53.開店するぞ
じいじたちが帰って行くのに合わせて幕を上げた。開店だ。
たくさん売れたが主からはもっと稼げと言われた。仕方ない。俺は主から出てうさぎに戻る。ノアの肩に戻る一瞬の隙に主に捕まりモフられた。
撫で回され頬擦りされる匂いを嗅がれる。
うぜー、後ろ足でキックだ。それすら嬉しそうに受けてる。キモいぞ。
やっと離して貰えてノアの肩に避難する。その首に前脚でしがみ付いた。安全地帯だ。
首元に張り付く白いまふまふ。鼻をヒクヒクさせてる姿は可愛くて、ノワールは頬ずりしたい衝動を必死に抑えた。
肩の温もりを手放したくなくて。胸のポケットから猫が這い出して来た。リオの匂いを嗅ぐとリオの隣に寄り添った。まふまふにもふもふが足された。可愛いとノワールは思った。
『ノア、勉強しろ』
やっぱりスパルタなコウモリだった。
ノアが勉強している側でルシアーノは市場の様子を伺っていた。
久しぶりの人の世界もなかなか興味深いな。
ん?客か?遠隔でも大丈夫そうだな。
(エリー客だ)
(おう、余計な事喋るなよ?)
(さあね?)
くっ楽しむ気満々だな。
そこにやって来たのはムサイおっさんたちだ。探索者だな。それなりに稼いでそうだ。顔や腕に傷があるが、自信に満ちた顔だ。見掛け倒しでは無さそうな。
「よお、ここにアクセサリーがあるって聞いたんだが」
ノワールはチラッと彼らを見る。人殺しでもしてそうな風体だが、確かAランクの探索者だ。パーティー名は
「颯に翔ける」
何だか分かるようで分からない名前だから覚えている。
その彼らがアクセサリー?
「あるぞ!ここだな。ネックレスに指輪、バングルだ」
「これ、これだ。腕につけるヤツ。これが全員分欲しい」
パーティー「颯に翔ける」のリーダー、ジョップスはまだ少年の店主に声を掛けた。
少し前に共同で受けたゴブリンの集落殲滅作戦の時、同じチームになったCランクの若者3人がお揃いで付けていたのだ。装飾品なんか付けてチャラチャラしい。そう思っていた。いたのだが彼らは思いの外、堅実だった。
しかし、ゴブリン数が思いの外、多かった。さらに他の群れが雪崩れ込んできた。
女性に群がろうとするヤツらを蹴散らしながら助けに行くが、すでに取り囲まれている。くそっ、間に合わない。そう思った時に眩い光と共に、その女性の周りに薄い輝く膜が現れた。
はっ?えっ…。手は止めないが目がその光景に釘付けになる。女性もポカンとしているが、やはり手は動かしている。膜は敵の攻撃を防ぐがこちらの攻撃は届いている。
あれは、噂に聞くシールドなのでは?
しばらくすると膜は消えた。実はその頃、他の場所でも苦戦していた若手がゴブリンに囲まれてしまった。
ジョップスのパーティー仲間が助けに行くがやはり間に合わない。棍棒を待ったゴブリンに四方を囲まれて殴打される、と思ったら透明な膜が防いだ。
彼らはそれを目の当たりにしたのだ。
全ての討伐が終わり、結局は300を超える集団となったゴブリンを前に命を落とした者も、攫われた女性も複数いた。巣を見つけた時にはもう正気ではなく、助けられる前に自害した。
あの女性もそうなる運命だったのだ。あの不思議な膜が無ければ。それを見ていたのは俺たちパーティーだけだ。だから討伐が終わり、ギルドに報告を出した後に声を掛けた。
彼らは青ざめていたから
「教えて欲しいだけだ。誰にも言わない。それ、だな?誰から買った?」
彼らは取り上げられると思ったらしく、聞きたいだけだとそう言えばホッとしていた。
買った場所を聞けば市場で見つけた店だとか。短剣も買ったが、剣が途中でだめになり仕方なく短剣を使った。剣よりも良く切れたそうだ。あり得ない!
取り敢えず、公にはしない事にした。しばらくは合同の依頼は受けるなと彼らにはいい含めて。
そして今、その店に来ている。
まだ若いというより幼い店主。大きな目は魅力的で全てを見透かすようだ。見た目がイカついからか、小さな子には良く泣かれる。しかしこの店主は顔色一つ変えない。
さらにこの風体でアクセサリーと言ってもだ。自分で言うのもなんだが、一見すると人殺しもかくやという凶悪な見た目だ。
種類を聞けば丁寧に教えてくれる。腕に付けるヤツだ。しかし邪魔にならないのか?
「大丈夫だ、軽いしサイズはもちろん自動調整だ。付けてみるか?」
何がもちろんなのか疑問だったが、シャツをまくって腕を差し出す。そこに店主の小さな手がバングルというものを付けてくれる。
シュン
ぴったりのサイズになった。はっ?自動調整ってこんなに簡単に出来るのか?しかも軽い。腕を振ってみるが重さを感じない。むしろ凄く鋭く振れる。
ルシアーノが軽く筋力強化を付与したからだ。軽くと言ってもルシアーノ基準。バッチリしっかりと強化されていた。
「これはまた…凄いな」
「俺にも…」
後衛の治癒師であるチータスタだ。同じく店主が付けてくれる。
シュン
「これは…魔力が」
ルシアーノが少し魔力を放出する際に補助(出力が増すブースト効果)を付けたのだ。やっぱり少しと言ってもバッチリだ。
「凄いな…」
「俺にも!」
前衛の盾担当であるビーダストルだ。
シュン
「おぉーこれは!」
ルシアーノが防御を増し増しにしていた。もちろん、バッチリだ。
「やべえぞ…」
「俺にも…」
後衛の弓使いのマンターメルだ。
シュン
「ふおぉぉぉー」
威力が増す付与だな。最早スキルを付与したに近いんじゃないか?とエリーは思った。
「ふふふふふっ」
「俺に、も」
前衛の剣士、フロムタールだ。
シュン
「?」
防御特化の付与だから体感はないだろうな。ただ、何となく無敵感があるはずだ。口元がヤバいくらい緩んでいる。
「ヤレる…」
何をだ?コワモテで口元を緩めた後のセリフとしてはマジでヤバいだろ、とノワールは思った。
「「「「「買うぞ!」」」」」
「毎度ありー」
「なぁ、短剣と後、指輪も欲しい」
彼らはコワモテだが全員、妻帯者だ。そして妻想いなのだ。
それぞれ短剣に剣帯の色を選んで買ってくれた。
短剣、剣帯ベルトセット 小金貨18枚
バングル 銀貨9枚
指輪(大) 銀貨7枚
一人当たり小金貨19枚と銀貨6枚
これもノアが計算した。全員が小金貨20枚払ったから銀貨4枚のお釣りだ。
今日もなかなか稼いでるな!
手伝わせてる(計算だけ)ノアにも少し分けるか。そう思ったエリーだった。
ホワイトな職場を目指すエリーなのだった…
ノワールには甘々だな、と思ったシルバとミーシャだった
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