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長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律


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57.ガイルの憂い2

 翌日、俺は臨時でパーティーを組んで討伐依頼に行く事になっていた。

 剣を見るとごく僅かにヒビが入っていた。日課の素振りをしている時に、いつもと音が違うと気が付いたのだ。

 これはダメだ。予備の剣は無い。迷宮産の剣にヒビなど何故だ?

 その時は急いでいたから、取り敢えず市場に走った。


 例の子供、リオの店なら剣もあるかもしれないと思ったからだ。この時間はまだ普通の店は開いていないからな。


 案の定、店は開いていた。

「リオ、昨日の短剣凄いな。切れすぎて自分の指をおろすところだった」

「なんでそうなる?下手なのか?」


 容赦のない言葉だが、不思議と不快では無い。


「不器用でな」

「軽く振れば大丈夫なように作ってある。握り込み過ぎるとかえってブレるぞ」

「そうなのか、気を付ける。なぁ、剣は売ってないのか?」

「無くはない」


 実は結構買う人がいたので、並べてはないが作っておいたのだった。



「急に入り用でな、もう少ししたら依頼で出るんだ。無くては困る。なぜかヒビが入っていて、困っていたんだ」

 短剣でも刀身は伸びるから大丈夫だが、やはり感覚が違うからな。

「高いぞ?ミスリルだからな。それとガイルからすると頼りなく見えるかも。普通の直剣なんだ」

「構わない。細剣じゃ無ければ」


「これだ」

 リオが取り出した剣はなんだか神々しかった。

「おお、なんだか見るからに凄いな!」

 リオはジトっとした目で俺を見る。わ、分かるぞ…多分。


「斬れ味上昇とか刃こぼれ防止とかの基本付与はもちろん付けてある」


 何が基本で何がもちろんなのか、分からないがきっと凄いんだろう。


 実際には魔法反射とか防御とかも付いている。しかも、もしガイルが買うなら物理と魔法の防御は増し増しにするか。どう考えても防御を捨ててそうだ、なんて考えていたことをガイルは知らない。


「なるほどな…」


 分からんが、凄そうだ。


「その分高いがな。金貨10枚だ」

 俺は驚いた。

「なんと!激安ではないか」

 ノワールがうんうんと頷く。


「それなら予備も含めて2本欲しい」

「あぁ金貨20枚だな」

 俺はお金を払った。それくらいなら安いもんだ。


 何やらリオが剣に手を当てている。

 さらに予備の剣は片方の剣の剣帯に収納していた。

 は…?

「予備の剣はこっちの剣帯に収納した。取り出したい時は「出でよ!」って叫べよ」

「「…」」

 その掛け声は恥ずかしいだろ!

 それ以前に剣帯に予備の剣を収納の意味が不明なんだがな。


「助かった。この時間に剣を売ってる店はまだ空いてないからな」

「おう、お前の剣がダメになったのなら依頼に気を付けろよ。特に後ろをな」

 良く分からないが頷いておく。

「?分かったぞ。じゃあな!」


 慌てて店を出て、待ち合わせの場所に向かった。斬れ味の確認とか要らんかなぁ?と思いながら。


 待ち合わせ場所にはまだ誰も来ていなかった。

 5分ほど待つと、5人のパーティーがやって来た。

 パーティーのリーダーが俺の剣を見る。そして驚いていた。

「剣はいつものじゃないのか?」

 ん?俺の剣を知ってるのか?何となく

「新しい剣帯だ」

 と言えば、何故かホッとしたように

「そうか…」

 と答えた。


 違和感を感じたが、元々深く考えないから気にもしていなかった。

 今日は最近増えている魔蜘蛛の討伐だ。何やら巣を作って盛大に数を増やしたらしい。


 歩いて2時間ほどかかるから、早めの集合だと聞いていた。しかし、実際に歩いたら1時間もかからなかった。

「おい、2時間掛かるんじゃなかったのか?」

 パーティーリーダーに聞けば

「あ、いや、その…おかしいな」

 目が泳いでいる。


 俺は止まって

「お前たちの連携を確認したい」

「「えっ?」」

 やっぱり様子がおかしいな。

「えっじゃないだろ?臨時とは言え、パーティーを組むんだ。知らなきゃこちらも動けん」

 強めに言えば

「あ、あぁ…」


 彼らはCランクのパーティーで、リーダーが剣士、遊撃2人に魔法職と探索のシーフだとか。

「防御は?」

「「…」」

「俺は剣士だ。防御はせんぞ」

「わ、分かってる!大丈夫だ。後方から支援するから」


 気にはなったが、パーティーとしては無難な布陣だ。ただ、シーフがいて時間を間違うか?


 疑問に思いながらも、もう目当ての場所は目の前だ。

「行くぞ!」

「「おう!」」

 嫌な予感がしつつも

「連携を見たいから後ろから行く」

 最後尾から彼らを眺める。


 ツノうさぎを簡単に剣士が捌き、シーフが収納する。動きもおかしな所は無い。


「いよいよだ、ガイルは最前に!」

 もうなるようになるだろう。俺は色々と飲み込んで進んで行った。


 わらわらと魔蜘蛛が出て来た。確かに数が多い。魔蜘蛛は体長が10cmほどの蜘蛛で、噛まれると痺れる。

 数が多いと村人が噛まれたり、放牧している牛を襲う。肉食で、獰猛。纏わりつかれたら、最悪は命を落とす。

 普通はそこまでになる前に剣で斬れるから、問題ない。


 そう、その筈だった。

 みんなで順調に狩っていく。剣は元のヒビが入った方を使っていた。

 それでもなんなく斬れる。


 その時、ズサンと振動が来た。

 何だ?一瞬手を止めたその時、後ろから飛ばされた。

 はっ…?飛ばされながら振り向けば、魔法職の女が俺に手を向けていた。

 風魔法か…?


 俺は蜘蛛の巣がある高い場所へ着地した。

 サッと俺を取り囲む蜘蛛たち。そしてその隙にアイツらは蜘蛛の巣に背後から近づいて、蜘蛛の糸を採取していた。くそっ、元からそのつもりだったのか。

 剣で蜘蛛を切るが、数が減らない。


 その内、ヒビが入った剣は根元から折れた。それを見て、リーダーのヤツは笑っていた。

 なるほどな…リオが後ろに気を付けろと言ったのはこれか。くそっ、やられた。


 討伐依頼では無く、蜘蛛の糸の採取依頼だったとは。

 魔蜘蛛の糸は細くてしなやかで、魔力が乗っている。人気があるのだ。

 しかし、魔蜘蛛は巣の近くに数千といる。だから採取難易度がとても高い。だいたい、B以上だ。


 この規模の群れなら下手したらAか。

 俺は

「出でよ!」

 恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。だから呼んだ。すると俺の手に当たり前みたいに収まった。はっ…?

 一瞬、目を離した隙に蜘蛛に噛まれた…あっ…あれ?


 噛まれたよな…?なんで蜘蛛の方がピクピクしてるんだ…?


 兎に角、コイツらをやらなくては。気持ちを切り替えて、剣を振る。


 ザシュッ


 嘘だろ?刀身が伸びた、更に斬撃が飛んだ。俺はただ振っただけだぞ?

 いや、今は考えるまい。まずはコイツらをやるぞ!


 ザシュッ


 面白いように斬れる。そして、ついに複眼を赤くした親蜘蛛が現れた。コイツはまた…討伐ランクは単体でAだ。

 周りに子蜘蛛がいるから、更に高いだろう。やってやるさ!俺は夢中で親蜘蛛に向かった。


 ザシュッ


 しかし、俺の前では瞬殺だった。

 いや、違うな…リオの剣の前では、だな。ふう、アイツとんでもないだろ。


 そこで違和感を感じた。何だ…物が2重に見える。

 まさか…?左目を塞いで手を見る。

 み、見える…何故だ。

 俺は刀身に自分の顔を映す。そこには右目が僅かに開いた俺の顔が写っていた。


 …傷で完全に塞がっていた瞼が開き、目が見えている?

 俺はその様子に呆然としかけ、まだここは巣の近くだと思い直す。


 周りにいた子蜘蛛は散らばって居なくなっていた。俺は巣の中に残っていた糸を取り出す。布もあるな、これは嬉しい誤算だ。


 俺は魔蜘蛛たちを魔法で焼いて帰路についた。





短剣で指をすりおろすのは邪道だと思ったリオノールだった

すり下ろしたい訳じゃ無いだろと思ったノワールだった



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