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2.渡る周囲は美形ばかり


なんか冷たい‥‥ほっぺたがちょっと痒いな。ってか何で私倒れてんの・・・・・・!?

「うぇ!?」

違和感に気付いて慌てて起き上がる。地面に面していた部分に土が付いていないか確認、念のためはたいておく。

「目が覚めたようだな」

「大丈夫か?」

気付かなかった。声のほうに目をむけ、とりあえず目を疑う。

ありえない美形が二人並んでいる。っていうかいきなり過ぎないか?いつの間に。

一人は緩いウェーブのかかった豪奢な金髪を一つに括り、宝石をそのまま埋め込んだような緑の瞳をしていた。ほりの深かい容貌は正に西洋人。夢を持ちまくっている女子中高生なら王子!?と叫びそうだ。

隣に立つ黒い軽装の男は、くせのなさそうな銀髪をざっくばらんに纏めている。かなり適当にアップしてあるにもかかわらず、男の顔には異常に似合っている。むしろ弘法筆を選ばず、の顔バージョンなのだろうか。

金髪の男も見たことのないくらいの美形だが、銀髪の男はむしろ人間ではないと言ってしまえるレベルだ。美しいとか口で説明できるものじゃない。きっとこの男がどんな不潔なことをしても神の行ないだ!で片付けてしまうだろう。正に

「超絶美形と冥土の土産にしかできない無駄美貌か・・・」

某小説の一フレーズ。

「おい!?」

「っく」

しまった、初対面なのにうっかり素で口に出してしまった。人外美形のほうは怒鳴って入るがそれほど怒ってはいなさそうだ。金髪の男はむしろ噴き出している。

「ああああ、すみません本でちょっとこの台詞がありましてつい」

「わけの分からんことを」

いやホントすみませんとしか言いようがない。いきなり失礼な人間だ、私。

「まぁ良いではないか、子供のいうことだ。お嬢ちゃん、立てるかな?」

不機嫌そうな男を金髪の人が抑えてくれる。って言うかお嬢ちゃん・・・・。確かに152CMですけど。まぁ、いいか。

優しい笑顔で手を取るように差し出してきた。‥‥さすがにキャー、なんてミーハーな悲鳴を上げる程若くはなかったけれど、気後れするほどのイケメンにそんな事をされておとなしく手を借りることはできなかった。

「だ、大丈夫です」

ぶんぶん首を振りながら一人で立ち上がる。逆に失礼だったかと思ったけれど今更だ。金髪の人は少し目を見開いていたけれど、すぐに微笑に取って代わっていた。うわぁ、ホントに笑顔がまぶしいです。

「随分頑丈なガキだな」

美の化身様は見た目に合わずガラが悪いらしい。見た目だけで思ったよりも人間らしさを感じさせる。ガキという言葉にすこしカチンと来たけれど、言い返すのは大人気ないし綺麗過ぎて怖い。受け流すことを選択する。

「一応BMIを維持するために運動してますから。一般人並にはあります」

足元に転がっていた教科書の詰まったバッグを持ち上げると随分二人に驚かれた。

「それは君のだったのか‥‥ずいぶん重いようだったけど大丈夫なのかい?」

「ああ、全然大丈夫ですよ。慣れました」

片手でぶら下げれば不安そうに見つめられるけれど、問題ないですと抱えなおした。銀髪のほうは全然大丈夫?となぜか首をかしげている。まぁナンだっていいか。それよりも。

「とりあえず叫んどくべきかな?」

辺りを見回しながらため息を付く。って言うかホント、ここ

「うわぁぁぁ!?ここどこおぉぉぉぉ!!?」

何処。って言おうとしたら別の人に叫ばれた。代弁どうもありがとう。


3.続・渡る周囲と半分自己紹介


叫び声に振り返れば、ダボダボのパーカー・・・と言うよりもローブ?を着た少年が一人。背は悲しいことに私よりも高そうだったが、いくらか幼さを残した顔は私よりも年下であろうと予測できる。っていうかこの子も美形だなぁ。カッコいいと言うか可愛いと言うか。シャープな顎にパッチリした目。成長途中で中間って感じだ。

きょろきょろと辺りを見回す少年に話しかける近くにいた男性。なんか男ばっかり。

「落ち着いてください。ここがどこかはわかりませんが、ひとまず落ち着くことが肝要です。ほら、深呼吸を」

「こ、これで落ち着いてなんかいられないよ!せっかくヴェルンとクローの関連呪式のヒントが見つかったのに!っていうか僕の研究室は!?何でこんなトコにいるの!?」

研究室、ということはこの子は学者か何か?随分若いようだけれど、外国には飛び級ってものがあるし、この子も天才部類の一人なんだろう。

じゅしき。樹枝木か樹脂木?植物に関する研究をしていたのだろうか。

「ええ、貴方の混乱ももっともです。私も良くわかりません。ですがとりあえず落ち着きましょう、ほら、お水をお飲みください」

そういって袋を差し出す、赤茶けた髪を短めにカットしているふんわりとした印象の青年。どうも無駄な当たり日なのか、この人も例に漏れず美形だった。白衣にちょっと豪華な刺繍を施したような格好をしているけれど、なんだか日向でのほほんとしていそうなイメージが湧く人だった。あれだ、癒し系?

渡された筒状の袋には水が入っているらしい、少し警戒していた少年もニコニコと笑っている男に諦めたのだろう。袋をあけて水を口に含んでいた。

ペットボトルはどうした、と突っ込みを入れるのは間違いなのだろう。男達の服装は高校までに見た教科書にのっていた民族衣装に該当せず、現代人の服だと言うには前衛的、と言うかむしろ後衛的?

金銀組みなんか腰に剣っぽいのを佩いていたようだし。見ない振りしてたけど。

とにかく、非常に面倒なことになっていることは確かなのだろう。

唯一の救いは、全員がわけの分からない状況に陥っていると理解しているところ、かな。



「‥‥とりあえず自己紹介からはじめよう」

金髪の人が少年の様子を見てもういいと思ったのだろう。私たち全員を見回しながらそういった。

「あたりを確認していたと言うことは、全員この地をしらぬ人間のようだな。何のために我々が集められたのかはわからんが、ひとまず挨拶はしておくべきだろう」

という事はここに召喚主はいないという事になる。全員呼ばれたもしくは落っこちた組らしい。

自己紹介を、という彼に反発する人は誰もいないようだった。みんなの注目を浴びながら小さく頷く。

「まずは私から。私はニレイド国ニーファ女神騎士団団長代理を請け負っている、カストル・カディ・レヴェディアナ・ド・ファルンクリードだ。よろしく頼む」

職業と名前が長すぎて覚えられません先生。ファーストネームでいいのかな?とりあえずカストルで騎士っと。騎士とはまた古めかしいと言うか正当派というか。

「次に私が」

今度は赤茶けた髪の癒し系お兄さんが丁寧にお辞儀しながら名乗る。

「ムルディヌの都市で法術師を営んでおります、レーム・ザリチェというものです」

今度は聞きなれない単語。

「ほうじゅつ?」

ってなんだろ。私以外の人は、まぁそういうものかな、と想像しているような表情をしている。と言うか多分私もしているのだろうけれど。

なんだかわけの分からない世界だから、もしかしたら魔法だとかそんなのようなものなのだろう。

「法術はあなた方の世界に存在しないのですか?」

頷く私。なんだか説明だけで時間がかかりそうだとふと思った。



4.続以下略と法術紹介と残り


「そうですね、魔術や魔導の概念は?」

「一応空想上のものだという前提で、いろいろ知識はあります」

「魔法師や魔道師はいたぞ」

「私の世界には居なかった」

「ボク魔術師」

そうですか、ナチュラルに当たり前の知識ですか。むしろ魔道師ですか。カストルさんありがとう、貴方だけが味方です。

「空想上で、ですか」

「ええ、そうです。えぇっと、代償だとか魔力だとかを使って、一定の律の元に何らかの現象を起こす、ってところですね」

レームさんに問われたので当たり障りな事をいっておく。

「まぁ大雑把に言ってしまえばそんなものですね。存在しないと言うのに随分的を得ています」

だってゲームも小説も好きですから、わたし。むしろ実際に行なっている人たちがゲームに当てはまることに驚き。

「法術というのは、魔力や代償の変わりに周囲の力を利用して、現象と言うものを起こすものです。その現象は『治癒や結界』」

「‥‥ドラ○エの神官みたいなもんか」

「どら○え?」

「いや、空想上ですけど同じような職業の人がいましたんで!」

「そう、ですか?」

不思議そうな顔をしていたけれど、詳しく説明するのは面倒だったから日本の国技愛想笑いでごまかしておく。

「周囲の力を利用してって事は精霊術?」

魔術師だと言った少年が首をかしげながらレームさんに詳細を問うていた。ほわほわとした似合う微笑を浮かべながら首を振り、

「私の国では、精霊は理論的に存在すると言われている段階です。大気からは風壁の力が、水からは癒しの力が。どこからどのように引き出されているのか、と言うのはまだまだ解明途中なのですよ」

「曖昧なまま使ってるって事?」

「ええ、そうです。一部の人間はこれをわけの分からないものだと危険視しておられるようですが。使うことの出来る、そしてその力で人が救われると言うのならば完全に否定してはならないと思っています」

使い方を誤らず、程ほどに、と言う概念がきちんと存在しているのならば早々妙なことも起こらないだろうと思う。私の世界の科学だとか正にそれだろうし。

「何でそんな呪式もわかんない状態で発動するかな・・・。ちょっと詳しく見せてもらっていい?」

「待ちな。術師同士だと他の術式の興味が湧くっつーのは知ってるが後にしろ」

銀髪無駄美貌の青年が魔法談義をストップさせる。確かに同意、

「自己紹介、終わってからにね?」

魔術師の少年の頭を撫でながらそう伝えると、止めてよね、子供のくせに!と言われてしまった。なんだか東洋人の法則が嫌な感じに思い浮かんできましたが。

「‥‥えぇっと、つかぬ事を聞きますが私何歳に見えてます?」

ご都合主義で見た目が変わる、とかそういう素敵なことは起こっていないはず。自分の服装と手のひらをなんとなく確認して、ついでに講義で習った幼児の始点と視界の狭さの差を思い出して辺りにちょっとだけ目をむけた。状況以外異常なし。

「え、12、3位じゃないの?」

異常はないと思ったけれどやっぱり異常だったかも知れない。主に人が。

「童顔ってレベルじゃないわよそれ!?」

「違ったのか?」

「思いっきりガキじゃねぇか」

「私もてっきりそのくらいだと・・・」

「じゃあ15くらい?」

叫ぶ私に言いたい放題の美形集団。いくら美形だからって身長のことをコンプレックスにしてる私にはムカッときますよホント。日本人は背が伸びないんです。誤解を解くためにも口を開く。

「・・・・次に私が自己紹介させてもらいますね。私は地球と言う星の日本国出身、小林美春といいます。職業は一応学生。今年で20歳になります」

「「「「はたち!?」」」」

・・・・・・・・・お約束、お約束。だから我慢我慢。


5.続く自己紹介

「失礼したコバヤシミハル。不快に思ったのならば謝ろう」

「私からも謝ります。本当にすみません」

「変な名前」

「ボ、ボクよりも6つ上・・・・」

わかりやすい反応どうもありがとう。無駄美貌は不誠実、魔道少年は14歳、と。14のくせに165cm以上ありそうな身長だ。

申し訳なさそうにしている二人に笑って首を振る。

「誤解が解けたならいいです。それから変な名前ですけど、あなた方風に言うと美春・小林になります。私の国では姓と名が逆なんですよ」

無駄美貌が一瞬嫌そうな顔をする。って言うかなんでそんなに喧嘩腰なんだろ。無駄美貌を口にしたのが悪かったんだろうか。

「ミハルですか。私の国では春の世界と言う意味ですね。」

「へぇ、レームさんの世界だとミは世界を意味するんですか。ちなみに私の字は美しい春と書いてミハルと読みます」

「かわいらしいお名前ですね」

「あ、ありがとうございます」

ニコニコ顔がデフォルトっぽいレームさんだけれど、そうストレートにほめられるとさすがに恥ずかしい。照れて頭をかいてしまう。

「ガキだと思ったんだがな」

いつまでもしつこい銀髪の男。

「あのですね、はじめに言った事は謝りましたし、不快に思っているならもう一回謝ります。だからいい加減突っかかるの止めてくれません?」

「フン」

うわぁ、目ぇ逸らしやがりましたよこの人。しかもなんだ、鼻で返事とか色々酷い。食って掛かろうとした私にかかるストップ。首をかしげながら魔道少年が口を開く。

「なんだかわかんないけど次ボクね。ボクはビーグリフ。苗字は事情があって明かせないんだ、ごめんね。ゲルミク魔道都市出身だよ。皆にはビィとかビールって呼ばれてる」

ビールってつまり

「‥‥発泡酒?」

「なにそれ?」

「お前脳反で喋ってんじゃねぇか?」

ビールが伝わるのは無礼男だけらしい。さすがにビールはないからビィと呼ぼう。

「気にしないで。とにかくよろしくね、ビィ」

「うん、よろしくミハル」

「こちらもよろしく」

「私も」

「‥‥俺も」

私と随分反応違う。恨めしげな視線を送るとやっぱりむかつく笑みで返された。よし、敬語は無しだこの無礼男には。

「最後は俺だな。オイルポルン出身のディアだ。フルネームを言うとカストル並みに長いので省略しとく」

「ディアは何をしている?持ち物や格好からして兵士とは違うだろう」

たしかに無礼男改めディアは、カストルさんと同じく剣を腰につけてる。けれど軽装過ぎるし、静謐だとかなんだとかそういったものを感じさせる服装でもない。

「俺は何でも屋だ。魔物殺しから護衛、失せ者探しまで依頼があればなんでもする。まぁ好ましいのは魔物狩りのほうだがな。護衛でもそれなり強いやつが相手のときは受ける」

本当に見た目を裏切りまくってるやつだと思う。もうちょっと、こう、踊り手だとか歌唄いだとかかわいらしい方向なら傾国の勢いだっただろうに。

「腕は?」

「国、と言うよりも大陸単位で名前を知られている程度だ」

顔じゃなくて?と言いたかったけれどさすがになんだかいってはいけないような気がした。美形は美形で悩みも有りそうだし。っていうかこの手の人間は大体コンプレックスっぽい。私の身長と同じくね。

「ほう、随分期待できそうだ」

「あんたこそ騎士団長代理って事は相当なんだろ?いつか手合わせ願いたいね」

「申し訳ないが私は指揮のほうが得意でな。剣技では陛下に敗北する程度だ」

「へぇ?よっぽどいい腕してるらしいな、お前の国の王」

なんか今度はこっちで話が盛り上がってる。術師ペアに剣術ペア、か。はっきり言って私浮いてる。私抜きなら異世界の王とか神官長とかに「おお勇者達よ、良くぞ集まった」なんて言われそうだし。盗賊か武道家が足りないくらい?ホントになんで私ここに居るんだろ、場違いにも程がある気がする。





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