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長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律


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73.石けん

 ライを見る。

「普通の石けんは銅貨5枚から。見せて?」

 俺は亜空間から石けんを取り出した。手の平に乗るくらいの石けん。ごく普通の石けんだ。


 ルイが素早く俺の手の石けんを眺める。

 手をルイにズイと差し出したので、ルイは受け取って驚いている。

「凄い…なめらかでいい匂いだ」

 ライも石けんを眺めると

「これなら銀貨2枚で売れる」

「はぁ?高すぎだろ!」

「いや、適正価格だ」

 ライが断言する。


 ノワールはリオはきっとあんなんでか?とか思ってるなと思った。


 その通りだ。リオにとってはその程度なのだが、聖獣が作る石けんなのだ。

 品質がいいのは当たり前だ。

 しかも匂いはしっかりと抽出され、完璧な撹拌でなめらかなのだ。


「それは…庶民は買えないな」

 ライは少し考えて

「香りなしにして、この大きさの半分で売ればいい。それでも銅貨8枚かな」

「なら半分のさらに半分なら銅貨4枚だな!」

 コクリと頷く。


「リオ、どれくらい作れる?沢山欲しい…」

 ルイだ。

 ライは苦笑して

「ルイは匂いにとても敏感だから」

「すぐには無理だぞ?10個なら明日にでも渡せるが」

「欲しい。他の匂いも、あるよね?」


 思いの外、匂いに敏感だな、コイツ。

 仕方ない、ラベンダーも出すか。

「これだな」

 見せるだけだがな。まだノアにも渡してないんだ。


 凄い勢いで目の前に来てガン見している。

 匂いを嗅いで何故か泣いた。

 やめてくれ、俺が泣かせたみたいだろ。泣いているルイとおでこを合わせる。

 なるほどな…これは、まあ。


「ギルドを通さない取引は出来ない。石けんは用意しとくから、明日取りに来い」

 そう言えばルイは悲しそうな顔をした。

 だから

「これは試供品だ。感想を聞かせろ!」

 さっき使った残りだ。これなら許されるだろう。

 ルイは大きな目をさらに開いて俺を見る。


「使いかけだが、嫌か?一度ついさっき使っただけだ」

 首をブンブン振るとか細い声で

「ありがとう…」

 石けんを受け取って胸に抱く。


 まあな、匂いに敏感というよりは魔力の質、だな。

 音とか匂いに敏感なのは、そっち系の魔法に強いから。気配察知とか聴力強化とか。

 その分、普段の体も影響を受ける。人は弱いからな。聖獣だとその程度では影響を受けないのだが。

 同じ双子なのに珍しい。


 ライを見る。

 目を逸らした。なるほどな、作られたか。

 どっちがどっちが分からんが、人間界ではままある話だと主が言っていた。

 双子とはなかなか難儀だと。


 俺は肩をすくめる。仕方ない。

「明日多めに作って行く。作った分は買ってくれよ」

「もちろん!」

 ルイの大きな声を初めて聞いた。本人もビックリしてる。

 そもそも俺を食事に誘った理由がこれだとはな…まぁなんだ、解決したならいいか。


「リオ、改めて謝罪を。立派な従魔がいると知っていたのに、使いを…あんなへなちょこにして申し訳ない。それと、宿の人間な…」

「別にいい。深く関わるつもりはないからな。あの宿こそ、どうなろうとどうでもいい」

「…伝えておくよ。明日は朝一番で店に顔を出す。よろしく」

「あぁ、見送らないぞ!」

 頷くとライはルイの背中を押して部屋を出て行った。

 ルイは目に涙を溜めて俺を見た。


 全く…人とあまり深く関わるつもりはないのにな。

 ノアだけで充分だ。


 ノアが、しまったドアを見て

「リオ、あれは…魔力か?」

「だな。感知系の魔法に強いんだろう」

「双子なのに…」

 俺は何も言わない。立ち入るつもりはないし、ノアも知らない方がいい。

 でも…気が付いたなあの顔は。


「石けんを作る。先に寝てていいぞ!」

「見ててもいいか?」

 別に構わないが…面白くもないぞ。

 俺は応えずに机に向かう。成分を抽出して化成ソーダと混ぜて固める。

 少しだけヒアルロン酸なんかも加えるか。ふくふくしてそうだからな、アイツら。

 肌が荒れたとか言われたら面倒だ。


 ノワールの目には保湿成分が石けんに加えられたことを捉えた。なんだかんだとリオは優しい。

 そして流れるような作業は見ていて気持ちがいい。

 結局、リオの手元には100個どころじゃ無い石けんが積み上がった。

 その半分は元の大きさ、残りはその半分の半分だ。


 そして、多分だけどルイに渡す分は白い紙に包んでいた。流石に普通の紙…かと思ったけどあれは…。

 うん、何も見なかった事にしよう。

 100個も樹海産樫の木の繊維から作った樫の木の油を表面に塗った溶けない包み紙だなんて知らない。

 断じて見てない!

 しかも可愛いらしくリボンをかけてるそれは、ミーシャの絹糸なんて見てない。


 リオは香り付きだけ包んでいた。

 飾りのない方は適当に紙に包んで渡すみたいだ。良かった。買った石けんより遥かに高い包み紙とかリボンは流石に。

 いや、もう香り付きはすでにリボンの方が高いのは間違いないが。


「リオ…そのな、気を悪くしないでくれ。ミーシャの糸はとても貴重なんだ」

 リオは目を丸くして

「ミーシャのじゃないぞ?子供の方だ。ペーペーだぞ?聖獣の子供だ」

「今は厳密には聖獣じゃないんだよな?」

「そうだな」

「品質は?」

『俺のが月で子供のはスッポンだな』

 無駄にいい声のミーシャだ。


 ダメだ、伝わらない。

「子供のでもその価値は凄く高いんだよ…。ミーシャのなんてもう値段が付かない」

 リオとミーシャは顔をまた合わせる。

「沢山あるよな?」

『毎日出るからな』

「物の値段は需要と供給のバランスなんだ。少なくとも俺には有り余る糸がある。俺にとっては普通の糸より安いんだ」


 胸を張って言われた。

『気にするな、ノワール。いくらでも出せるからな!』

 頷くしかないノワールだった。

『エリーがお前に渡した下着だって俺の糸が使われてる!』

 ぐっやはり。やたらと手触りがいいと思ったんだ。

「ありがとう…とても肌触りが良い」

『…当たり前だな』

 前脚で顔を覆うミーシャ。声は渋いのに仕草が可愛い。

 いや、そうじゃなくて。


 俺はため息を吐いた。




今日も今日とてやり過ぎな聖獣ズだった…



*読んでくださる皆さんにお願いです*


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