表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/101

81.火の精霊

『あーここかぁ、なんか楽しそう!』

 やけに場違いな声が響いた。

『あ、何しに来た?』

 ガンを飛ばす。

『面白い魔法を感知してさーってルシアーノじゃん』

 ウザいな、コイツも。

『忙しいんだ!冷やかしなら帰れ』

『あー誰かと思ったらーエリスもいるぅ』

 だからいちいちうぜーよ!


「久しぶりだね?サラマンディスの妖精」

『ふふふっおひさー』

「エリーもそうカリカリしない。加護をくれるかもよ?」

『あれ?やだぁエリスってば可愛いー』

 飛んできて俺の胸毛にダイブした。

 前脚でテシっとな。

『ウザイぞ!』

『やーだーもう可愛い』

『あっこら耳は触るな!』


 くそっコイツも自由人だからな!ロイグリフ系だ。苦手なんだよ、俺は。

『ん?この子だけ弱いねー加護を上げようかなぁ』

『なに?ノアに加護を?』

『うふっそうだねーエリス』

 うっもふられてる、悔しいがノアに火魔法の加護は欲しい。欲しいがやっぱりウザイわ。


『ウザイわ!離れろ』

『えーいいのぉ?加護欲しくない?』

『もっと優しくて性格のいい方を呼ぶから間に合ってる!』

『えぇーーー!』



 ヒュウ



『楽しそうだな、ルシアーノよ』

「サラマンディス、久しぶりだね」

『ついに大深林を出たのだな』

「そうだよ、なかなか楽しい」

『エリスをこき使ってるんだろ?』

「さあね?」

 うんうん頷く俺。


『ん?雪うさぎがエリスか?また可愛いらしい…』

 ギクッ見つかった。置物になろう。ノアにしがみ付く。

『ふははっまた可愛いらしい。そこの子は弱いな。どれ、加護でもやろう。シルバにも、ついでだからな…みんなにもやろう!』

『おい、軽々しく加護なんて与えるな!』

「ははっ僕もエリーもいらないからね」

『あって困るもんでもなかろう。周りのものには影響するからな』


 それもそうか。

『たまにいい事言うな!』

『エリスは変わらんな?もふらせろ』

 結局もフラれた。ちくせう。


(リオ、リオ…サラマンディスってまさか…)

(まさかが何か知らんが、火の精霊王だな)

(…加護って…)

(ん?火の精霊王の加護だな)

(…)

(良かったな!火魔法が使いやすくなるぞ!)



 そういう問題じゃない、と思ったノワールだった。精霊王の加護なんてとんでも無いのだ。

 エリーはあれば便利くらいにしか思っていないが。



 ノアの肩にいる俺を正面から屈んで頬ずりするサラマンディス。それでノアの頬に精霊王の髪の毛が触れる。

 燃えるような赤い髪だ。

 ついでにバランスを取るためにノアの腰を抱いている。

『ふふふっミクロネシアンか?またいいものを見た。閉鎖的な国民だが…エリスにはずいぶん懐いてるな?』

『ノアが固まってるだろう?一応、精霊王だからな。立場を考えろ!』

『ふふふっエリスは相変わらずつれないな』


 そのまま俺ごとノアに頬ずりしてキスをしやがった。加護だけじゃなく祝福までかよ…しかも俺にまで。

 要らないんだがな、全く。

「ずいぶん気に入ったんだね、ノアが」

 主が聞けば

『ふっ私が気に入ってるのはエリスだよ!』

 前脚で顔を押せば

『足裏の毛もなかなか…』

 逆効果だった。



 ヒュウ



 一陣の風が吹き抜ける。

『なんだ、楽しそうだな』

 チッまた来た。間に合ってるぞ!

「やあ、久しぶり、ウィンディーネ」

『久しいな、ルシアーノ。大深林を出たのだな』

「まあね」

『良き、して何やら楽しそうだな。サラマンディス』

『エリスは渡さんぞ!』

『お前の所有じゃない!』

『ん?なんと、そこなもふもふはエリスか?また可愛いらしいの』



 シャラン



 また来た。俺はサラマンディスの顔を前脚で押し返しながらノアの首にしがみ付く。

 ウィンディーネがノアを見て

『弱き子がおるな…ちと加護をやろうぞ』

『俺は要らんぞ!』

『あははっそばにいれば一緒につくわ』

 嘘つけ!精霊王がそんなことも出来ないわけがない。全く。


『我にももふらせろ!』

『嫌だ!』

 逃げようとしたが遅かった。その見た目だけはたおやかな手に捕まった。

『なんと可愛らしいもふもふじゃ』

 あ、分散させればいいのか。

『ノア、内ポケットから猫を出せ』


 ぎこちない動きで猫を出すノア。

 俺が前脚で捕獲するとサラマンディスとウィンディーネに差し出す。

『うぉぉー!』

『なんと!』

 猫ごと頬ずりされた。しまった。もふにもふを足してしまった。


『ノアノア、猫をシルバの首元に置け』

 固まっているノアはそれでも精霊王たちの中から猫を取り出すとシルバの首元に置き、シルバのポーチから2匹も取り出して置いた。

 俺を手で押さえながらサッとシルバから距離を取るノア。デカした!


 精霊王たちは猫に釘付けだ。

『はわわっなんと小さき子たち…』

『特殊個体じゃな…』

『『加護をやろう!』』


 キリッとした顔で言ってるが、その手は猫をもふり倒している。欲望がだだ漏れだが?


 そばにルシアーノが来る。

「相変わらずエリーは人気だね」

 そう言って俺に手を伸ばして胸毛をモフってきた。仲間外れは嫌なのか?全く。その顔を前脚でテシテシする。

 くっなんで嬉しそうなんだ。


 猫を撫でて満足したのか、精霊王たちは帰って行った。

『全く騒々しい』

「リ、リオ…彼らは?」

「精霊王だよ、エリーは気に入られててね」

『精霊界で良く会ってたからな』

「エリーが下界に来る前だね」

「…リオはリオだよな?」

『そうだぞ!』


 精霊王に気に入られてていても、リオがリオならそれでいい。

 肩のエリーにすりもふするノワールだった。


『ウザイ!』

 ノアまで…俺はそんなに気安く触られないぞ!


 それにしてもロイグリフもミーシャもこんな時は静かなもんだ。全く…助けれくれてもいいものを。

 特にロイグリフなんてもふもふなのに。

『ノア、火魔法の練習だ!』

 ヤケだ。人間火炎放射器だ!

 ノアが指先に火を灯す。さっきまでの火と違って1mくらいか。ノアが口を開けて驚いている。


「ふふっ君もそんな顔が出来るんだね!精霊王の加護があるんだから、当然だよ!」

 ノアは目を瞑って風魔法で火を揺らす…筈が


 ボォーーーーー


 火が噴射した。伊達に精霊王の加護じゃないな。

 うんうんしながら見てたら

「リオ!」

『どうした?』

 ノアを見ると泣いていた。えっとなんでだ?

 慌て頬をテシテシする。

『ノア、どうした?』

「魔法が使えた…」

 使えてただろ?

「ち、ちゃんと自分で…」


「エリー、彼は制御出来たと言いたいんだよ」

 なるほどな。

『酷かったからな』

 エリーはいつだって言葉を飾らないのだ。

「そう、使えてなかった。でもやっと…俺でも街の為に、出来ることが…」

 俯いて泣き出したノアに焦って固まっていると、徐にノアが俺を抱き上げて…腹毛に顔を埋めた。


 くっ離して欲しいが…ここは我慢だ。我が子の成長を喜ばなくては。

 気持ちはやっぱりおかんなエリーだった。



「エリ母さん凄いな」

「エリーだからな」

 ロイグリフとミーシャの会話なんか聞こえないぞ?


 ノアの涙はとても暖かくて、仕方ないから前脚で頬をテシテシしてやった。


 しばらくしてノアが顔を上げる。

 顔を浄化で洗ってやった。

『落ち着いたか?』

 鼻をぷもぷもしっぽをタンタン耳をぴむぴむして聞く。

 頷いて頬を染めると

「リオは暖かくて柔らかい」

『うさぎだからな!』


 多分、そういうことじゃないと思う。

 ロイグリフとミーシャは思った。


「もう大丈夫かな?もっと練習するかい、ノワール?」

「後少し…」

「分かったよ、せっかくだし。ロイグリフとミーシャの火魔法も見るといい」


 ロイグリフは10本の指先から縦横無尽に紫炎を出して飛ばした。火炎放射だな、うん、さすがだ。

 ノアは口を開けて驚いている。

 ヤツは火魔法が得意なんだ。しかしな、そのドヤ顔はムカつくぞ。


 次はミーシャだな。白い髪の毛が炎みたいに立ち上がって手を上げたりはしないが、全身から炎が吹き出した。さながら火の弾だ。見てるだけなら楽しいが、イナゴからしたら脅威だな。

 またノアは口を開けていた。


「凄い…」

『聖獣でも火魔法が得意なヤツらだからな。ちなみに主は全くの規格外だぞ?』

 さらに驚いて主を見る。

「僕は手伝えないからね。軽く見せてあげるよ」

 主の手が円を描き空高く手を上げる。

 すると空に向かって紫の炎がオーロラのように立ち昇った。幻想的なそれは光となって空に消えた。


「なんてきれいな…」

 主だからな。ドヤっておくぞ!

 ノアはしばし空を見てから俺を見る。

「リオは…?」

 うさぎ形態だとな…アレなら出来るか。

 ノアの肩で反転すると



 ボォーーー



 ケツから紫の炎だ!

 名付けてメタンガス噴射!

「…」

「あははははっ、エリーはやっぱり、うふふっ斜め上だね」

 主が口を開けて笑っている。珍しい。なんか嬉しくなった。まだ出会った頃の主みたいに純粋で楽しそうな笑顔だったから。




メタンガス噴射…臭そうと思ったシルバだった



*読んでくださる皆さんにお願いです*


面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪

モチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ