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どうしたら、私は王子との婚約から逃れられるのだろう。

というか、いっそのこと誰とも婚約をしない身になりたい。森の帝王とかになりたい。

……おしとやかなで病弱の女を演じればいいかな。

こいつに跡継ぎを生むことなんてできないって思わせたら、私の勝ちだ。


「甘い、甘すぎますわ、お姉様。本当に自由の身になりたければ、死を偽装するしかないです」


予想の斜め上の妹の言葉にずっこけそうになった。

相変わらずとんでもないことを思いつくな、マーガレット。

そんな可愛らしく笑みを浮かべながら、私を殺す作戦を立てている妹を頼もしく思うよ。


「今度の王家が主催する仮面舞踏会に出席してください」

「え、社交界デビューで死んじゃうの、私」

「はい」


即答するマーガレットに、この作戦に私は何も言わずに身を任せようと決意した。

社交界に関しては私よりマーガレットの方がはるかに知っている。


「言っても、死にかけるだけです。そんな危ない目に遭って、もう二度と社交界なんかに出たくないっていうことを公に伝えれば大丈夫です。いっそのこと人間不信を演じます?」



両親は私のことを手に負えないって言うけれど、私からしたらマーガレットの方が手に負えない。

そして、この作戦が上手くいくのかも怪しく思えてくる。無事に成功するのか……?

私の演技力、とんでもないぞ?マイナスよりのゼロだ。


「そうだ!本物の毒を飲もう!」


私の発言にマーガレットは「はい!?」と大きな声を出し、眉をひそめた。


「本当に毒を飲んだら、演技なんてしなくて済む!」

「ちょ、ちょっと待ってください!本当に毒を飲んで死にかけるんですか?」


戸惑う妹に私は「うん」と頷いた。

そうじゃないと、自分が大根役者過ぎて茶番劇になってしまう。自作自演ってバレたら、死刑になりそう……。本当に死んでしまうのは勘弁。

リアリティを出すためには多少の真実も必要だ。実際に毒を飲むしかない!これぞ英断!


「お姉様の華奢の身体に毒なんて!」

「どの口が言うてる」


私は鍛えてきた身だぞ。

妹の細くて折れそうな腕に言われても説得力がない。


「で、でも!」


「マーガレット、私の演技力のなさは知っているだろう」

「はい、知っています」


マーガレットは私の言葉にスッと真顔になりそう答えた。今の言葉ほど説得力のある言葉はないだろう。

悟った彼女は私に毒を飲まさないという選択を取り消ししたようだ。

理解のある妹で良かった。

本気で自由の身になりたいのだから、本気で仮面舞踏会に立ち向かわないと。


「戦場に行く気持ちですね」


私はコクッとゆっくり頷いた。

生還できない戦場だけど。……半死の私をきっとマーガレットが救出してくれるから大丈夫。


「仮面舞踏会ってことは顔バレしないのか」

「はいッ!そこはお姉様の個人情報を守ることが出来ますわ!

それに、仮面舞踏会って年に四回しかないんです。私達、本当に運がいいですわね」


マーガレットは嬉しそうに話す。不幸中の幸いとはこういうことか。

こんなに愛らしい妹だが、彼女は社交界のドロドロした人間関係を上手く築き上げているのだろう。


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