49.グランドマスター
ガブリエルはヘルフと探索者ギルドを出た。この街のギルドはしばらく閉鎖せねばならないな。臨時で窓口を開設して対応するか。
しかし聞いた話が本当であれば、とんでもないな。何人かは死んでいるという。
孫を振り返る。
「知っていたのか?」
「いえ、流石に他の組織の事までは…」
「まぁ、そうじゃな」
「人が死んでいるらしいの」
「えっ?」
「話をしておったわ。Dランクが続けて死んでいる、とな。リオは嘘は言わんじゃろ」
「でも怒っていたのでは?」
「いや、怒ってはおらんな。おかしいと言ってはいたが。もちろん、仲間のことは怒っておったな」
「そうですか…」
「リオにとってはDランクが死んでることなどどうでも良いのだろうな」
「…」
「面白い。あの力は…底が見えぬな。ヘルフ」
「はい、分かっております。敵に回すつもりは有りません」
「じゃな」
リオノールは猫を見ながら暇だなと思う。毎日これだと流石になぁ。昨日はやり過ぎたから今日はいいのだが、他の依頼も見ておけば良かったか。
まぁ、ひとまず今日はこれでいいだろう。
のんびりとその日の午後は猫観察に勤しんで終わった。
夜はやっと独寝だ!やほーいと思ったリオノールだったが、なんと主が自分の体に入った。俺は体から出てコウモリに戻ろうとしたら主に捕獲された。
「寂しいんだから一緒に寝るよ」
ぐっ、だから嫌だったんだ。主の体に同化しているから逃げられない。今日こそは独りで…と思ったのに。
はぁ…。
結局、ルシアーノの体の中で寄り添わされて寝た。
うぜぇ…。まぁシルバもミーシャも捕まってたからな、仕方ない。
目が覚めると主にしっかりとホールドされていた。俺の場合は同化してるから魂を抱きしめられているような感じだ。がんじがらめだぞ?
シルバのもふもふな腹に猫と寄り添って寝ているルシアーノ。ミーシャは主の首付に手で寄り添わされてる。
急に寂しくなったのか?まだ塔を出てから1週間ぐらいだぞ?
もうこのままルシアーノに体を返したらいい気がする。
「ダメだよ、エリー。ちゃんとノワールの面倒を見てやってな」
子育てが壊滅的に下手なルシアーノだ。まぁ仕方ないだろう。猫はルシアーノの存在を認識しているのか、その魔力を吸っている。無限だからな。
「でも楽しそうだし、しばらくは僕もここにいるよ」
そら主の体だしな、元々。
『分かったよ』
主は起き上がると伸びをしてシルバの腹を揉んでいる。俺は体を渡しているからただそこにいるだけだ。
『主、不便だからコウモリに戻る』
「もふもふがいい」
『雪うさぎ…』
「そうだね」
やっと主から抜け出て白い手にのるほどの小さなうさぎの姿になった。
『どうだ?』
「エリー、キュートだよ」
『うぜぇよ…』
姿が可愛くなってもエリーはエリーだった。
『ノアが起きたな』
「そうだね、朝ごはん作って…」
『うさぎはご飯を作れないだろ?』
丸い前脚を見る。
「遠隔操作していいよ」
全く。仕方ない。うさぎの姿で主の肩にのると主の体を動かす。
パンと卵、ウインナーにサラダとスープ。手抜きだ。パパッと作って机に並べる。
「リオ、おはよう」
「おはようノア。出来てる」
主が喋る。ノアが俺を見る。そして主を見る。首を傾げている。分かるのか?違いが。
「リオ、なのか…?」
「?そうだよ」
「そうか」
椅子に座って食べ始める。気になるのかチラチラとこちら(うさぎ)を見ているノア。
「どうした?」
「いや、なんかな…違和感が?」
主は驚いて
「くすっやっぱり、感覚が鋭いな!君は」
ノアが素早く椅子から立ち上がると後ろに退がる。
「誰、だ…?」
『やっぱりバレたぞ?』
「ダメか…エリーと僕ではやっぱり違う、よな。同じ姿なのに」
「その声…リオの主?」
「そうだよ、良く分かったね…リオ、エリーはここ」
肩を指す主。俺はその言葉を肯定するように前脚を上げる。そしてノアにも聞こえるように声を掛ける。
「俺がリオだな」
ノアが目を見開いて俺を見た。主を見て俺を見て困惑している。
そして
「リオに何をした?」
ノアが俺を素早く手の中に包むとそう聞く。
主が笑い出す。知らなければそういう発想になるのか?
「何もされてないぞ。元々その体は主のものだ」
「リオ、どういう事だ?」
「俺はそもそも人じゃないからな。主の代わりに人として過ごしていただけだ。金を稼いでランクを上げるために」
「?」
混乱してるか?それも仕方ない。
「僕はエリーの契約者でルシアーノ、エリーは聖獣だよ」
ノアはうさぎの俺を見る。前脚でノアの手をテシテシ。
「リオ?」
「そうだな、この姿も仮初だがな」
「聖獣、なのか?」
「そうだぞ?」
ノワールはストンと腑に落ちた。桁外れの能力。人に興味がないのも道理か。
「あの能力は?」
「ん?聖魔法か?あれは俺自身の能力だな」
「俺を治したのは命令されてか?」
硬い顔で聞くノア。
「ん?」
「ふふっ、僕は干渉してないよ。エリーが自分の判断で君を仲間にした。傷を治したのもエリーの能力だよ。僕ならもっと簡単だ」
「…」
「主の体に入っていると、自分の能力と主の持つ魔力は使える。ただ、主ほどの魔法は俺には使いこなせない。あの程度の魔法なら俺でも使えるぞ」
「僕なら見えない傷でも簡単に治せる。エリーにはそこまでの力はないからなぁ」
「そうだぞ。傷を認識して、その記憶まで辿らないときちんと治せないんだ」
そのことすらとんでもないのだが、彼らは知らない。
「そう、なのか…」
前脚をテシテシしている可愛いうさぎを見る。愛らしいその顔はまん丸な青い目と相まってとても魅力的だ。
目の前のリオ(ルシアーノ)はリオの顔だが、やっぱりリオではない。
うさぎのリオがリオだ、と認識出来た。そっとその柔らかい耳を撫でる。
目を細めるリオ。可愛い。頬ずりしたら前脚で顔を遠ざけられた。
「ウザイ…」
あぁやっぱりリオだ。なんだか安心してしまった。
雪うさぎは白くてまるんでもふん…
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