83.アクセサリーの防御
「リオ、いるか?」
幕の外から声がした。
『この声はソマリだな、ミーシャ頼む』
ミーシャは幕を上げると
「今日はリオは休みで、代わりに来てるぞ」
「ん?そうなのか?」
「あぁミーシャだ」
「商業ギルドのマスターでソマリだ。商品は買えるか?」
「大丈夫だぞ」
すぐ後ろにはジルもいた。
「リオが休んでるのか?調子が悪いとか?」
「いや、徹夜で剣を作ってな…疲れて寝てる」
おっミーシャは上手いな!間違ってない。
「それは…申し訳無かったな」
「大丈夫だ、明日には元に戻る」
「そうか、アクセサリーが欲しいんだ」
「中でも見てってくれ」
ソマリもジルもアクセサリーを見ている。何か話しながら。あくまでもオマケだからな、防御は。
期待されても困る。
(ミーシャ、防御はオマケだと言え)
(もりもり付けただろ?)
(簡単なのだけだ)
以下の付与あり
指輪 高さ5mmくらいで幅広
ミスリルとステンレスの合金
内側にラピスラズリが埋め込まれている
防汚 魔法反射 ラピス(触れると防御シールドが展開)
バングル 高さ3cmくらい
屋号とマークの近くにラピス
防汚 魔法反射 ラピス(触れると防御シールドが展開)
ネックレス 長さ18cmくらい
バチカンに屋号と先端に涙型のラピス
防汚 魔法反射 ラピス(触れると防御シールドが展開)
ラピスが体に触れていれば、防御は展開される。
指輪の外側についているタイプも、ちゃんとラピスが肌に触れるようになっている。
本当に簡単な防御だぞ。
(おい、エリーの簡単な防御って簡単じゃ無いよな?)
(防御が働けば、キングオークもマーダーグリズリーやワイバーンの炎も弾くだろ。多分だが、無意識に反魔法も付けてるだろうし)
(だよな?)
「ミーシャだったか、このアクセサリーは出ているだけか?」
(エリー、亜空間に在庫あるよな?)
(あるが、たくさんは無いぞ?)
「あと少しならある」
「全部買っても良いか?」
「もちろんだぞ!」
短剣は売り切れで、アクセサリーも売り切れなら時計と石けんだけか。
ミーシャとロイグリフで在庫を確認する。
ネックレス 15本
チョーカー 3本
バングル 21本
ブレスレット 7本
指輪 大 16個
指輪 小 9個
けっこう売れてたんだな。案外少なかった。
「時計もある分買って良いか?」
「もちろんだな、出てるだけだ」
腕時計 5個
懐中時計 4個
残りは石けんだけか。
沢山買って貰ったからな、空間拡張のポーチにでも入れてやれって思ったらミーシャが俺の亜空間から出してた。
アクセサリーごとに箱に入れて分けて収納。
時計は個別に入れてたな。まあな、あれは10倍程度の拡張だから。
「またこれは…いいのか?」
ジルが聞けば
「構わない、リオには確認済みだ」
「そうか、助かった。あぁ時間のある時に商業ギルドに来てくれるように伝えてくれ。ランクが上がったからな。頼むぞ!」
「おう、伝える」
こうしてソマリとジルは帰って行った。
ポツンと石けんだけが残ったな。
ま、仕方ない。俺もうさぎでは作れないからな。
あ、そうだ。ミーシャの糸や布を売れば良いんじゃ無いか?
『ミーシャ、お前の布とか糸を売るか?棚が寂しいからな』
「ならば、小さな手提げ袋を作ろう。それならいいだろう」
『値段はどうする?あ、ハンカチなんかも良いぞ!リオノールのロゴを刺繍して』
「いいな、子供たちにやらせよう」
わらわらとこちら側に出て来た子蜘蛛が様々な色で刺繍をする。
相変わらず上手いもんだな。
自分のお尻から出した糸を魔法で染めながら刺繍をしている。鮮やかだ。あ、絵まで描いてる。
上手いな…コウモリに狼に蜘蛛にうさぎに猫か。
出来上がったハンカチと手提げ袋をロイグリフが並べる。
なかなか見栄えもいい。
布と色とりどりの糸も置いたら途端に華やかになった。
でもな、値段がわからないぞ。
『値段どうする?』
「むっそうだな…」
「…」
ヤバいぞ。客が来ても値段がわからないとかマズイだろう。
そこに救世主が来た!ヘルフだ。
「リオっとあれ、いないか?」
「今日は休んでてな。頼まれて店番をしているミーシャだ。なぁ、これ、値段いくらがいい?」
「ん、どれどれ…」
ピシッ
手を出した所で固まったヘルフ。
しばらくしてギギギと音がしそうなほどぎこちなく顔を上げた。
「ミーシャと言ったか?またなんてもん出してんだ?」
「ん?ただの蜘蛛の糸だ!」
ミーシャは自分の糸なので価値が分かっていない。
「ただの、じゃないだろ?聖虫の白蜘蛛の糸…蜘蛛絹じゃないか!おい…しかも王族も持ってないレベルだぞ、これ。なめらかで艶やかでハリも素晴らしい」
「銀貨1枚で売れるか?」
ぐりんと音がしそうなほどの勢いでミーシャを見たヘルフ。あれ、高いか?
「安過ぎる!金貨5枚だ。しかもこの見事な刺繍…色も素晴らしいぞ」
こちら側で子供たちが胸を張る。可愛いぞ?
それにしても金貨5枚じゃ誰も買わないぞ…マズイな。安く売る方法は無いものか。
ヘルフの後ろからじいじとまたジルが誰かを連れてやって来た。暇なのか?
「ヘルフもいたのか」
「ジル…様に、スカー…様まで?」
「兄様に時計をもらってな。気になったので来てしまったのだ」
「リオは休みだそうです」
「残念だな…ってえっ…?」
「これは…」
「なんと…」
「「「蜘蛛絹?!」」」
今日もまだシンクロはブームなのか。
「な、なんとまぁ…」
「凄い…兄様の言った通りですね!」
「はぁ相変わらずだな、リオは」
ミーシャは首を傾げる。
「ちょうどいい。今、値付けで悩んでいてな。銀貨1枚でどうかと…」
「「「安過ぎる!」」」
やっぱりダメか、あっもどきって事にしたら?
(ミーシャ、もどきだ!)
(なるほど、子供たちのだからな、よし、もどきだ!)
「蜘蛛絹じゃないぞ?もどきだ!」
嘘だろって思ったヘルフリッチ、ガブリエル、ジルベルトだった。
「だとしても、だ。銀貨1枚は無いぞ!せめてそうだな…金貨3枚。これは譲れない」
それじゃ誰も買えないだろ。
ミーシャがしょんぼりした。価値が高いと言われて落ち込むのもどうかと思うがな。売れなきゃ作った意味がない。
「私が全て買おう!その布も糸もハンカチもな。それならいいであろう?」
高くて売れないことを気にしてるんじゃ無い。商品が無くなるのが困るんだ…安くしないと庶民は買えないし。
ミーシャも分かっているんだろうが、売れて困るわけじゃない。沢山あるからな!
「ならそれで。因みに布と糸はいくらがいい?」
買う人間に聞くのもどうかと思うんだがな、俺らには価値が分からないからな。
「布は金貨20枚、糸は金貨1枚だな」
布が凡そ1m×5mで、糸は1束だ。まぁハンカチから考えれば妥当か?手を加えていない分、ハンカチよりは安いしな。
俺はノアを見る。
手元の紙に
布が5巻 金貨20枚が5 40と40と20で100枚
糸が12束 金貨12枚
ハンカチ 金貨3枚が100枚 100と100と100で300枚
全部で412枚
顔を上げて俺を見る。いや、今は俺じゃなくてミーシャを見てくれ。あ、期待に満ちた目だ。
よし、偉いぞ!
(ノア、よく出来たな!)
頬をテシテシする。嬉しそうに目元を緩ませた。労いのもふもふだ。頭をノアの頬に擦り付ける。
ピクってしたな?
何故かヘルフとじいじとジルともう1人が固まったのだった。
俺はキュートなうさぎだぞ!
胸元から覗くリアルうさ耳に密かに悶絶するノワールだった…
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