――本気だ。

こいつは本気で復讐を――

「どうしたの? 来なさいよ」

「くっ……」

私はためらう。

「それでいいですよ」と、レン「ボクにもそうしてほしいですね。――二人とも、駅をご覧ください。その気が失せるはずです、ダテ。私は未来が分かりますから」

と、駅が爆発した。


夜になって、ようやくクリスオラは落ち着いた。ホテル――札幌駅前にある――の部屋の椅子でうなだれる少女に私は、「復讐はできないな」と、言う。

「えっ?」と、少女は顔を上げる。

「自分のせいでガイとドラゴンが死んだからってそのざまじゃな。二人は他人だぞ?」

「違うわ」少女は力込めて答える「復讐できる。だって相手は私の――」

「うるさい」私は遮る「聞きたくない」

「キミはなんのために私といるの? 私の役に立ってよ!!」

急に叫ぶなよ。うざい……。

――だが、本当だ。なんのためにいる?

何かするべきだ。

だが何を――

「ベッドの刀、返してもらうわ」と、クリスオラ「もう必要ないでしょ?」

「――キミをどうにかするよ。復讐させないように」

「はぁ? どうしてそうなるのよ?」と、少女は眉をひそめる「迷惑よ」

「“次”はそういうようなことをしたいんだ」と、私は明言する「私はやりたいことをやる」

「ふっ、でもどうする気よ?」

うざいな、私。

ふと気づいた。

「やめた」と、私は肩をすくめる「キミは好きに生きろ」

「はぁ? 呆れるわ。――なら稚内わっかないへの旅に付き合いなさい。景色を見て気分転換したいわ」

翌日の昼頃、私達を乗せた特急は最北の地、稚内に着いた。駅前に出ると、レンがいた。

「タイムリミットだ」レンは言う「個人的にもう遊ばせてはおけない。彼女をもらうぞ、ダテ」

「彼女? 私はダテのものじゃないわ」と、腰に刀を差したクリスオラは不満そうに言う。

ダテのものじゃない、か。私はふっと笑った。

“もの”ならな。

楽だ。

「ダテ、キミは不満なのか?」レンは言う「彼女を利用することを。キミは人間嫌いなんだろう?」

確かに。人は――

いや。

「ボクは注目されたい」私は答える「だから駄目だ。だから死ね」

と、その瞬間、私は日本刀を持っている。

そしてレンを斬る。

と、レンは“紫の椅子”になって倒れた。

ふざけるな!! わけが分からない!!

「どうしてキミは注目されたいの?」クリスオラは聞いてくる。

私は言葉に詰まる。言えない。

「どうしたの? 言えないようなことなの?」

言えないようなこと? 私は心中鼻で笑う。そんなこと――

「言いたくないならいいけど」

私ははっとした。

言いたくないんだ。こいつには。

なぜ――?

――いや、違う。

言いたくない。“それ”が正しいんだ。

そしてそれは彼女だけじゃなく――

「ダテ」クリスオラが呼ぶ「改めて聞くわ。キミは私の復讐に協力するの?」

私は答えられない。

と、クリスオラは苦笑した。「そこの“椅子”に座って考えたら?」と、“紫の椅子”を指差す。

えっ……

いや、座ろう。座ってやる。と、私は刀を消す。

「――どう?」しばらくしてクリスオラは聞いた。

「……私はうざいってことくらいしか分からない」

少女は大笑いした。私はむかついた。

自分自身にも。

“前”はこんな――

ふと、クリスオラはため息をついた。

「レンはキミにはポシビリティーだの可能性だの言ってたけど、私には普通の人間に見えるわ」と、少女は呆れたように言う。

はぁ? むかつくな!

――いや、それでいいじゃないか。

それが一番じゃないか。

私はクリスオラを見る。

ありがとう。

普通の人間と思ってくれて。

「どうしたの? 考えが出たの?」クリスオラは聞く。

普通の人間。なら私は――

「ついて行くよ」と、私は立ち上がる「クリスオラさん」


〈了〉


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