37.パーティーでの初依頼
猪の群れ討伐。カルア山だ。半日程度の距離なら俺の探索が使えるな。
ギルドを出て一番近い門から外に出た。
リオノールの探索範囲はこの大陸全土に及ぶのだが、本コウモリは良く分かっていないのだった。
猪の群れ…方角的にこの辺か?あ、いるな。ザッと50か少ないな。俺でも余裕だ。
猪の群れが50にもなればAランクパーティーでも苦労するのだが、もちろん聖獣たちは知らない。樹海で群れるとなると単位がだいたい千からだから。50なんて一桁と誤差としか思っていない。
「シルバ、頼むぞ」
『任せろ』
1.5mほどのシルバが大きくなって3mになった。最大化したら5mあるのでちと小さめ。それでもかなり大きいので2人でも余裕だ。
なんならリオノールはコウモリの能力も持っているので飛べるのだが、ここは楽をしてシルバに跨る。
ノアは唖然としているから、手を差し出して
「ノア、早く乗れ!シルバが待ってる」
ノアは俺の手を掴んでシルバに乗る。
当たり前だがちゃんと風を防いで走るから風圧で落とされたりはしない。
俺は首元の毛を掴む。ノアは所在無さげに手をウロウロさせてたので
「毛をしっかり掴むか俺に掴まれ」
少し逡巡したが、結局、俺に捕まった。
シルバが風をきって走る。早い。人の視力なら風景はブレて見えないが、もちろんリオノールには見えている。
運動不足なのか、はしゃいでるな。シルバは街道を走る馬車や歩く旅人のじゃまにならないよう近くの森の中を走っている。
遊んでるな…。まぁ早く着くならいいだろう。走ると言っても魔法で体を浮かせてるから振動はない。快適だ。
振り向くとノアが固まっていた。大丈夫か?
「ノア?」
「…」
気絶してるな。ま、いっか。早く着けばいいのだから。
リオノールは肩のミーシャと念話をしながらのんびりとしていた。
『なぁ、ノワールって素直だよな?』
『素直というか、無垢というか』
『むっ、難しい単語を知ってるな。純粋ってことか?』
『そうだな、エリーに対してはな』
『ん?俺だけか?』
『あぁ、散々な対応をされて来たのだろう。ただお前には素直だな』
『騙されないように注意しないとな』
『…』
ミーシャは相変わらず世話好きだな、と思った。
ちなみにサーバルたちは箱庭でお昼寝中だ。リオノールが用意したふかふかのクッションの中ですやすやと。
やがてシルバのスピードが落ち、山の麓で止まった。近くに集落があるらしい。誰かに声をかける必要はないらしく、猪の群れを殺るだけだ。
『エリー?』
『山の中に少し入る』
『分かった』
シルバは気配察知は得意ではないのだ。もちろん、人よりはるかに優れているが、エリーがいるので手抜きだ。
山に少し入るとシルバにも気配を感じられた。
「ノア、どうする?折角だし剣をそこらの木で試し斬りしてから分担するか?」
気絶から復活したノアが
「そうだな、頼む」
「始めは軽くな」
シルバから降りたノアは頷くと手近な木に軽く剣を振りおろす。
シュパッ…メリメリメリ、ドゴン
「…は?」
「杉は柔らかいからなぁ」
そういう問題ではないのだが、聖獣たちは頷いている。
「軽く振っただけで…」
色々付けたからな、余計だろう。
「お前の実力だ、凄いな!」
ノワールは絶対違うと思ったが、褒めてもらえて嬉しかったのでそのままにした。
「なら行くか。50ぐらいの群れだ。半分にするか?」
絶対無理なのだが、やっぱり聖獣たちは瞬殺出来るので色々バグってるのだ。
「はっ?いや、普通のBランクパーティーなら下手したら全滅コースだ」
ん?そんな事あるのか…。ミーシャを見る。
『人は弱いからな』
なるほど。
「リオ、今からでも退こう」
ノアが真剣に言う。
「大丈夫だ、シルバもミーシャも強い。何匹いける?」
ノワールはリオが心配なのだが、本コウモリは余裕なので全く通じていない。
「5かな」
かなり無理をして、という言葉を飲み込んだノワールだった。
「おし、じゃあ残りはこっちな。シルバに分断させるからこちらは気にせず暴れてくれ」
ノワールは何としても早くカタをつけてリオを助けようと思ったのだった。
「来るぞ!」
匂いを嗅ぎつけて群れが突っ込んできた。シルバが5匹を残して分断した本体に前脚を振り上げる。そこから風の刃が飛んで3匹が倒れる。その勢いでガンガンと倒していく。
ミーシャも1mまで巨大化してドンドン倒す。さて、俺も少しはやるかな。
氷魔法で先頭の猪を凍らせてその後ろから来たのは首の後ろに氷の矢で一突きだ。
ものの数分でノアの5匹以外の48匹を倒した。ノアを見ると3匹倒した所で正面から突撃されていた。
あ…油断した。剣の切れ味が良かったから少し調子に乗っていたようだ。後ろから来た猪はもう目の前だ。
もう避けられない。ノワールは覚悟を決めた。そして当たったと思われた瞬間、何かに包まれた。そして
バチバチッ、ドゴン、ズンズドン…
えっ、何が?
自分の体を見る。怪我をしていない。そもそも当たられてない?自分の周りの幕のようならものを見る。
これはまさか、結界なのか?
神官や聖女にだけ出来るというあの…?
しばらくするとその多分、結界は消えた。
ノワールはただ呆然としていた。
目の前には大きな猪2匹が煙を体からだして倒れていたのだ。
時計の防御機能を強化して、と
短剣や剣にも防御を付けとくぞ?
絶対けがしないようにな…
過剰防御によりノワールは無事だった
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