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長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律
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5.森人

 ゆっくりと眠り快適に目覚めたリオノールは箱庭を出て樹海の外を目指す。

 昨日で約半分は進めた。

 今日は森人の集落で泊まればいいだろう。


 塔の周囲に植っているものほどではないが、樹海(ここ)も貴重な薬草の宝庫だ。

 ロロ草やルル草は樹海にしか生えない薬草で、主にケガの治療に使われる。

 ララ草とレレ草は樹海近くの土地にしか生えない薬草で、主に病気の治療に使われる。

 この付近にしか生えないものはその効能が凄い。


 採取出来る場所が限られていて、しかも効能は間違いないとなればその価値が高まるのも当然だ。

 最もルシアーノはこの貴重な薬草をお茶として飲んでいる。

 さらには骨や内臓の治療に使えて一瞬で治せるロロ草を小さな切り傷に使っている。

 主曰く、すぐ治るから楽〜なんだとか。


 そんな感じで、とにかくこの辺りの薬草(主にとっては多分、雑草)は貴重だ。

 ラピスラズリを売るより確実だし喜ばれるはず。

 なのでリオノールはせっせと採取する。

 これを売ればすぐにお金も貯まるだろう。そう思って。

 といいつつも、ルシアーノの体だから魔法が使い放題なので、屈むことなく土魔法で根ごと採取し空間拡張ポーチに空間魔法で転送するだけだ。

 歩きながら出来てしまう。


 進んでいくと、途中でアイアンリザードに遭遇したのでサクッと刈った。

 もちろん指を軽く動かすだけの風魔法で瞬殺。

 この鰐の表皮は硬くて軽くて汚れないので、とてもに使いやすい。ハーフブーツに使っている。真皮は厚みがあり耐久性と耐打撃性に優れている。槍で刺しても剣で切ってもほぼ無傷。胸当てに使っている素材だ。

 リオノールは知らないが、これもかなり高級な素材だ。この素材で使った装備を持っていればそれだけで一流と見られるくらいには高級だ。

 しかし、リオノールもたいがい世間知らずなのでその事を知らない。

 今後、それが原因で諸々起こるのだが、それはまだ先の話。


 そうやって進んでいるとようやく森人の集落が見えて来た。

 集落といっても2世帯8人と少ない。

 森人とは元々ただ人だったという。

 植物に適性のある人が樹海に住みつき、代を重ねてより植物に特化した種族だ。


 ルシアーノが連絡をしていたのですんなりと迎えて貰った。

 集落の長であるアベルが

「ほほぉ。これがルシアーノの器か。良く出来ている」

 と笑う。

 この集落はアベル一家と副長のジルベール一家の合計8人。

 この日はアベルの家へ招かれた。


 森人の家は大木の上にある。

 いわゆるツリーハウスだ。

 壁は植物の蔦を絡ませて作られている。

 ここは寝るための家なので窓はない。

 屋根は蔦と葉を組み合わせて作っていて、一部は開閉式だ。

 防御結界があるので壊れたりしない。

 さらに木自体が結界を張っているので2重の結界になっている。


 彼らが樹海に住めるのはルシアーノのお陰だ。大深林に魔物を封じた時に、樹海に順応出来るよう彼らの先祖に魔術を施した。それが今の森人の由来である。彼らにとってルシアーノは恩人なのだ。

 だからいつも塔に向かって祈りを捧げる。

 聖人にとって祈りは力になる。

 そしてルシアーノがいつ来てもいいように部屋も整えられ、訪れれば歓迎される。


 今はルシアーノの器にリオノールが入っていることを彼らは知っているが、リオノールも彼らの進化を手伝っている。だから今回もとても歓迎されたのだった。


「だいぶ引きこもってらしたからな。心配していた」

 そうアベルが言う。

「まぁ元々人嫌いだからな。しかし今回は300年ほどか、長かったな」

「ここにも2度ほどお越しになっただけだ。だいぶ病んでいたのか?」

「主はまぁ塔が大好きだからな。病んでいた訳ではないのだが…」

 そう言ってリオノールは苦笑する。

「いっそ嫁でも探すか?」

「…」

 その言葉にリオノールは寂しそうに笑う。

「出会いがあれば別れがある。親しい人を主はたくさん見送って来た。もうあんな思いはさせたくない」


 長寿であること。

 それは人より長生きであることだ。

 そうしてたくさんの死別を経験した。どれだけ辛くともルシアーノの寿命はなかなか来ない。

 どれだけ悲しくとも生きているのだ。

 だから主は引きこもった。

 主と共に生きられる従魔だけを側において。


 ふと昔のことを思い出した。

 主の魔力が暴走して大深林ごと吹き飛ぶかと思えるような大惨事が起きた。

 あの時は体を張って暴走を止めたものの、リオノールは瀕死の重症を負った。

 それを見て泣きながら癒しの魔法で怪我を治し、抱きしめて来た主の姿は今も強烈な記憶として残っている。

 もうあんな顔は見たく無い。


 その記憶を追い出して

「新しい生活が始まれば主も楽しめるだろう。その為の準備だ」

 と言って嫁の話は終わらせた。

「そうか。まぁエリスリオノールがそう言うなら」

 そこで会話は終わって明日に備えて寝ることにした。

 明日はいよいよ街に出る。

 早めに出なくては辿り着けない。


 夕食をご馳走様になりツリーハウスのルシアーノ用に備えられた快適な部屋で早めに寝た。



なんだかんだでルシアーノが大切なエリスリオノールだった



※読んでくださる皆さんにお願い※


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