33.市場2日目
目が覚めたらなんか温い。んっ…目を開けると白い腕が見えた。ん?
振り返ると近くにノアの顔があった。寝てるのか?
昨日は床で寝た筈だが…ノアが見かねてベットに運んだか。んで自分が床で寝たら俺が怒るから一緒に寝たんだろうな。
律儀な奴だ。どうせ作り物みたいな体だし、なんなら主のだし。疲れることなんてないから平気なのにな。
俺は首元の猫たちを撫でてそのまん丸なお腹に顔を埋める。
主が拾ってきた動物を何度も育てたからな…子育ては得意だ。耳の横をかいてやるとだんだんと耳が下がっていきやがて潰れた。気持ちいいんだな。
順番に撫でていると白い腕が動いて、細くて長い指が猫の腹を撫でた。
「ノア、おはよう。良く眠れたか?」
振り返りながら聞くと
「リオ、おはよう。あぁ熟睡出来た」
白い頬が赤い。体も温まったようだな、それなら良かった。
「運んでくれたんだな。狭くなかったか?」
「くっついていたから大丈夫だ。リオこそ窮屈ではなかったか?」
「いや、大丈夫だ」
主に問答無用で抱きしめられて寝るよりは快適だ。時々寂しいのか呼び出して首元に抱き寄せて寝ようとする。大抵は逃げるんだがたまーに捕まって餌食になるんだ。それに比べれば天国だな。
主はもふもふ好きならシルバでも抱いて寝ればいいのに、わざわざ俺を呼ぶから面倒だ。
ノアはすりすりとかしないから楽だぞ。まあ今日からは箱庭だから広々だけどな!
俺は起き上がって猫をノアに預けると食事を取りに行った。
魔法で浮かせて部屋に戻り食べ始める。なかなか美味しいよな。シルバもミーシャも寄ってきた。一緒に食べてから支度をする。荷物はないから問題ない。
「ノアも荷物ないのな」
「俺も小さいが空間拡張カバンを持っていてな」
それでか。どおりで身軽な訳だ。
宿の女将に声を掛ける。
「もう行くのかい?」
「あぁ、世話になった」
「また来いよ」
宿の主人も出てきた。
「機会があればな、食事美味しかったぞ」
おう、と答えて見送ってくれた。
市場まではそんなに遠くない。ノアと並んで歩いて行く。横にはシルバが寄り添い、肩にはミーシャ。猫は懐の中だ。もぞもぞしていて少しくすぐったい。
市場に入って自分の場所に座る。椅子は1つだからノアの分は土魔法で作る。
「そこに座って勉強な」
大人しくノアは椅子に座る。まずは文字の読みかな。書くのは後でいい。その次が計算だ。
俺は文字の一覧を作ったのでそれを見ながらまずは文字を覚えるように言う。
ノアは素直に頷いて一覧を見ていた。
市場に着いたのは9時だ。店を開ける時間にはまだ早いから幕を降ろしたまま品物を並べ終わるとノアの勉強を見る。
いくつかの単語は知っていたからか、文字の一覧はすぐに覚えたようだ。後は良く使う単語を教える。
剣、依頼、報酬、期限、名前、等級、値段
あとは食べ物についてだ。串焼き、スープ、パン
単位もだな。本、個、冊
そしてお金の単位もだ。これが何気に1番大切だが、計算が出来ないとダメなんだよな。でも単位は知らないと困るからな。
その辺りまで教えた所で10時になったから店を開ける。すぐにヘルフが来た。
「リオ、おはよう」
「ヘルフ、おはよう。剣は出来てるぞ」
「そうか、楽しみにしてたんだ」
そう言って俺が渡した剣を見て引き抜く。真剣な目で見ると、ふわっと笑って
「流石だな」
そうでもないけどな?
「大切にする」
「おう」
ヘルフは勉強しているノアを見て
「まさか黒の剣士がパーティーを組むとはな」
「何故だ?」
「孤高の存在だと認識されている」
「どんな扱いを受けてたか知っててか?」
俺が聞くとヘルフはん?という顔をした。本当に知らないのか。
「知らないのか?」
「とても強くていつも独りだということくらいしか」
「色々と無理な依頼を押し付けられてたらしいぞ」
ヘルフは驚いて
「そうなのか?」
真剣に聞いてくる。俺が頷くと
「ギルマスに確認する」
と言って去って行った。
「彼は街を取り締まる衛兵のトップだな」
「らしいな」
「リオは本当に不思議な奴だな」
まあな、そもそも人じゃないし。
「勉強は続けろよ?」
頷いて勉強を再開する。なんていうか素直なんだよな、疑うとかしないんだろうか?
リオノールはノワールがとても疑い深く慎重な事を知らない。
少ししたらブランがやって来た。ノアを見て驚いていたが
「やぁ、リオ。時計を受け取りに来たよ」
「おう、ブラン。出来てるぞ?これだ」
箱に入った時計を見せる。白い革の腕時計だ。
「やはり素晴らしいな…」
そう言って金を払ったので、付与の確認をして箱を閉じ布リボンを巻いて渡した。ブランはリボンを見て嬉しそうに笑った。
「弟へのプレゼントなんだ、嬉しいよ。ところで、何故黒の騎士がここにいる?」
「ん?昨日客として来たんだ。その後に依頼でまた会ってな。で、俺なんかとパーティーを組んでくれたんだ!」
と言えば
「パーティーなのか、それはまた。リオは探索者なのか?」
「そっちが本業なんだがな、金も無いし稼がなくてはいけなくて…」
ミスリルの剣とかアイアンリザードの革を持ってるのにお金が無いって何でだ?と思ったブランとノワールだった。
実際には昨日の魔獣の買取でそこそこ金持ちになったのだが。
「そうか…まぁ頑張れよ!私はこの街に派遣されてる国軍の兵士なんだ。ちなみに彼は何を買ったんだ?」
「ん?短剣と剣と時計だな」
パーティーの仲間だからと追加でバングルと収納付きのカフも渡してあるが。
言語理解はまず読めること
※読んでくださる皆さんにお願い※
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