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マーガレットがそこまで嫌悪感を抱いている王子は是非会ってみたいと興味が湧いた。
視線を下に向けてシャオの方を向くと、彼もコクッと頷く。
おお〜!やっぱりシャオも同じことを考えているのか!これぞ以心伝心だ。
もちろん、私は動物と会話できるなんてそんなメルヘンチックな能力はあいにく持ち合わせていない。
残念ながら雰囲気で会話しているだけだ。けど、それが外れたことはない。
動物たちはきっと人間側の言葉を理解している……と思っている。
実際確かめたことはないが、今まで関わって来た動物たちは私の言っていることを理解しているように思えた。
正直な話、会話何て必要ない。感覚で絆を強くしてきた。
……「絆」とかいうワードは稚拙か。というか個人的にあまり好かない。
前言撤回しよう。
絆を強くしたというより、知らぬ間に友達になっていたというのが正しいかもしれない。
一緒にい過ぎて、阿吽の呼吸で互いに動いている。
「お姉様はアーサー王子との婚約を望んでいるのですか?」マーガレットの言葉に私はハッと我に返る。
「んなわけ」
即座に首を横に振り、否定する。
その様子を見て、マーガレットはホッとした表情を浮かべる。
私はそんな妹を見ながら、この子はアーサー王子のことをどれくらい知っているのだろうかと考えた。
「どうしてアーサー王子が腹黒って知ってるの?」
「ん〜〜、ほとんどの人が知らないと思いますわ。まぁ、私も一度しか腹黒部分を見たことないので何ともいえないですけどッ。でもああいう顔の人は大体腹黒なんです!見ただけで分かります!お姉様、美形に騙されないでくださいね!」
マーガレットは必死な目を私に向ける。
マーガレットが美形って認定したぐらいだから、相当顔が良いのだろう。彼女は昔から美少年には厳しい。
「何を見たんだ?」
「う〜〜ん、口では説明しにくいんですよね……。もしかして、お姉様、私のこと信じていないんですか!?」
「おうおう、落ち着け」
私は涙目になって私の方に顔を寄せてくるマーガレットの方を掴み、冷静に対応する。
正直今は王子がどんな見た目とかどんな性格とは全く必要ない。王子のことなんて後回しだ!ぶっちゃけ、どうでもいい!
社交界で出回っている私の噂の方がよっぽど大事だ。
「社交界でのサラ・ラドンの噂について聞きに来たんだ」
「さ、サラお姉様の噂、ですか?」
「うん。何でもいいから教えてほしい。悪口でも陰口でも愚痴でもなんでも」
「ほとんどマイナスじゃないですかッ!」
「けど、実際そうだろう?」
私がそう言うと、マーガレットは押し黙った。
やっぱりそうか。私の評判は結構悲惨なものなんだな。
……安心した〜〜!そっちの方がありがたい!
むしろ、その最悪な噂通りに動いたら、王子から婚約を解消してくれるかもしれない。
「その、それが……、穏やかで品がある落ち着いた静寂を好む女性って」
「は?誰それ」
予期せぬ言葉に思わず、眉をひそめてしまった。マーガレットは少し言いにくそうに口を開いた。
「お姉様です」