表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/101

62.探索者ギルドの閉鎖

 おっさんに付いて進んで行くと、ある部屋に着いた。中に入るとマロウとじいじと、ヘルフもいた。

「やぁ、リオ!ワシに用とか」

 適当な椅子に座って答える。

「あぁ」

 ちなみに今は主に同化した。なんとなくじいじには遠隔が通用しないと思ったからな。

 もちろん、ノアには伝えた。また心配するからな!

 俺は気を遣える系のコウモリなんだ。


「マロウとヘルフもいるなら都合がいい」

 そう伝えてギルドカードを差し出す。

「今日はなんて事のないジャイアントトードの討伐だ」

 不思議そうな顔をしながらもマロウが立ち上がって機械にカードを入れる。

「はぁ?何だこりゃ」

 横からじいじとヘルフも覗き込む。

「はぁ?」

「何と!」

 だよな…?普通なら群れても10匹かそこらだ。それが200匹超えるとか無いだろ?


「魔力素が?」

 じいじが聞く。

「多分な…近くにはこんな薬草がたくさん生えてたぞ」

 ポーチから取り出す。

 えっとなんて名前だっけか。


(リンネル草だよ、エリー)


 主から返事があった。うん、そんな名前だったな。

 薬草であっても名前を覚える気が無いエリーだった。


「これはまた、貴重な…」

 ノアを見る。頷いてるな。俺には良く分からん!

「それは樹海の外縁部近くにも生えてるからな。魔力素が濃いんだろう」

 じいじもマロウもヘルフも絶句した。


「樹海並みとは」

「違うぞ、外縁部だ!全く違うからな」

「そ、そうなのか?」

「外縁部の魔獣なんて弱いからな。全然だ。でもな、街の近くだと考えるとな…」

 驚きながらも頷く。


 そもそも魔力素が濃いのは地脈が重なり合うか、引き合った時だ。

 普通なら1本で動く地脈が、稀に他の地脈と重なる事がある。近くにある地脈同士は引き合う習性があるからだ。そうして近づいた地脈が重なると、勢いで地上に吹き出して魔力素が濃くなる。


 常に吹き出しているのは樹海だけだが、稀に自然現象として起こるのだ。それが発端となり、イナゴの魔獣が激増する。だから他の魔獣や獣が増えたイナゴをエサとして増える。

 普通なら数もそこまでじゃないし、適度に淘汰される。それが爆発的に増えると淘汰が追いつかない。 


 ジャイアントトードが群れたり猪が群れるのはその兆候だが、3本程度が重なっただけだろう。何本も重なるとそれこそ樹海のようになるからな。

 ただ、普通は2本程度なのが今回はそれ以上。だから前兆が小動物ではなかったんだろうな。という事は、当然だがイナゴの群れの規模も、大きさも普段以上となる。それなら主が厄介だと思うのも道理だ。


(主よ、あとどれくらいだ?)

(んー近いかな)


「そんな時によりによって探索者ギルドが閉鎖とかな…タイミングを計ったのか?」

 じいじとマロウは頭を抱えた。

「いや、もちろんそんな事は…」

「カルア山付近で異変を感知したんだろ?何で気がつかない?調べもしてないのか?」

 あまりにももっともな言い分に黙ってしまった。

「しかも群れたのは小動物じゃない」


 ヘルフも目を見開いて口を開けた。

「まさか…」

「そんなっ」

 マロウは青ざめて固まっている。


「黙ってても解決しないぞ?」

 容赦がない言い分に聞こえるが、これは街を思ってのこと。それが分かるだけに誰も何も言い返せない。


「で、どうするんだ?」

 リオノール(エリー)は聞く。俺たちはあくまでもイレギュラーだ。この先、何かあっても多分、俺たちはこの街にいない。

 街を守りたいなら自分たちで頑張るしかないのだ。


「まずは、探索者に街に留まるよう伝える」

 じいじが搾り出すように言う。

「稼げないのに止められるのか?」

 しごく自然な問いだ。

「そこは、ギルドから緊急依頼で…」

「信用が地の底に落ちてる状況でか?」


 冷たく聞こえるが、こちらも至極まともな言い分だ。ノワールは感心した。リオに取っては本当にどうとでもなるし、どうでもいい筈。それをこれだけ親身になってくれる。

 密かに感動したのだった。


「ヘルフたち衛兵からの臨時雇いみたいに出来ないか?」

 ヘルフが驚く。

「ギルド憲章第85条に、危機的状況においては、他の組織と連携して依頼をこなす事を例外的に認める。その際には、探索者ギルドのマスター以上が発布する公示を持ってなす、とあっ筈だが?」

「そうか、リオ。デカしたぞ。その通りだ!マロウ、お主の謹慎は明後日からじゃ。今日中には公示を出せ!」


「リオ、そしてノワール。感謝する。イナゴだな…?」

 俺は肩をすくめた。その判断も含めて、今後の糧になるだろう。

 話は終わったな。俺は席を立つ。

「一探索者としての協力はするぞ」

 ノアの頼みだからな!


 ノアの手を握って部屋を出て、そのまま探索者ギルドを後にした。


「リオ、俺のために…ありがとう」

 ノアが多分、恥ずかしそうに言った。俺たちには恥ずかしいという感覚が分からないから多分だ。

「約束だしな…」


(主、抜けるぞ!)

(まだダメ…。夕食作って。ボタン鍋と山芋の焼いたのと山菜の炊き込みご飯食べたい)


 チッ盛り沢山できやがった。



 適当な路地で箱庭に移動する。ノアの手は握ったままだ。俺だと触れてないと箱庭に転移出来ないからな!


 そして、主と同居したままで夕食を作る。

 牡丹鍋は味噌がいいのか…?肉を薄めに切って、ザク切りのキャベツと煮込む。

 山菜はアク抜きをして米と炊く。山芋は皮を風魔法で剥いて、ついでにカットしてフライパンで焼く。

 パラパラと塩とリンネル草を振りかける。食べる時に遠くの島国で作られている醤油という調味料をかけると美味い。ちなみに米や味噌も同じ島国産だ。


 出来た!

 テーブルに鍋を置いて、炊き込みご飯をよそい、山芋を皿に載せる。醤油を垂らしたら出来上がりだ!

 もちろん、シルバとミーシャに俺、猫たちの分もあるぞ?

 ノアに声をかけたところで主から抜けてノアの近くに降りる。

『猪の肉を使った鍋と、山菜の炊き込みご飯と山芋を焼いたのだ』


「くすっエリーありがとう!おいしそうだ」

 主は顔を綻ばせて食べ始める。箸という棒を2本器用に使って。ノアはフォークとスプーンだ。

 その白い頬が色付いた。

「美味しい…リオが作るものは何でも美味しい」

『良かったぞ』

 シルバとミーシャもガツガツ食べてる。お前らほんと要らないだろ!ったく。


『おい、シルバにミーシャ。主とノアが優先だからな!』

 チッ聞こえないフリしやがった。俺は味見もしたからな、少しでいい。

『主とノアはたくさん食べろよ!』


『なぁ、やっぱりエリー母さんだな』

『あぁ面倒見のいい事で』

 無駄にいい声のミーシャと渋い声のシルバは頷き合った。


「エリーはね、僕のために料理を覚えたんだよ!」

 おい、ノアにマウント取るなよ!付き合いの時間が違うだろ。何百年一緒にいると思ってるんだよ…。

『主もエリーは特別だからな…』

『知らねーよ』

 相変わらず塩対応なエリーだった。





知らねーよ、ってか当たり前だろ!と思ったエリーだった

何事においてもルシアーノが最優先…ドヤっ


*読んでくださる皆さんにお願いです*


面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪

モチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ