68.謎の鉱物を取ろう
「魔法で、だ。浅い部分に埋まってるからな」
「リオ、まだ上手く使えない」
そうだったな。
どうするか…魔力を流し方というか、魔法の使い方か。
育てた聖獣たちにしたあのやり方かな、やっぱり。
ノアに手を差し出す。
疑いもなくその手を取るノア。
「一緒に魔力を流すぞ!」
コクンと頷く。
「まずは俺の魔力に同調する、一緒に魔力でお散歩だな、いいか」
またコクンと頷く。
ノアの手を土に当てて上から手を乗せる。
俺からノアへ魔力が渡り、ゆっくりと流れて行く。よし、順調だな。
「そのまま一気に土の中へ魔法を放つ…埋まっている鉱物を取り出すぞ」
ノアは魔力を必死に放出する。
ぐっ一気に来たか…魔力の制御が、ノアの魔力が暴発する。
「ノア、ダメだ!抑えろ!!」
間に合わないか。
(ミーシャ、シルバ、退避しろ!)
ドカン
土がその下の鉱物ごと爆発した。
俺は主の体からコウモリの羽で防御を展開する。聖獣であるコウモリの羽は魔法を弾き、物理耐性もそれなりにある。
主の体はすぐに治るし、なんならほとんど傷付かない。庇うのはノアだ。
しばらくするとパラパラと降っていた土が収まって、立ち込めた煙も消えた。
「リ、リオ…リオ!」
ノアが何か叫んでるな…少し眠い。
俺は何が起きたか分からなかった。魔力をたくさん注いで…注ぎ過ぎて制御を外れて、それで。
何かとても柔らかなものが自分を包んだのを感じた。優しくて温かい何かが。
物凄い音がしたのに、何処も痛く無い。俺を包んだものの気配が消えて、静かになったので目を開ける。
そしてその光景を見て頭が真っ白になった。
リオのそばに小さな白いコウモリが、ボロボロの姿で横たわっていたから。
その羽は傷だらけで、そっと触れると柔らかくて温かい。俺を守った何かは…リオ?
横たわる白いコウモリのリオを見て
「リ、リオ…リオ!」
生まれて初めて大声を出した。嫌だ、リオ…リオ。俺をひとりにしないでくれ!!
その小さな体を抱き上げてそっと胸に抱く。
初めて心から笑えた。
初めて人の温もりに触れた。
初めて俺を認めてくれた。
俺のために怒ってくれた。
そんなリオを俺は…俺のせいで。
嫌、だ。失いたく無い。
「リオ!」
泣きながらリオの名前を呼ぶ。
辛い事も苦しい事も痛い事も沢山あった。それでも泣かなかったのに…今は涙が溢れて止まらない。
何かが動く気配がした。狼と蜘蛛がコウモリに前脚を当てる。ゆっくりと傷付いた羽が再生していく。
ミーシャはエリーほど魔法が使えないし、シルバは苦手だ。それでも人よりは遥かに使えるし、治癒魔法だって使える。
だが、エリーみたいに一瞬とはいかない。
今のエリーは魔力を留めて、体を小さくする事で維持している。時間と共に魔力が戻れば体の大きさも傷も治る。
大けがというほどでは無いし全く心配ないが、泣いているノワールを見かねて、治癒魔法を使ったミーシャとシルバだ。
今のエリーは急速な魔力不足による眠気なのだと分かっているから。
聖獣の体は魔力で維持するから、羽を展開した時にかなりの魔力を消費したのだろう。
ミーシャやシルバが冷たいのではなく、死ぬようなことでは無いと分かっているので、冷静だ。
そして、横たわっていたリオノール(ルシアーノ)が起き上がった。
「エリー」
コウモリの体をふわりと撫でる。すると傷付いた羽は元の艶やかな白い光沢のある虹色の羽に戻った。
ノアの手の上からエリーを包むとふわりと白く光った。
「ノワール、もう大丈夫だ。急激に魔力が減ったから、身体が維持出来なかっただけだ。羽が傷付いただけだから、本体は問題ない。色々と頑張ってるから、少し寝かせておこう。大丈夫だよ」
ノワールは涙を拭ながら
「リオはもう大丈夫…?間違いなく」
「あぁ、間違いなく、な」
ノアはそっとエリーに頬ずりした。
「エリスリオノール」
「えっ?」
「エリーの名前。僕たちはエリーって呼んでるけど、ノアはそのままリオって呼べばいい。リオノールはエリスリオノールから取った名前だから。僕はルシアーノだよ。この身体は少し作り替えててね。まぁその話はおいおい、かな。ノアも魔力を一気に使って疲れてるだろ。箱庭で休もう」
そう言うとノワールごとミーシャ、シルバと共に箱庭に転移した。
ルシアーノは引きこもりだが、コミュ障ではない。元々は人懐っこいのだ。親しくなると見送るのが辛いから、距離を置いてるだけで。
それは言い換えれば、それだけ人が好きと言うことだ。
エリーの気持ちもノワールの気持ちも、分かっているルシアーノだった。
ノワールはエリーを手で抱いたまま、箱庭に腰を下ろした。そしてルシアーノを見て頭を下げた。
「リオを治してくれてありがとう」
「君にお礼を言われる事じゃない。エリーは僕の大切な仲間だから。当然だ」
「それでも…やっぱりありがとう」
ルシアーノはそっぽを向いた。素直な感謝の気持ちには弱いのだ。
座ったノワールにミーシャとシルバが寄り添う。
ルシアーノもそばに座った。ルシアーノが近くにいれば魔力が満たされるのが早いし、箱庭はルシアーノの魔力で出来ているから、回復も早いのだ。
やれやれ、主も大概過保護だなとミーシャは思った。主の手で治したんだから、もう全快してるはず。
それをもう少し寝かせようと睡眠魔法を使って、更には癒しの魔法までエリーに掛けていた。
ルシアーノにとって、エリーはそれだけ大切な存在なのだ。
「リオはコウモリか?」
前にも見たが、その羽は繋がってなくて重なり合っている。とてもきれいな羽だ。
身体もふわふわとした白い毛に覆われていて、コウモリ感はゼロだ。
「白コウモリ、だな。僕も会った時は驚いた。コウモリ感が無いから」
ノワールも頷く。
「かなり高位の聖獣だよ、エリーは」
実際には妖精王の使徒なので、神獣と同じ格だ。
ルシアーノはエリーの羽や身体、頭を撫でる。
「ふわふわなんだよ?羽なんかすごく温かい」
「さっきは何が…?」
「ノワールの魔力が制御を外れて土の中で暴発、その余波で爆発が起きた。エリーは僕の体の中から羽を展開してノワールを守ったんだ。装備とかアクセサリーの防御では、あそこまでの物理的魔力的な爆発は防げないから」
「俺のせいで…」
ルシアーノはノワールを見る。
「そうだ、君のせいで、だ。それが嫌なら…本気で魔力の制御を覚えろ。エリーは育てた子たちが使えるようになるまで、自分がケガをしても教える。みんなエリーにケガをさせたくなくて、死に物狂いで制御を覚えるんだ。全くそんな事を狙ってないのにね、エリーは。ただ、覚えていたら必ず自分を守る。だから出来るまで教えたい。それだけ」
ノワールは頷いた。狙っていなくても、結局はそのリオの気持ちに応えたくてみんなが頑張る。
分かるような気がする。きっとみんなリオを慕っているのだ。リオが自分達のために教えていると分かっているから。
手元の白いコウモリを撫でる。その体は柔らかくて温かくて…やっぱりコウモリ感はゼロだった。
すぴーすぴー
気持ちよく寝ているだけのエリーだった
ちょっぴり心配して密かにエリーの羽に防御を飛ばしたルシアーノだった
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