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長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律


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55/101

55.ヤツが来た

 コウモリの俺の予感、特に嫌な方の予感は当たる。ゾワリとした。

 そう言えばシルバが言ってたな。

 いや、考えちゃダメだ。俺は鼻をひくつかせながらノアが勉強するのを見ていた。


『エリー…ヤツだ』

『ウゲッ』

 俺は顔を上げる。マジかよ…一番会いたくないヤツじゃないか。

「よぉ、ルシ…ん、ん。リオノール」

「やぁロイ、来たね?」

「お前が呼んだんだろ」

「まぁね…」


 店に入って来たのは輝く銀髪の、髪の長い男だ。スラリとした細身の体で、白い服を来ている。その目も銀色。とても目立つ。

「やぁ、エリー。ずいぶんと可愛らしい見た目だね」

 クククッと笑う。お前に笑われたくない。

『…』

「おや、これは珍しい。ミクロネシアンだね…ふーん、エリーに懐いてるんだ?隣の子はサーバルだね?その子もエリーが育てるのかい?」

『…』

 俺は無言を貫く。


 コイツはロイグリフ。主の契約聖獣だ。

 俺もミーシャもシルバも苦手だ。自由気ままでとにかく空気を読まない。ため息をついた。関わり合いたくない。

「やぁ、僕はロイ。ルシ、ん、リオノールの友達だよ。君はなんて名前なの?」

「…」

 俺が警戒してるらか、ノアも固まって応えない。

「彼はエリーにしか懐いてない。ロイは警戒されてるよ」

「えー、人畜無害なのにな…」

 いや、むしろ害しかないだろ。ノアは純粋だからな。関わらせたくない。


 ロイは目を細めて俺に手を伸ばす。ノアがすぐに手で俺を抱えた。

「あれ?警戒されてる?」

 だからめちゃくちゃ睨まれてんだろ、お前。

「えー寂しいな」

「ロイ、エリーたちに構うな。お前はギルドに登録して仲間を増やせ」

 ロイは肩をすくめると

「分かったよ」

 そう応えて店を出て行った。


『主、なんで呼んだんだ?』

「ん?んー…ちょっと厄介そうだからさ」

 そうか。アイツはウザいが実力はある。純粋な戦力なら俺やシルバには劣るが、まぁそれなりに強い。



 それなり、はルシアーノ基準なので、人なら最強クラスなのだがもちろんエリーは知らない。



 それにしても主が出てくるし、ロイグリフも呼んだ。嫌な予感しかしないな。まぁ俺が頼んだのだが。

 チラッとノアを見る。真剣な顔で勉強する。人では無い俺には分からないが、散々な目にあっていても、やはり見過ごせないものなのか?


 あの体を傷を思い出す。エリーだって全くケガをしない訳ではない。突然主が魔法の練習とか言って的にされたり、樹海で最凶最悪な魔樹どもが万単位で暴走して駆逐したりとかすればケガくらいはする。

 死ななければ自分で治癒出来るが、痛いものは痛い。

 ノアは本当にいいヤツなんだな。



 聖獣は死に対する概念が人とは全く違う。それでもルシアーノを見ていてそういうものだ、と分かることもある。

 どのみち、自分は人とはあまり関わらないからな。深く考えないエリーだった。



 その後は客が来ない時間が続き、もうお昼だ。けっこう売れてるし、もう休憩でいいだろう。

『主、昼ご飯だ』

「あぁ、そうだね、ノア。買って(箱)庭で食べよう」

 ノアは単語帳をしまうと頷いて立ち上がった。もちろん俺はノアの肩(あんぜんちたい)にいる。サーバルは変わらず俺にしがみ付いてまん丸なお腹を上に向けて寝ている。

 平和だ。主はノアの事が分かっているので市場の屋台で適当に色々と買いこむと市場を出ていつもの路地に向かった。


 そして箱庭に転移する。いい天気だ、なら主はご機嫌だな。

「串焼き好きだよね?」

 ノアは頷く。そして串焼きを手に取ると俺に差し出して来た。俺は食べなくても大丈夫だから

『ノアが食べろ、俺は主から魔力を貰うから大丈夫だ』

 ノアは少し考えて

「俺の魔力ではダメか?」

 主の魔力じゃないと足りない。濃さも量も。

『足りないな』

 そうか、と呟き串焼きを食べた。最後の一切れを口に咥えるとそのまま俺の口元に持って来た。俺は肩にいるからノアは少し横を向いただけだが。


 せっかくだからノアから食べさせて貰う。何となくノアは満足そうな顔をしていた。

 俺は少しだけサーバルに口移しで肉をやる。嬉しそうだ。

 主は

「こんな食べ物があるんだね」

 とか

「これ美味しい」

 とか感動しながら食べていた。長らく引きこもってたからな。俺たちや自分が作るご飯しかもう何百年も食べてない。そらうまいだろ。


 食べ終わると満足そうにゴロリと横になった。ノアはソファにもたれて目を瞑る。すぐそこに白くて作りものみたいな顔があった。俺もサーバルを抱えて丸まった。脇腹の毛にノアの頬が当たっていた。

 安全地帯だ。ここにしがみ付いていたら流石の主も俺をもふらないだろう。





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