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月夜譚 【No.301~】

クマのぬいぐるみ 【月夜譚No.328】

作者: 夏月七葉

 窓辺にクマのぬいぐるみが座っている。薄茶の毛並みに赤いリボン、黒々とした瞳は外の光を反射して煌めいていた。

 毎日、通学の度にそれを見るのが私の楽しみだった。

「あれ?」

 ある日の帰り道、いつものように窓に目を向けて首を傾げる。朝はそこに座っていたはずのクマがいないのだ。

 今日は授業で使う鋏を忘れてしまって軽く落ち込んでいたので、癒されようと思ったのに。

 家の人が何処かに移動させてしまったのだろうか。私は残念に思いながら、明日はまた見られることを願って帰宅した。

 夕食と入浴を終え、自室のベッドに入り込む。暖かな毛布に包まってうとうとし始めたその時、部屋の隅で物音が聞こえた。

 半分眠りかけた目を凝らすと、壁際に何かが立っている。窓から入った月光に照らされ、その姿が露わになった。

『――イッショにアソボ?』

 クマのぬいぐるみが赤い目と一緒に手にした鋏を光らせる。

 それを見た瞬間、私は意識を失った。

 そして翌朝目を覚ますと、部屋の床に昨日忘れたはずの鋏が落ちていた。

 今もクマのぬいぐるみがあの窓辺に座っているのかどうか、私には分からない。その日から通学路を別の道に変えたからだ。

 きっともう二度と、私はあの道を通らないだろう。

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