39.討伐の成果
お昼に投稿忘れました…
こんな圧倒的な強さを見せられても、全く怖くなかった。だってリオはリオだ。
改めてその小さな体を見る。一見すると頼りなげな小さく細い体だ。魅力的な大きな目の、まだ子供でしかない。なのに、その力は圧倒的だ。
従魔もとんでもなく強い。やはり聖獣たちの強さは伝説級だ。それに俺が助かったあれは…きっと。
「リオ、さっき猪に突進されて…」
「あぁ、防御が働いたな」
「防御?」
「シールドだ。ノアだけを守るように、な」
「いつの間に?」
「ん?はじめから付いてるぞ。時計にも短剣にも、もちろん剣にも。物理の防御は時計と、後は渡したイヤーカフとハングルにもな。何重も突破される事もあるだろうし」
そんなに?絶対ケガはしないのか?
「もちろん、かすり傷も負わせないつもりだ」
「…」
リオノールにとって、仲間とはそれだけ大切な存在なのだ。シルバもミーシャももちろん主も。
誰かが傷付けば主が悲しむ。結局はルシアーノの為だったりする。
聖獣にとっての契約者とはそういう存在なのだ。
「リオ、ありがとう。あの時、リオが動かなかったのはそのシールドがあると分かっていたから?」
「それもあるが、もしシールドを突破されたら俺がヤレばいいしな」
ルシアーノの体だから指ぱっちんでいけるのだ。
「もう大丈夫か?もう少し休んだ方がいいか?」
「下に降りたい」
木の上だったな。ノアを抱えて飛び降りる。ノアはしっかり俺に掴まっていた。
「ここで少し休むか」
ノアは首肯いた。
『シルバ、抱き枕になってくれ』
てけてけと歩いて来るとそばにゴロンと横たわる。そのシルバにくっつく。ふかふかのほかほかだな。すると遠慮がちに後ろから腰に手が回される。ノアか、思ったより疲れたんだな。
そのノアの手に手を重ねて目を瞑った。
ノワールは疲れていたというよりは、怖かったのだ。あんな猪の群れなら、出会えば間違いなく命がない。生きていることを噛み締めながら、でもあの時の恐怖はなかなか消えない。
横になったリオに思わず手を伸ばし腕に抱える。自分の手に触れる小さなリオの手に安心して目を瞑った。
風が緩やかに吹き抜けていった。少し前に猪とオークの群れが大量に討伐された痕跡も無く、ただそこには穏やか山の姿があった。
目を覚ます。まだ日は高いからそんなに寝てはいないか?ゆっくり振り向くとノアは目を瞑っている。
そのおでこにおでこを合わせる。
リオノールの能力だ。ノアの体の状態などが超音波によるスキャニングで分かる。
ん?体も疲れているが、なんだか気持ちのほうかな。それは…恐怖、か。
聖獣たちは死ぬことに対する恐怖はない。もちろんリオノールもだ。あるのは死ぬ恐怖では無く、主を置いていってしまう恐怖。主の寿命を考えれば先に死ぬのは致し方ないが、なるべく長く生きていたい。
そう思う程度には長く主のそばにいたのだ。
だからノアの死に対する恐怖を理解はできないが、怖いと思う気持ちは分かる。
ミーシャが
『人は弱いからな…我らが楽勝でもこやつには死ぬかもしれないくらいの恐怖だったのかもしれないな』
起き上がったシルバも
『我らもはしゃぎ過ぎたようだ。悪いことをした』
『俺もおかわりだって喜んでたしな…』
ノアの頭を抱きしめてまた目を瞑る。シルバはノアの背中に寄り添って、ミーシャはその首元に座った。
もう少し、ノアが落ち着くのを待つか。
ノアは少し前に目を覚ましていた。リオの動く気配がして目を瞑る。おでこにリオの小さなおでこが触れる。そのまましばらくして離れる。そして頭をリオの胸に抱かれた。
驚いたがもちろん嫌ではない。さらに背中にまふまふな温かいものが触れる。首元にはほわほわなものが。
怖い思いをしたが、今はとても幸せだなと思ったノワールだった。
ノアは眠ったようだ。人とはなんと脆弱なんだろうな。主も元は人だったが、例の事件がキッカケで聖人となった。はじめはそう言えばまだ幼くて、体も弱くて魔術師としても未熟だったなぁ。
あの頃の主を思い出しながら、ノアと依頼をこなさなくてはならないだろう。
反省した。ただ、自分のランクではまだ討伐はほとんどない。あってもごく弱い魔物ばかりだ。それでは準備運動にすらならない。
しかしランクは上げなくてはならない。面倒だな…。
といってもあまりにも運動不足になるようなら、依頼は関係なく狩にいかなくてはな。
本当は依頼に絡めたら一石二鳥だが、ノアの様子を見る限りはほどほどにしておこう。
その作り物みたいな顔を見る。これからはノアの意見を採用しようと思ったリオノールだった。
しばらくするとノアが目を覚ます。何度か瞬きをして顔を上げた。そしてなぜか顔を赤らめた。
背中のもふもふが嬉しいのか?
「大丈夫か?悪かったな。怖い思いをさせたようで」
「いや、不甲斐ない」
「これからはノアの意見に従うからな」
ノアは照れくさそうに(多分?)笑うと
「頼む」
もう大丈夫そうか?
「動けるか?」
頷いたので、体を起こして伸びをする。ノアの背後でシルバも盛大に体を伸ばしていた。ミーシャはなぜかノアの肩に止まった。と思ったら子蜘蛛の方だ。ミーシャは俺の肩に止まり
「子どもを1匹そばにおいた」
それがいいか。何かあればすぐに分かる。
「シルバ、乗せてくれ」
大きいままだったから軽く伏せてくれる。何となくその目線はノアを気遣っている。やり過ぎた自覚は各々あるのだろう。
行きと同じくシルバに跨って、ノアはまた俺の腰に抱きついて颯爽と走るシルバの背中でのんびりと流れる風景を見ていた。
歩けば半日かかる距離も、シルバならものの30分だ。それでも気持ちゆっくり走ったらしく、行きよりは時間がかかった。
街の近くの森でシルバから降りる。いつものサイズに戻ったシルバと共に門に向かった。
時間は午後4時か、いい頃合いだな。なんとはなしにノアの手を握って門に辿り着いた。
シルバもミーシャも基本いい奴です…
やり過ぎなだけで
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