61.やっぱりか
依頼達成の報告が終わって、ギルドを出ようとしたら
「あ、おい…リオ!」
声をかけられた。かけられたのは主ことリオノールだが。
(エリー頼むよ)
遠隔操作だな、主の口を借りてしゃべる。
「おう、ガイルか」
「あぁ、良かった。市場に行ったんだがもう閉めてて」
「昼過ぎまでしかやってないぞ」
「らしいな」
「何か用か?」
「あ、あぁ礼を言いたくてな…」
何だ?やっぱり後ろから刺されたのか。
「後ろから襲われたか?」
「う…まぁな。って…何で分かった?」
いや、むしろ何で分からない?
「…お前、脳筋か?」
容赦のないリオノールだ。
「ぐっ、まぁな」
認めるなよ!はぁ。
「お前の剣は迷宮産だろ?呪いでしかヒビなんて入らない。だからな、恨まれてるのか知らんが…」
ガイルは驚いていた。
いや、ほんとに何で気がつかないんだ。
「そうか…リオの剣もすごく良かったぞ!でもな、あの剣はやっぱり特別で。直せる方法を知らないかと」
主が反応したな。
(見せてもらって)
念話がくる。手を差し出す。首をひねって握手をして来た。
バカなのか?
「おい、この話の流れなら剣を渡すだろ、普通。やっぱりバカなのか?」
とことん容赦のないリオノールだった。
「あ、そうか…」
慌てて剣取り出す。手に取ると、これは…黒魔術か。
「呪いの一種だな」
心配そうに
「直せるか?」
(主なら出来るだろ?)
(エリー、見覚えない?この魔力)
ん?剣をよく見る。あれ…なんか知ってるな。
(知ってるな。誰だ、このブッサイクな魔力は)
(さてね?)
マジか。面倒くせー。
(おい、それってタカリじゃないか?)
シルバが渋い声で言う。
誰だ、タカリって…。考えてもそんな名前は出てこないな。
(あ、タカーリルだ!)
今度はミーシャだな。
ん?タカーリル…どっかで。あーアイツか。
(主に懸想した変態か!)
((ソイツだ))
まだ生きてたのか。アイツも無駄に長生きだな。前に主に捕らえられて遠くに放り投げられたのは何百年前か…?
あー本当に面倒くせー。
「預かってもいいか?」
遠隔じゃ無理だからな。主は傍観してるし。
いや、摂理に触れるのか…?ま、なんとかなるか。
「いいぞ!頼んだ」
こうしてガイルの剣を預かった。
「依頼は大丈夫か?」
「ん?あぁ…そもそもしばらく受けられないだろ?」
何の話だ?
「ギルドが閉鎖されるっていう話だ。聞いてないか?」
「聞いてないぞ」
「常設と依頼達成の窓口以外は閉めるってよ」
振り向いたら依頼受注窓口のおっさんと目があった。手招きされたのでノアの肩に乗って主と歩いて行くと
「依頼の押し付けや、不当な依頼、依頼の不達成処理の件でだ、本部から監査が入る。その期間は原則、閉鎖となるんだ」
俺は特に気にしていなかったが、主が反応した。
被るのか?
これは話をした方が良さそうだな。
「マロウかじいじはいるか?あ、じいじは確かグランドマスターらしいぞ」
「じいじっておい、ガブリエル様をじいじって…ギルマスは呼び捨てだしよぉ」
「かなりマジで大事な話だと言え」
俺は正直かなり面倒だからやりたく無い。でもな、仲間のノアが助けてくれと言ったから。
聖獣に二言はないんだ。
俺の(ルシアーノ)圧に屈したのか、青ざめておっさんは転がるように部屋を出た。
ふわっと俺が抱きしめられる。ノアが振り向きながら片手で俺を撫でた。
(リオ、ありがとう…面倒かける)
このやり取りで察したのか?ノアは過敏だな。で、アホ面してるガイルは脳筋だな。でもガイルの情報だからお手柄か。
「たまにはいいこと言うな!」
全くフォローになってないエリーだった。
普段は穏やかな緩い流れのようにリオの魔力がめぐってくる。そこに合わせて自分の魔力を動かすことで、細く魔力を動かせるようになった。
だからか、最近は近寄るだけで怖がられることは減った。リオの魔力は心地良く、一緒に魔力散歩をするのは楽しい。力の加減もいつの間にか出来るようになった。
ノワールの世界は、今まで生きて来た17年の人生よりも、リオと出会ったここ数日で遥かに広がった。
自分の種族も、嫌われることも受け入れて。ずっとそうして孤独に生きるんだと漠然と思っていた、限りある時間の中で。
なのに、リオは全く無自覚に俺の懐に入って来た。温かくて優しいリオ。
字も少しだけ読めるようになったし、計算も少し出来る。これでもう誤魔化されたり、騙されたりしない。
そんな当たり前がとても嬉しいとノワールは思った。
さっきは肩の上のリオが魔力を止めて外部に放出した。それでもごく僅かだが、圧倒的なその魔力はほんの少しでも冷気を伴う。
俺が街を助けて欲しいとそう願ったから。それが原因だと分かったから。その柔らかな体を寄り添わせた。
嫌そうに鼻をぷもぷもしっぽをたんたん耳をぴむぴむしているが、蹴られてない。なら、リオも俺が気が付いたことに気が付いた。
ふっやっぱりリオは俺に甘い。
調子に乗って頬ずりしたら前脚で頬を蹴られた。もっとも足の裏にももさ毛が生えてるから、ちょっぴりご褒美なんて思ったノワールだった。
ちっノアに抱き寄せられたぜ、うぜー!
ってか早くおっさん戻れよ!!
罪のないおっさんに当たるエリーだった。
バタンッ
凄い勢いで奥のドアが開いた。
ドアは無事か?手加減しろよ。
急がせた筈のエリーが内心で毒づいた。
「はぁはぁ…お、奥で…」
おっさんの喘ぎとか誰得だ?
いちいち失礼なエリーだった。
「おう!」
そして何故か偉そう。
聖獣には地位などが無いから、この辺りは疎いのだ。
「ガイルはいいぞ?いても役に立たないからな!」
親切心で言ってるんだろうけど、言い方と思ったノワールだった。
ガイルは嬉しそうに
「お、おう!難しいことは分からないからな!」
「街は出るなよ?」
えっという顔をしたが
「出る予定はないぞ!」
ボッチなんだな、と明後日の心配をしたエリーだった。
だからもふもふとか抱っことか頬ずりとかマジでうぜー!
もふもふはもふってなんぼ!と思ったルシアーノだった…
雪うさぎのエリーに蹴られてちょっと嬉しいノワールだった…
もふもふはもふってこそ…作者もそう思います…
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
モチベーションになります!




