97.ルイの願い
後書にエリーのイメージイラスト載せます
そして、明日の投稿でも別バージョンのエリーのイラストを載せます
僕は街に飛来したイナゴを狩りまくった。被害も大きかったが、それでも街は、兄様の治める街は守った。
しばらくは起き上がれなかったけど…リオのくれたペンダントにアロマオイルをたらす。いい匂いがして気持ちが落ち着く。
シェイパーは壊滅的な被害を受け、街は閉鎖された。
カイラスも復興が急務で、魔塔も魔術師を派遣して任務にあたる。
そうして1ヶ月と少し経った頃、スカイプから連絡が来た。シェイパーの調査をすると。魔術師を何人か派遣して欲しいと言う内容だ。
僕は手を挙げた、もちろんライもだ。なんと師匠に兄様まで。
こうして僕たちは準備して、シェイパーに向かった。
城門の外からは分からなかったが、街の中は悲惨だった。ここが、この街がイナゴを減らしてくれなかったら。カイラスももっと被害を受けただろう。
街の中へ入る。
堅牢な建物以外はほぼ原型を留めていない。魔獣の死骸もあるが、それは殺し合ったからか。
その数は思ったより少ない。
我々は迷宮の調査に進む。
その入り口からは魔獣が時々出てくるが、暴走というほどでは無い。
「迷宮に進んだ探索者たちの行方も分からない。彼らの無事と、迷宮の調査が我々の仕事だ」
衛兵のトップであるヘルフリッチ殿が言う。総勢30名で迷宮に進む。
そして1階層の途中で休む。支給されたテントは快適で、心配していた野営もバッチリだった。
テントから僅かにリオの魔力を感じた。通りで良く眠れる筈だ。翌朝、迷宮を進むと1階層の奥で探索者たちと出会った。
探索者ギルドのギルマス、マロウ殿が声を掛ける。
どうやらそろそろ食料が尽きそうで、撤退の時期を探っていたようだ。彼らは我々と入れ替わりで迷宮を出た。
ガイルという大柄な1人の探索者は我々と同行した。
そして順調に進む。確かにまるで調整されたかのような魔獣の数。かなり魔素は濃いのに、それにしては少ない。
そして辿り着いた5階層で、大きな探索者のガイルとギルマスのマロウが声を上げた。
どうやら海に海岸が出来たようだ。迂回路だ。悠々と進む。
これはリオ、かな。
その先も順調だ。元々の探索者は23名ほど。我々は31人で進むから早い。リオの短剣はまた良く斬れる。
そうして進むとやがて10階層に着いた。
そしてまたガイルとマロウが声を上げる。何やら断崖絶壁が無くなったらしい。山ではなくもはや丘だ。
そうして丘を進むとやがて迷宮が大きく動いた。鳴動が…?迷宮のボスが倒されると起こるというアレか。ならばリオたちがやったのか。
「もう迷宮はしばらく安全だ。崩壊する様子はないから、核は残っている」
「「「うぉーーーー!」」」
雄叫びが上がった。
「我々の悪魔は、漸く終わった!」
イナゴを発端とした魔獣の暴走はここで漸く終わりを告げたのだった。
「撤退だ!」
「おぉー」
帰り道で1人、罠に飛ばされたがまぁ大丈夫だろう。奥にはリオたちがいる。我々は先に迷宮の外に出た。
その後はこれから出てくるであろうリオたちを待った。
2日後、ついにその時が来た。
リオが迷宮から出て来たのだ。僕は思わず抱き付いた。嫌そうな顔をしていても構わずに。
「ウザイ、離せ」
と言われても抱き付いていた。だってリオは僕を引き剥がらたりしなかったから。
すると誰かにリオとライごと抱き上げられた。よく見たら…王子?ライも驚いている。1番驚いたのは、その王子に向かって
「離せ」
と言って顔を押し返しているリオだったが。
やっぱりリオはリオだ。僕は嬉しくなって声を上げて笑った。その僕を見てライも笑った。
こうして、イナゴ襲来からの魔獣暴走は迷宮ボスを倒したことで漸く終結したのだった。
少し時間は遡る。
王宮にて、手紙を読んだ私は王都を出発した。ヘルフリッチからの知らせだ。
―迷宮調査に向かう―
その通信はシェイパーの住民の一部を王都へと連れて来て、落ち着いた頃にもたらされた。私はひと足先に王宮に戻り、調査報告を作った後のことだ。
1週間後とある。ギリギリ間に合うか。普通に馬で行けば間に合わないが、魔道具なら何とかなる。
私は急ぎ報告を上げ、護衛と共に転移の魔道具でカイラスに飛ぶ。そこでシェイパーに向かう魔塔のラウロア殿と共に進んだ。
そして、シェイパーの街の迷宮ボスが倒され…長かったイナゴ襲来からの騒動は漸く幕を引いた。
迷宮から出て来たリオに侯爵家の双子が抱きつく。ルイのあんな顔は見たことがない。嬉しそうにリオにぎゅうぎゅうと抱きつく。
嫌がってはいるが、無理やり引き剥がさないのはリオの優しさだろう。私も嬉しくなって双子ごとリオを胸に抱く。
「離せー」
その小さな手で顔を押されるが、それだって本気じゃない。全くリオはどこまでも温かい。
その後は復興のためにシェイパーに拠点を構える。まずは寝起きできる家の整備だろう。そうして、着実に復興は進んで行くのだった。
そんな中、リオはしばらく離れると急に姿を消した。心配は、要らないだろう。またな、と出て行ったのだから。
私たちはいつ帰って来てもいいように、街の復興を頑張るだけだ。
*****
迷宮から出た後、俺は少しずつ体が動かなくなり箱庭の住人となっていた。ルシアは塔にいる。俺のそばにはモノリックとラナ、そしてリオたちがいた。
リオはコウモリの姿で俺のそばにいる。ミーシャとシルバもだ。
もう少し生きたいという願いはどうやら叶わない。それでも、大切なものたちに囲まれてる最後も悪くない。
寝ている時間が増えて、やがて来る死を自覚して…短い人生を振り返る。それでも思い出すのは長く過ごした離宮でも、シェイパーでもなくリオの事だ。俺の中に強烈な印象を残して、無表情で寄り添うリオのその温かな体。
人生の中でごく僅かな、しかし確かに1番幸せな時間を過ごした。
忘れられない記憶…ありがとうリオ。




