35.まだまだ売るぞ
「じゃあな、急に来て泣いたりして申し訳ない」
「あぁ、周りの迷惑も考えろ」
コウモリの俺でも分かるぞ?あれは傍迷惑だ。容赦のないリオノールだった。
「あぁ、申し訳ない」
そこに新しい客が来た。探索者か?強面でとにかくデカい。身長は2mはあるか?横もガッシリしている。片目が傷で塞がれているが、その目は力強い。
その男を見てノワールはその目を細めたが、リオノールはでけーと思っただけだった。シルバが巨大化すると5mくらいになるからそれに比べたら驚くほどでもないのだ。ミーシャだっていつもは綿みたいだが、巨大化したら3mはあるのだ。
ちなみにリオノールは最大でも1mにしかならないので、大きさに憧れがあったりする。
イメルたちはその大きな客と入れ違いで帰っていった。
「いらっしゃい!」
「ここに変わったアクセサリーがあると聞いた」
「何が変わってるか分からないがあるぞ」
男はアクセサリーを見ている。ネックレスを指して
「俺が付けられるように出来るか?」
「出来る。鎖を長くするか、チョーカータイプにするか選べる」
「チョーカー?」
分からないか…確か試作品があったはず。カバンから試作品を取り出す。
「こんな感じだな」
男はマジマジと見る。
「こんな感じでサイズを大きく出来るか?」
「ん?自動で調整するから必要ない」
「はっ?自動で?」
「そうだぞ?便利だからな」
「…」
「着けてみるか?」
男は頷くと首に回して着ける。すぐに短剣の刃にその姿を映してやる。
「見えるか?」
そもそも短剣の刃に姿が映せることが有り得ないのだが、もちろんリオノールは知らない。
「こ、これはまた凄いな!」
男はチョーカーの自動調整と短剣の刃に姿が映ることを指して言ったがリオノールは分からなかった。
「だろ?似合うぞ!ワイルド感増し増しだ」
「そ、そうか…」
なぜか男は顔を赤らめた。
そんなに嬉しいのかなと思ったリオノールだった。
絶対にリオはズレたこと考えてるよなと思ったノワールだった。
正解だ。
男はチョーカーを外すと
「これが欲しい」
「おう、今用意するからな」
リオは材料を出すとサクサクと作った。
顔の傷をゆっくり治すような治癒を込めるか。物理は強そうだが防御は後回しにしてそうだからな、増しとくか。後は…男を見る。魔力が全然だな。対魔法防御と魔法反射も必須だな。
後は毒か、ケガも多そうだしな。その辺も網羅して…こんなもんか。
リオノールが付けた付与はどれも魔術師に頼めば一つで金貨1枚はするような付与なのだが、もちろん本コウモリは知らない。
リオノールは片手間で出来る程度なのだ。
それこそ蘇生まで可能な治癒魔法を付与したら、流石に大変だが…そこはコウモリといえども聖獣なのだ。
魔法が苦手なシルバですら付与出来るて程度だと思っている。
ちなみにリオノールが魔法は苦手と思っているシルバも魔術塔の老師よりも遥かに使える。
リオノールの基準はいつだって主なのだ。
「このブレスレットか?これも欲しいぞ…こっちも青い石がきれいだ」
「おっ、それもか?いいだろ?ラピスラズリだ」
「はっ、ラピスラズリ…王の石か!待て、いくらだ?」
慌て出した。リオノールは首を傾げて
「銀貨9枚だ。チョーカーもバルグルもな」
「金貨9枚?」
「銀貨9枚だ。金貨な訳ないだろ」
「…」
小指の爪の先ほどで小金貨1枚はするラピスラズリ。色々と盛大にバグっているがそもそもルシアーノがキレ気味に欠片として出して来た程度の石だとしか思っていない。
「ならこれも欲しい」
「お、ありがとな」
「短剣を見てもいいか?」
「いいぞ?剣帯は付きで小金貨15枚、ベルトも付けたら18枚だな。剣帯の色は選べるぞ!」
男は探検を色々な角度から眺める。
「それもまた素晴らしいな」
「刃こぼれ防止なんかの基本仕様は付いてる」
何が基本なんだ?と男は思ったが何も言わなかった。
「ベルトのセットで革は…どの色がいいか。やっぱり黒かな」
「赤にしとくな」
男の希望は全無視で応えるリオノール。絶対赤が似合うと思ったからだ。
だってな?ミーシャが赤だな!ってドヤ顔で言うから。俺は余り色とか分からないからな、そういう時のミーシャは頼りになる。だから赤が似合う。
男は戸惑った顔をしてノワールを見た。なぜか頷かれた。まぁいいか?
渡された剣を剣帯ごと付ける。ベルトはポーチを掛けるために斜めに、と思ったら待ったをかけられた。
「腰につけた方が常動きを阻害しない」
男の腰に付ける。
「どうだ?」
「ああ、いいな」
ドヤ顔だ!
ノアを見て
「合計はいくらだ?」
予想していたノワールは手元で計算していた。
「小金貨19枚銀貨6枚」
思わずチラッとリオを見上げる。リオは相変わらずの無表情ながら口元を僅かに緩めて頭を撫でてくれる。
「その調子だ!良く出来たな」
男が金貨2枚を払ったので銀貨4枚を返した。
「ありがとな!」
「いい買い物が出来たぞ。俺はガイルだ」
「リオだ!」
手を挙げて男は出て行った。
「鉄のガイル…」
「何て?」
「あの男だ、鉄のガイルと呼ばれている」
へー固いのかな?なんて思ったリオノールだった。
ノワールはガイルの後ろ姿を見送った。
「ノア、少し早いが昼ご飯食べに行くぞ!」
俺は幕を下ろしてノアと歩き始めた。
色々と無自覚チートなリオノールでした…
本コウモリは基本、人に興味がありません
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