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長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律


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43.時計の納品

 目が覚めると何故かノアに頭を抱きしめられていた。でも主みたいにギュウギュウではないから大丈夫だ。

 ほんと寂しいからって俺を抱いて寝るやめて欲しい。まぁ今日の夜からは1人で寝られるからな。


 みじろぎするとノアが目を覚ました。んっ…ボッーと俺を見ている。それから自分が俺を抱きしめているのに気が付いて顔が赤くなった。

「ノアおはよう、良く眠れたか?」

「おはよう、リオ。あぁ温かくて…」

 良かった。顔が赤いが熱は無いよな?おでこを付ける。大丈夫だ。


「今日は市場の前に商業ギルドに行って、それから市場に行くぞ」

 ノアは頷いて腕を解く。俺は軽く伸びをして起き上がった。

 着替えてから台所に行く。さて、やっぱりそろそろ米が食べたい。

 この米とは遠くの島国で栽培されている。主が気に入って塔で作っていて、箱庭にも植えてあるのだ。

 それを鍋で炊く。

 卵とベーコンを焼いて、後は魚だな。焼いていると香ばしい匂いがしてくる。

 同じく島国で作られている味噌でスープを作る。出汁という調味料を入れると風味が格段に上がる。


「ノア、出来たぞ!」

 ダイニングテーブルに並べているとノアがやって来た。

「いい匂いだ」

 だよな?正しい朝ごはんって感じだ。当たり前みたいにシルバがお座りをしている。シルバの分も、ミーシャの分ももちろんある。

 食べ始める。食事はただの娯楽だから味わえればいい。リオノールはだから少ししか食べない。

 シルバとミーシャはガツガツ食べている。ノアも良く食べる。

 体はしっかりしているが、やはりきちんと食べていなかったのだろう。痩せている。もう少し太ってもいいだろう。


「おかわりあるぞ?」

 嬉しそうに茶碗と皿を差し出す。シルバも鼻で皿を押す。みんなにおかわりを出して、食べ終えた所で片付ける。

 サーバルはクッションでまだまだ寝てる。

 食後の薬草茶だ。ノアはなんだか恐る恐る飲んでる。気にしなくていいのにな?


 ボチボチかな。

「ノア、行けるか?」

 頷くのでシルバ、ミーシャと共に箱庭を出た。まだ朝早い裏路地は人がいない。そこを出て商業ギルドに向かう。

 入っていくとザワッとした。視線はノアだ。こちらのギルドでは確かに違和感しかないな。

 窓口で名前を告げ、ソマリを呼んで貰う。

 すぐに奥からソマリが出て来た。

「おはよう、リオ」

「おう、納品に来た」

「おぉ、早かったな。では奥に」


 ノアを見て

「一緒でいいか?仲間なんだ」

「構わない」

 ソマリはノアを見て、頷いた。違和感しかないと分かったのだろう。ノアもだ。大人しく着いてくる。

 会議室に入る。

「もう一人呼ぶからな」

 査定?とかするんだろうな。

 少ししてソマリと隣にはおじいちゃんがいた。


「彼がリオノールだよ、ゼナン」

「リオ、彼はゼナン。鑑定や査定の専門官だ」

「よろしくな!」

「ほっほ。よろしくの、リオノール」

「出してくれるか?」

 ソマリは灰色のトレーを出して言う。俺はそこに腕時計と懐中時計を各10出した。

 腕時計はベルトの色がたくさんある。注文じゃないからな。選べるように。


 ゼナンの爺さんは感心して見ると腕時計を一つ、手袋をした手にとって眺め始めた。

「それはまた素晴らしいな。駆動がアイアンリザードの歯とは…」

 分かるのか?苦労したんだ。

「いや、長生きはするもんだな。本当に素晴らしい。これが金貨15枚とはなぁ。ワシも一つずつ買うぞ」

「ゼナンが見てもやはり一級品か。私も腕時計を買うぞ」

「品物はこれでいいか?」

「もちろんだ。金貨260枚だが、渡すか?口座に入れるか?」

「口座に頼む」

 ソマリは頷いて、またよろしくなと言って皆で会議室を出た。


 そして次は市場だ。昨日の魔術師が紫のベルトの時計と剣帯が欲しいって言ってたからな。作った。なんか凶々しいかと思って作ってない色だったからな。

 後はブランが剣を2本受け取りだな。うん、売り上げは確定してるからな。ボウズではないので良かった。


 まだ9時だからこの辺りは静かだ。ノアはまた椅子に座って算数の勉強だ。地頭は悪くないのだろう。教えたことはドンドン覚えていく。

 子育てではもちろん、言葉や計算、一般常識を教えていくのだ。

 人や聖獣、魔獣につても、もちろん樹海や大深林についてもだ。

 だからリオノールは慣れている。たくさんの聖獣たちを育てたからな。


 育てた聖獣たちからはエリ母さん(なぜかお父さんではない)と呼ばれていることをリオノールは知らない。


 そこにブランがやって来た。

「やぁリオ、剣は出来てるかな?」

「ブランおはよう、出来てるぞ」

 俺はカバンから剣を二振り出した。ブランは受け取ると刀身を眺める。

「素晴らしいな…これで一つ金貨10枚とはな」

 そう言うとお金を出して帰っていった。

「また来るよ!」

 と言って。


 何しに来るんだ?

 お店なんだから何かを買いにくるな決まっているが、リオノールは分からなかった。


 次はラウロアだ。紫の革で作った時計と剣帯だ。物理は弱そうだから、魔法が使えない状況でも防御が働くようにした。

「うむ、やはり素晴らしい付与だな。物理防御のみならず、魔法防御まで」

「何があるかわからないからな」

「いくらだったか?」

「金貨15枚と小金貨10枚だ」

「本当に呆れるほど安いのぉ」

 と言いながらお金をピッタリ払って帰っていった。


 ここまでは予定通りだな。




和食な朝食も作れるリオノールでした…



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