48.次の依頼
「この依頼とかどうだ?魔猫の捕獲と飼育日誌。猫とかダメかな?」
余りにも普通のリオの声がギルドに響いた。
「猫は魔猫なのか?」
「猫科だろ?」
「大丈夫じゃぞ?」
ん?振り向くとそこには金色の髭をはやしたじいさんがいた。
「じいさん誰だ?」
「ふっふっふっ、なかなかだな。お主」
何がだ?
「サーバルは魔猫じゃよ?で、何処で捕獲するんじゃ?」
俺はノアのシャツに手を突っ込むと猫をそっと取り出す。
「なんと!また珍しい」
「あぁ、保護色を持たない子だ」
「素晴らしいな…どうやって捕獲した」
「してない。勝手に懐かれた」
「何かをしたじゃろ?」
「魔鳥から守っただけだ。突かれてたからな」
「ケガはしとらんが?」
「血だらけだったからな、治した」
「…お主、聖魔法が使えるのか?」
「簡単なのはな」
ノワールは絶対に簡単じゃないと思った。背中の傷はまだ中が治りきらず、時々酷く痛んだのだ。それを体を洗いながらなんて事なく治していた。魔力が減った様子もなく、だ。
「ほう、そうかの。飼育日誌は必要だが、捕獲は達成でいいじゃろ」
「で、誰だ?俺はDランクのリオだ!」
「ガブリエルと申すぞ、リオよ」
「ガブリ…長いな。じいじでいいな!」
後ろでマロウが青ざめていることは知らないリオだった。
その時、ギルドの扉が開いた。
「お祖父様、こちらでしたか」
ヘルフだ。ん?ヘルフのじいちゃんか?
「ヘルフ、ここのギルドはなかなか楽しいのぉ。まあ、粛清は必要だがな」
「じいじはヘルフのじいちゃんか?偉いのか?」
「リオ、私のお祖父様で、探索者ギルドのグランドマスターだよ」
「へー?何だそれ」
ガクッとするじいじ。
「知らんのか?」
「探索者になってまだ数日だからな」
「それでギルド憲章を知っておるのか?」
「あの程度なら簡単に暗記出来るだろ?」
絶対に出来ない。厚さ3cmはあるのだ。
「愉快な子じゃな、ヘルフ」
「はい、素直ないい子です」
「だろうの。目が澄んでおる」
じいじはマロウを見ると
「分かっておるな?関係した者立たちは懲罰委員会にはかる。お前も厳しい沙汰が降るだろう」
「よろしく頼むぞ?ゴブリンの集落に裸に剥いて放り込んで欲しいからな!死なない程度でな」
「これはまた、厳しいのぉ」
「お祖父様、その話は後で…」
「そうじゃな、リオの気持ちは分かった。ではまたな」
「おう」
ノアを振り返り
「観察日誌を付けるぞ!」
そう言ってノアの手を引いてギルドを出た。シルバがずっと臭い臭いうるさいからな!
さて、観察日誌か。手に持ったまん丸なお腹の猫を見る。眉間を指で撫でるとノアのシャツに戻す。
ノアは俺の手を握って歩き出した。
当たり前みたいに路地に入って箱庭に移動する。
「良かったのか?痛かっただろ?」
ノアに聞く。
「あぁ、リオが治してくれたからな。いいんだ」
穏やかな顔で言う。ならいいかな。
「そうか」
ノアは俺をまた腕に抱える。
「リオは温かいな」
「ん?まだ子どもだからな」
ノワールは体温のことを言ったのではないが、敢えて何も言わなかった。
「観察日誌、楽しそうだな」
「文字の勉強にもなるしな」
スパルタなコウモリなのだった。
*****
ノワールは付き纏うような女性職員が怖かった。体を寄せてきたり、手を握ろうとしたら、体を触ろうとしたり。気持ち悪い。
人に近寄られるのも、ましてや体に触れられるのも苦手なのだ。
でも不思議とリオは嫌じゃない。男だからとかでも無いのだ。妙に体に触ろうとする男もいるし、何気なく肩を叩かれたりもする。それすら嫌なのだ。
人嫌いだと思ってた自分がリオだとなんとも思わない。むしろ、一緒に寝たいとすら思うのだから。
本当に不思議な子だな。それにリオも他人には容赦ない。それがなんだか共感出来てしまうのだ。
その可愛い見た目とは裏腹な能力と、容赦のなさ。しかし自分には意外と甘いのもなんだか嬉しい。
リオ、君のそばは居心地がいい。
そんな事を考えて腕に抱きしめる。小さなその体は温かくて柔らかい。
でも甘いだけでは無くスパルタだったりもする。猫の観察日誌…やらなければな。
文字の練習か…。
リオノールは観察日誌は文字の練習になるな、と思っていた。
ノアのシャツからまた猫を取り出す。シルバのポーチからも取り出す。ずっと寝てるな。
3匹は鼻を時々ひくつかせながらすやすや寝ている。
ゴロンと横になったシルバのお腹にそっと猫を置く。もぞもぞ動いて寝心地を整えている。
「ノア、日誌を書け」
「ん?何に?」
「紙にだろう?」
「持ってない…」
なるほどな。俺は手元でパパッと紙と鉛筆を作る。
それをノアに渡す。
「これに書くんだ。まずは日付、次に場所。で、何をしているか、だ」
そこから基本的な単語、猫、寝る、食べる、横になる、あくびをするなどを教える。
ノアは日付と場所を書いて、狼の腹で寝ると書いた。
まぁいいのか?
いっか、ただの観察日誌だ。
ノワールには少し甘いリオノールだった。
グランドマスターって何だ?偉くても弱いからなぁ…
相変わらず比較対象はルシアーノだった
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