45.女子に人気
お金の話もまとまって少しだけ休むことにした。
『シルバ、枕になってくれ』
『仕方ない』
木の根元で横倒しになるシルバ、その腹に頭を軽く乗せて目を瞑る。
ちなみに猫は一匹は俺の胸ポケット、二匹はシルバの首から下げたポーチに収まっている。
今は俺の腹に三匹まとまって寝ている。もふもふのふかふかだ。
主みたいにもふもふ好きではないが、腹が温かいのは悪くない。
目を瞑ったままノアに声をかける。
「計算ばかりで疲れただろ?少し横になって休めばいい」
「あぁ」
返事と共に近くにノアの気配を感じた。広いんだからもっと離れればいいのにな。俺の近くでは窮屈だろう。そんな事を考えながら少し寝ていたようだ。
目を覚ますと何故かまたノアの腕に包まれていた。寝相が悪いのか?まぁ別にいいか。
実際は無意識にリオに寄り添っているノワールだが、本人も分かっていない。
その頬をペチペチと叩く。目を覚ましたノワールは目の前にリオの大きな目があって慌てた。と同時に真っ赤になった。
ん?また熱でもあるのか。
リオノールはノアとおでこを合わせて確認。平熱だな。
「起きたか?お前、寝相が悪いのか?」
「いや、ごめん。無意識のようだ」
「?まぁいいけどな?」
蹴り飛ばすほど嫌でもないし。
腹の上の猫をシルバのポーチに戻してもう一匹はノアに渡す。
「えっ?」
思わず受け取ったノアに
「動くなよ?」
と声をかけてシャツのボタンを外し、内側にポケットを付けた。魔法でささっとな。そこにノアが持っている猫を入れてシャツのボタンを止める。
「よろしくな!」
ノアは慌てていたが、そっとシャツの上から猫を押さえて微笑んだ。力加減の練習だ。
さて、あと少し店を開けてからまた依頼を見に行くか。
「ノア戻るぞ」
自然と俺に手を差し出すからその手を握る。シルバは足元にミーシャは肩に。さぁ路地へ。
そこから市場に歩いて戻り、幕を開けた。店の再開だ。するとすぐに客が来た。
「ここじゃない?」
「王の石よ?本当にそんな値段で?」
「でも聞いたのよ!間違いないわ」
若い女性の3人組だ。ノアを見て一瞬足を止めだが、ノアは机から全く顔を上げない。勉強に集中している。俺を見て安心したのかおっかなびっくりではあるが店に入って来た。
「いらっしゃい!」
「あの、王の石のアクセサリーがあるって」
「あぁ、ここのアクセサリーは全部それが付いてる」
並べられたアクセサリーを見てキャアキャア言ってる。
地味にうるせーな。シルバが鼻の頭にシワを寄せている。匂いもな、独特の粉くささがある。
「このネックレス素敵よ」
「ねぇブレスレットも」
「指輪もいいわ…」
「「でもやっぱり高いんじゃ…」」
「銀貨9枚だ。小さな指輪は銀貨5枚表に石が付いてるのは7枚だ」
「「「安い!」」」
「サイズはブレスレット以外は自動で調整する」
その後もわいわいきゃいきゃいとうるさい。女って面倒だな。
そこにさらに黄色い歓声が響いた。
「「「キャー魔術塔の秘宝よ!」」」
なんだそれ?ってかうるせーよ。顔を顰めると同じく盛大に顔を顰めた双子がやって来た。
「おっ、ルイとライだったか。どうした?」
「アクセサリーが欲しくて来た」
「「「キャーお揃いよ、どうしましょう」」」
どうもしねーよ。さらにそれはお揃いって言わないだろ。
双子はさらにむすっとする。
「あーきれいなお姉様方。双子が見れないので先に選んで貰えるか?お前ら、時間かかるしこっちで休んでろ」
双子には棚のこちら側に呼ぶ。ワーキャー攻撃から守ってやらねば。客だからな。
「キャーきれいですって」
「いやん嬉しいわ!」
「うふふっ」
マジでうるせーな、社交辞令だよババア。
女性たちも同じ客であることをリオノールは意識していない。
散々迷った挙句、さらにはチラチラと双子を見ながら(途中から双子はシルバと遊んでいて背中を向けていた)やっと決めた。
ネックレスとブレスレットと指輪。みんな指輪だけ普通サイズとピンキーリングの中に石のある方と買っていた。
「ノア、1人いくらだ?」
予想していたのか
「銀貨32枚」
「おう、正解だ」
女性たちは小金貨4枚ずつ出す。ノアがそれぞれお釣りを銀貨8枚トレイに置く。
包んで布のリボンをかけて渡した。
「うわぁ可愛いリボン」
「白蜘蛛の糸から作った布だ」
「「「…!」」」
一様に固まった後に笑った。
?ま、いっか。
白蜘蛛の糸はとても貴重で別名蜘蛛絹とも呼ばれているのだが、ミーシャや子供達がたくさん作るからなんなら普通の糸より安上がりなのでその価値を全く理解していないリオノールたちだった。
肩の上でミーシャがドヤ顔してるぞ?
「お姉さんたちありがとうな!良かったら友達にも勧めてくれよ」
「そうね、可愛い子が売ってるって宣伝しとくわ。それに秘宝とお揃いよってね」
だからそれをお揃いって言わねーし、キモッ。
女性にも容赦のないリオノールだった。
やっと帰った。ノアもなんだか息を吐いたぞ。臭かったしな。
「おう、待たせたな。臭くてうるさいのは帰ったぞ」
「助かった。ああいうのがウザくて困る」
「悲報って何が悲しいんだ?」
「秘宝違いだ。秘めたる宝」
「自分で言うんだな」
「「違う!リオが勘違いしてるから」」
「そうか」
正直、悲報でも秘宝でもいいのだ。興味がない。
「それはどうでもいいが、アクセサリーを買いに来たのか?」
「王の石だな?しかも防御が付与」
「基本仕様だな」
何が基本か分からない双子だった。
「何がいい?」
「首に付けたい。長いチェーンがいいんだが」
見えなくしたいのか?出来なくはないな。
「胸の間くらいか?」
頷いたので、材料を取り出してチェーンを作る。
「長さの確認をしたい」
1人が進み出てきた。チェーンを首からかけて長さを確認する。頷くのでその長さで固定して2本作る。
ネックレストップをチェーンに固定して、チェーンにも防汚とか形態記憶などを付与しておいた。
長くなったので分割
白蜘蛛の糸から作った布リボン お値段金貨1枚…
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