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長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律
84/88

84.もう1人の王子

 顔を上げて俺を見る。いや、今は俺じゃなくてミーシャを見てくれ。あ、期待に満ちた目だ。

 よし、偉いぞ!


(ノア、よく出来たな!)


 頬をテシテシする。嬉しそうに目元を緩ませた。労いのもふもふだ。頭をノアの頬に擦り付ける。

 ピクってしたな?


 何故かヘルフとじいじとジルともう1人が固まったのだった。


「ん、その…君の肩にいるのは雪うさぎかな?とても可愛いね」

 ノアは頷くと、庇うように俺の腹に手を当てた。

「これ、お金だよ。私に少し触らせてくれないか」


(却下だ!)


「どうぞ!」

 おい、ミーシャ何言ってんだよ!


 ノアの手が離れると、ジルの弟が近づいて来た。そして俺の眉間を撫でる。

 おっなかなか…いや、違う!気持ちよくなんか…悪くは無いな。うん、そこが良いぞ。

 調子に乗って腹と胸毛を撫でるソイツ。ひとまず前脚で顔を押し返した。

「うわっ脚の裏にも毛が生えてる!もさもさだ」

 喜ばれてる…もしや逆効果か?


(リオ、それは嬉しいだけ)

(なんだと!)


 前脚を引っ込める。するとあろうことか、俺の腹に頬ずりした。だからやめれって。ノアがフリーズしてるだろ?

「あ、ごめん。気になるよね?」

 と言って固まったノアの肩からお持ち帰りされた。いや、なんでだよ!


 その後酷い目にあった。

「スカー、そろそろ私にも…」

「兄様もですか?可愛いらしいですよね…」

 ジルに手渡された。フリーズから戻ったノアの手が彷徨う。流石に王子とかいうやつだとノアも奪えないよな。

 そしてジルはなんと腹に顔面ダイブしやがった。

 後ろ脚で顔を蹴る。

「本当に脚裏まで毛なんだな…」

 しまった、かえって喜ばれてキスされた。ウザイ!


 ジルが終わると遠慮がちにヘルフとじいじが撫でてきた。まぁ首元とか眉間は許そう。

 そうしてやっとノアの元に戻った。もう捕獲されないようにノアの懐に潜り込んだ。

 すると内ポケットから猫も出て来て並んでノアの懐から顔を出した。



「ぐっ…」

「なんて…」

「うっ…」



 ヘルフとジルにスカーが崩れ落ちた。なんだ?ノアを振り返りながら見上げる。

「可愛いだけだよ…」

 まいっか、猫を舐めてやろう。綺麗にしとかないとな。頭をペロンと。

 するとお返しとばかりにペロペロされた。


 ほんわかしたその様子は、一時の癒しとなった。


「では、これで…買い占めて悪かったな」

「いや、沢山助かるぞ!」

 ヘルフたちは帰って行った。

 さて、また石けんだけになったな。

 薬草でも売るか?

 魔獣の素材とかも売れるな。


(ミーシャ、ジャイアントトードの皮とボアの皮だ)

(エリー、ボアの皮で小物でも作るか?)

(手提げ袋とコイン入れなら簡単に作れる)

(そうか!なら頼むぞ)


 また机のこちら側に子蜘蛛がやって来て皮を切って手提げ袋とコイン入れを作る。

 鋭い顎と前脚のギザギザで皮を切って、尻から出した糸で縫う。本当にペーペーでも見事だ。

 あっという間に出来上がった。


 ミーシャとロイグリフが並べる。ロイグリフはたいして役に立ってないな。

「酷いなぁエリー。僕はいるだけで癒しを振りまいてるんだよ?」

 そう、ロイグリフの喉が鳴っている。それは誰もの気持ちを癒して心地良くさせる。そういう効果がある。

 俺がノアの懐から顔を出しているからじゃ無い。筈だ。


 宿の女将がお仲間を連れて突撃して来た。

 騒々しい。

「これよ、これ!この石けんは凄いんだよ!」

「そうなの?あらなめらか。少し高いけど…でもありね」

「だろ?無くなる前に買わなきゃ。買いだめだよ」

「ほんとねー私もまとめて買うわ。お兄さん、20個ちょうだい」

「私は30個で」

「私も30個よ」

「なら私も30個にするわ!」


 わいわいと買って行ってくれる。さらに

「あら、これは…?皮なのね」

「ジャイアントトードとボアの皮の手提げ袋とコイン入れだな」

 あ、値段…ヤバい。

「これはまた、丁寧な仕上げじゃ無いか!安く売っちゃダメだよ、そうさね…銀貨3枚だ」

「そうね、普通の手提げ袋だと銅貨3枚からあるけど、これは丈夫だし何より縫い目が揃ってて素晴らしいわ。どちらも買うわ!」

「私も一つずつ買うわ」

「私も!」「私も!」


 順調に売れてるな。

 向かいの親父も防具がかなり売れてしまって、急遽作った防具は少ない。暇だからか、俺の店に来た。

「いつもの兄ちゃんは休みか?」

「あぁ、今日はな。代わりに任されたミーシャだ」

「おう、よろしくな!これはコイン入れか?」

「手提げ袋とコイン入れだ。ジャイアントードとボアの皮だな。銀貨3枚だ」


「確かにその価値はあるな。金を管理するのに使えそうだ。2個ずつ買うぞ!」

「ありがとよ!昨日はかなり売れたのか?」

「なんだかなぁ、何か近いのかね」

「っぽいなぁ」

「ほら、金だよ!備えるかな」

「そうだな…毎度!」


 その後も石けんも手提げ袋もコイン入れもそこそこ売れた。昼前に手提げ袋とコイン入れは売れてしまった。

 それぞれ30個は作ったのにな。

 さて、午後は休みだな。

 箱庭にこもって料理だな。携帯食を沢山作ろう。ゆっくり食べられない時に助かるんだ。

 まぁ俺らは要らないけどな。


 幕を閉じて食べ物を買いに行く。

 串焼きと硬いパンと魚と飲み物も買って。エールという酒とツマミとなるオークの干し肉にナッツ。

 麺類もあったから沢山買って貰う。

 ロイグリフは買い物が得意だ。だいたい、おまけしてもらえる。

 癒し効果だ。


 路地から箱庭に行く。

 箱庭は薄陽が射していた。良かった、かなり戻ったな。

 後で主のところにも食べ物を持って行こう。

『ノア、沢山食べろよ!』

 懐から見上げて言う。

 チラッとこちらを見ると、食べにくいからと懐から出された。

 鼻をぷもぷもしっぽをタンタン、耳をぴまぴました。顔を前脚で洗う。ふう、落ち着いた。


 ノアとミーシャ、ロイグリフは地面に座って黙々と買ったものを食べる。

 ノアはやっぱり串焼きなんだな。

『主のところに行ってくる』

『俺も行くぞ』

 シルバと家の中に入り、突き当たりから塔に入る。

 主の居住スペースに付くと、本来の姿でソファにもたれていた。

 もちろん、そばにはカシスがいて、その体を膝に乗せて抱きしめていた。カシスは満更でもなさそうに撫でられている。


 シルバはてけてけと歩き、カシスと鼻鼻挨拶をした。

『ほぼ回復したな!』

「まあね…エリー、いよいよだな。エリーのご飯が食べたい!」

 ひとまず作り置きのご飯を柔らかく煮たものとオムレツに冷たいシュワシュワした飲み物を亜空間から取り出す。

 テーブルに並べるとふわふわと浮いて主の近くで空中に止まった。


 手を出さずに勝手にスプーンやフォークが動き、主の口に吸い込まれる。手抜きすぎだろ。

『ちゃんと起きて食べろ!』

 流し目で見ると

「じゃあエリーが食べさせて?」

 くっ仕方ないな。

 主の肩に移動するとスプーンを前脚で握り、柔らかなご飯を口元に運ぶ。子供みたいに口を開ける主。

 パクリと食べて笑う。


「やっぱり食べさせてもらうと美味しくなる!」

 そんな筈はないが、まぁそう思ってるならいいか。

『ほら、オムレツも食べろ』

 あーんと口を開けて食べる。もぐもぐ。

「ふふっいいね。甘やかされるのも。ここ100年は倒れることもなかったし…看病されるのは久しぶりだ。エリー、沢山甘やかして?」


 手のかかる主だな。でも確かに、引きこもってる間は平和すぎて暇だったからな。刺激的で楽しいのかもな。

 主のこんな無邪気な笑顔を見れたしな!



 やっぱり主が大切なエリーだった。



 食べ終わるとシュワシュワを飲む。

「ん?これ凄く美味しい…。エリーが作ったの?」

『あぁ、エールって酒を見てな。酒じゃないエールみたいなのがあったらと考えた』

「これはヤバいね!そうそう、エリー。騒動が終わったらもうCランクになりそうだよね。お金も困らないくらい貯まったし。そろそろ迷宮に行く準備をしよう」

『迷宮は主が潜るんだろ?』

「そうだよ、エリーはうさぎでついて来て。探索は任せるから」


 1人で俺よりも広範囲の探索ができるだろうに。

「1人はつまらないよ。一緒に驚いたりさ、分かち合いたいから」

 それもそうか、暇つぶしだもんな!


 本来は死ぬか生きるかという危険がいっぱいある迷宮探索。それを暇つぶしと言ってしまうルシアーノとエリーだった。





王子のおかわりは要らないんだよ!怒

お、俺の頬に王子の髪の毛か触れた…ガクガクブルブル

うさ耳がノアの首の両側からはみ出ている…

色々カオス


*読んでくださる皆さんにお願いです*


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