クセの強い?自己紹介
「自己紹介。」
諸々の説明が終わると、担任の先生が一言そういったことで、クラスは一気にお祭り騒ぎになった。
(とうとう来てしまった…。)
僕は気を引き締めた。
自己紹介ほど怖いものほどなかった。一気にクラス全員からの視線など、痛々しくて僕には耐えられないからだ。そのせいで、中学の自己紹介で何度恥ずかしい思いをしたか…。思い出したくもない。
なんてことを思い耽っていると、一枚のプリントが回ってきた。
「…クラスの座席表?」
でも名前の場所は空欄だった。
自己紹介…座席表…。わかってしまったかも知れない。これは…
「自分の出席番号が書いてあるところに自分の名前と好きなことを3つ書いてください。5分たったら言うので、全員に自己紹介をしながら相手の名前と好きなことを埋めていく感じで。今日は全員と話すことを目標に仲良くしてください。では、始め。」
や、やっぱり〜。僕にはハードルが高過ぎる。みんなの前で自己紹介も難しいのに全員と一対一で話すなんて…。
周りをみると、みんな楽しそうにしていた。
…やるしかない。
僕は腹を括って自己紹介の欄を埋めていった。
「はい。時間になりましたので後は自由に回ってください」
この自己紹介は戦争だ。
何を書くかどうかで今後の学校生活が変わるといっても過言ではない。
僕は自己紹介を1番初めにする人はもう決まっていた。
「原!自己紹介しよう!」
もちろん、原である。
1番初めに話しかけてくれたし、何より僕の席の後ろだ。後回しにする意味がない。
「うん!じゃあ改めて、僕の名前は原亮太。
好きなことはプログラミングと物理、あとゲーム!よろしく!」
「よろしく!僕の名前はヒラタ。好きなことは科学に物理、あとは数学かな。」
自己主張を一通りすることができた〜。
僕がほっとしていると、一つ思い出したことがあった。
「そういえば、朝に僕も変人だ、みたいなこと言ってたけど何処が変人なのさ。」
「うーん。ここまで自覚がないって怖いねぇ…」
やれやれっと言った感じで原はため息をついた。
「ひらっち、緊張すると顔強張るタイプでしょ。さっきからずーーーーっとカオ怖いよ。ほら、周りを、特に女子を見てみなよ。」
「え?!」
僕は周りを見た。
何だかみんなとの距離が遠いような…。
「…もしかして、顔が怖いから…?」
僕が恐る恐る聞くと原は弾けんばかりの笑顔で答えた。
「せーいかーい!!百億万点〜!!」
…ちょっと、言い方にイラッときたけど、お母さんにも似たようなことを言われたな…。
「きんちょーするのはわかるよ。その顔も納得さ!まあ、君の面白さをみんな知ったらそんなこと些細なことだよ!」
フォローになってないフォローをされた。
僕がムスッとしていると、ついでにと原が続けた。
「もし、ハッキングしてほしいデバイスがあったらいってよ。友達価格でまけてあげるからさ!」
そう言って僕を後に他の人のところにいった。
ハッキングって、犯罪じゃ…。
こんな調子で大丈夫かと心配していたけど、それは杞憂だった。
原と僕が話しているのを見て、みんな警戒心が解かれたかのように、僕に話しかけくれた。
…女子以外は。
「はじめまして。僕の名前は水間秀一郎。よろしくねぇ。好きなことは沢山あるけどとりあえず、怪我したら僕のとこおいでよ。どんなに困難なものも治してあげるからさ。例えば君の表情筋とか。」
「や!ボクの名前は浦道数矢。よろしく!何か先生方の弱みとか知りたいことがあればなんでも教えるよ!勿論、対価はしっかり貰うけど!」
「はっ!俺様の名前は茅野だ。それ以上の情報は言えねぇ。どうしても知りてぇなら俺様と賭博をするんだな。勝てば教えてやるよ。」
…な、なんか、自己紹介っていうよりみんな違う方向に行ってる気が…。
というか、なんだよこれ!?みんな所々怖いこと言ってるし…。
僕が若干引いていると、珍しくクラスの女子が1人。僕に近づいてきた。
「やあやあ。なんだか君はみんなとちょっと違うね。」
「それって、顔が怖いことをいってるんですか。」
僕がゲンナリした顔で言うと、彼女はちがうよと言ってはにかんだ。
「みんなが其々役職って言うのかな?そういうのを言っている中で、君1人だけがそれっぽいことを言ってないから、気になって。」
一体、どういうことだ…?
話についていけてないのがわかったのか、何かを察したのか、その子は歯切れが悪そうに続けた。
「まあ、なんだっていいさ。ここに悪い奴はいないしね。自己紹介が遅れたね。私の名前は六科 凛桜。私はこっちの事情で仕事はいえないけどよろしくね!」
何がなんだかわかない僕をおいて、六科さんはサッと何処かに行ってしまった。
そんな感じで別れた後、六科さんが声をかけて安心したのか、クラス中の女子が僕のところに駆け寄って、怒涛の自己紹介ラッシュが発生したのは言うまでもない。
自己紹介が終わり、先生が解散号令を出したのでクラスメイトは一斉に散ってしまった。
何人かクラスに残ってる人はいるけど、さっきまで賑やかだったクラスがいきなり静かになったので、僕は少し寂しく感じた。
でも、クラスメイトとあって1日目だと言うのに誰も別れるのを寂しがらず、各々出て行ってしまった。
(もうちょっと何かあるんじゃないかなって思っていたのに…)
ちょっと期待外れなような気がした。
はぁっとため息をついていると後ろから声がかかった。
「や!自己紹介どうだった?」
「原!どうだったも、全然ダメだったよ…。
やっぱり人前だと僕の顔が強張ってしまって、みんなを驚かせちゃった…」
「僕が言ったこと、まだ根に持ってるの?」
原がにやにやしながら訪ねたのでムッとなってそっぽをむいた。
「ごめんごめん」
原がそう言った後、僕は笑った。
僕の笑いにつられるように、原も笑った。
そんな感じで、和気藹々としていると、担任が僕のところに近づいて言った。
「君のことを学園長が呼んでいる。至急、行くように」
そう告げる先生の顔はお面のようにかたく、僕は不気味に思えた。




