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長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律
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4.エリスリオノール

 俺の名はエリスリオノール。

 聖獣の白コウモリだ。

 俺はルシアーノという主に仕えている。

 この主は聖人だ。

 聖人とは神に認められた人が昇華した、人の最高峰である。

 あらゆる学問や魔術に精通し、聖獣を従える神の眷属でもある。


 そして世界の均衡を保つために俗世から隔絶して世界を俯瞰する存在だ。

 この世界が再生した頃は様々な課題があり、主も奔走していた。

 その中で従魔も増え、凶悪な魔物は大深林に集めてやっと落ち着いた。

 それまでおよそ100年。


 やる気に満ち溢れたり引きこもったりを繰り返し、そろそろ本気でヤバいかと思った所で塔を出る!宣言だった。

 まだルシアーノが小さい頃から側にいるエリスリオノールは安堵した。

 また主の無邪気な顔が見られると思ったからだ。

 面倒だと思いつつもお供に選ばれて、少しだけ?嬉しかったのは内緒だぞ。


 俗世から隔絶だろ、俯瞰するんだろ?って思ったよな?

 今は正直言ってこの世界も安定してるからな。

 そこまで厳格にしなくってもいいんだ。

 苦労して大深林に魔獣を集めたお陰で、大きな混乱もない。だからこそ、暇だと憂いてる訳だ。

 なんなら神様も少し楽しんで来たら?とか言うくらいだしな。


 ルシアーノが人間を作る、というのは本当に人を作るということではない。

 自分の体を魔術で作り替えるだけだ。

 年や見た目も変えられる。

 変えてもルシアーノであるのだが、面倒くさがりだから意識を塔に置いて、身体に俺を宿すことで楽をしようというのだ。


 意識体は半透明の状態で、体から意識を分離している。体が無事なら意識だけを切り離して生活が出来るのだ。体に意識を戻せば自分の意思で動かせる。

 さらに遠隔でも自分の体が操作が出来る。

 暇だと嘆くなら自分で外に出ればいいものを、面倒だからと迷宮に潜るまでは塔にいるつもりなのだ。


 後から自分に何が起きたか見ることも出来るから、それを楽しみにしているのもあるのだろう。

 意識を繋げれば、そのまま体感も出来る。いつだって体に戻れるのだから、自由自在だ。


 意識は繋がっているが体の操作は俺がする。

 コウモリの体は器である体に一体化させておく。

 これで俺は俺の意志でルシアーノの体を使えるのだ。

 こうしてルシアーノの体に一体化して、俺は大深林を出発したのだった。


 12才のルシアーノになったエリスリオノールことリオノールは(ややこしい)いよいよ塔を旅立つ。

 5階建ての塔のバルコニーから意識体のルシアーノが手を振る。

 意識体を切り離すのは実はかなり高度な魔法で、聖人であるルシアーノにしか出来ない小技だったりする。


 塔の周りは青々とした芝生と薬草が植っている。

 薬草はルシアーノが植えたもので、精霊の雫や悪魔の涙という希少なものもたくさんある。

 薬師が見たら卒倒するくらいには希少で貴重だ。

 それが塔の周りには雑草の如く植っている。


 時々ルシアーノの従魔がその上を駆け回っていたりして盛大に散らばったりするのだ。

 それを見たら薬師は別の意味でも卒倒しそうだ。

 蘇生薬にもなる薬草なのだから。

 それでも息を吹きかけるだけで蘇生出来るルシアーノにとっては雑草扱いなのだが。


 ここの芝生も魔草で魔力を放出する。塔の周囲はまぁまぁ魔力素の濃い場所になっている(まぁまぁの使い方あってるよな?)

 魔力素が濃いと薬草の効能が上がる。ただ、普通の人には濃すぎて息苦しく感じる程だろう。

 過ぎたるは及ばざるが如し…。


 その中に建つ塔はゴツゴツとした表面の石で出来ている。

 この石はルシアーノが魔力を込めて作ったもので、あらゆる外力を弾くことが出来る。

 塔の周辺まで緑の結界に覆われていて、魔物など敵対するものは入れない安住の地だ。


 結界を一歩出るとそこは別世界。

 大深林の濃厚な魔力素とその魔力で凶暴化した魔物が住んでいる。

 死にかけた世界を再生するために、人に被害を出す魔物をルシアーノが大深林に集めた。

 ただでさえ凶暴な魔物が濃厚な魔力素でさらに凶悪となり、人から不可侵の森と呼ばれるまでになったのだ。


 しかしどんな環境でも生活する人はいる。

 たくさんの犠牲と様々な教訓、魔物の性質を理解してこの不可侵の森に住む種族がいるのだ。

 その名は森人。極限まで植物に同化することで大森林に根付いた唯一の種族だ。


 ルシアーノが選んだアッシュグレーは彼ら森人の色だ。アッシュグレーの虹彩の縁に青が入るのは純血の証明。強すぎる力も世間知らずなのも、森人であれば許容されるという思惑だ。

 実際に森人は森からほとんど出ることがなく、世間知らずだ。

 目立たないというだけで適当に選んだ色なわけではない。

 多分、きっと…だよな?


 リオノールは結界を出て普通に歩いていく。

 近くには黒熊の親子がいるがリオノールを見もしない。これはコウモリの同一化を使い、背景に溶け込んでいるからだ。

 そうやって悠々と大森林を進んでゆく。


 途中で見つけた黒猪を刈ったり果樹を取ったり、この辺りでは雑草並に生えている貴重なキノコを取ったりして久しぶりの外を楽しんだリオノールだった。


 昔は魔獣を押し込めるために、主と奔走したものだがな、最近は引きこもった主と一緒に塔から出なかったから。久しぶりなので楽しい。

 

 夜になったのでルシアーノの箱庭に入る。

 箱庭とは空間魔法で別次元に作ったルシアーノの固有空間だ。

 かなり広い箱庭で家と畑、田んぼに畑に森。

 川もある。

 家は落ち着いた木で作られている暖かな雰囲気の安らげる場所だ。

 畑には野菜がたわわに実り、田んぼには稲が実り穏やかで暖かい空間になっている。

 なんなら卵を産む鳥や乳牛までいる。

 そのまま何年も暮らせるぐらいに充実した空間なのだ。


 もっとも普通は作ることも難しい上に、維持するのにも膨大な魔力が必要な空間魔法など簡単には使えない。

 そこは聖人であるルシアーノだからこそ、出来ることだ。


 ルシアーノの従魔であるリオノールは箱庭に入ることが出来る。食材も豊富でトイレも清潔。お風呂にも入れて柔らかなベットもある。

 大深林の中とは思えない快適さに思わずにんまりするリオノールだった。




実は長い付き合いだった主とリオノール

ようやく旅立てる



※読んでくださる皆さんにお願い※


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