表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

6 社交界での噂

第一王子と婚約してしまったと考えないようにしよう。気が重くなるだけだ。

私は今、会ったこともない王子とゲームをしているのだと考えればいい。

いかに上手くこの婚約から逃れるかが私の能力次第で決定する。勝てば官軍負ければ賊軍!


妹の部屋の前に立ち、私はコンコンッとノックをする。


「は〜い」

「サラだ」


いつもみたいに母親に喋り方が男みたいだと注意される前に、言っておきたい。

これは私とマーガレットの暗号のようなものだ。

そうでないと、「サラダ」と聞き取られるようなことをわざわざ言わない。

ウケ狙いで「サラだ」と言っていると思われたくない。羞恥心で死にたくなる……って言うのは盛り過ぎた。

恥も何もないけど、笑いを取るのなら本気で取りにいくから、こんな寒いことをわざわざ言わないってだけ。


「トマト」

「ズッキーニ」


お互いの好きな野菜を言うようにしている。


扉の奥から甲高い可愛らしい声で「トマト」と聞こえてくる。

私の声は透き通っていていい声だと褒められることが多いが、中性的な声だ。甘い声なんて出せない。

だから、媚びるのもあざとく生きるも向いてない。これぞ得手不得手。


「お姉様ッ!」


母親譲りの藍色の瞳をキラキラさせながら、マーガレットは部屋の扉を開ける。

髪の色は私と同じプラチナブロンドだが、彼女の髪質は父親に似たのかくせ毛である。クルクルとしていて可愛らしい。

彼女の髪のことを私は愛をこめて「ネジ」と呼んでいる。


「今日も相変わらず美しいです!」


マーガレットは私に勢いよく抱きつく。

私達は仲の良い姉妹だと思う。けど、マーガレットが持つ姉への

愛情は少し異常だ。有難いことに超が付くほどの姉想いなのだが、それが時々心配になってしまう。

彼女は家族の中で一番世渡り上手だと思う。


「マーガレットも可愛いよ」

「わ〜〜!嬉しい!ありがとうございます!お姉様に褒められた!」


マーガレットは本当に幸せそうに笑う。


「ちょっといい?」

「はい!いつでも大歓迎です!」


私はマーガレットの部屋に入り、立ったまま、先ほど両親から言

われたことを伝える。

先に社交界での私の噂を聞くよりも、前提として王子と婚約したことを伝えなければならない。

話せば話すほど、彼女の明るかった表情が消えていき、険しい表情になっていく。


…………マーガレット、顔、顔!泣く子が更に泣く形相だよ。

世渡り上手なのは良いことなんだけど、彼女はあまりにも…………。


「は?え?いや、あの腹黒王子にお姉さま渡すなんて無理なんですけど。夢ですか?何かの冗談ですよね?」

裏表が激しい。

人格が変わったかのような豹変ぶりを見せる。


……てか、今、腹黒王子って言った?

大人気のアーサー王子って腹黒なんだ……。


良かった〜〜〜!!

超性格良い慈悲に溢れたキラキラ王子様って言われたら、絶対に合わなかった。

ずる賢い系の人じゃないと話が合わない。

……まぁ、どのみち別れる運命ではあるんだけど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ