32.ポーチは便利
ノアが部屋に戻って来た。さて、明日からの活動について話をしよう。
迷宮を目指さなくてはな。ランクはCか?ノアは潜ったことがあるのだろうか?
「なぁ、明日からどうする?」
「依頼か?リオは市場だろ」
そうなんだよな、しばらくは毎日出店だ。まぁ昼まででもいいんだがな。
注文の剣を渡さないとな。
「そうだな、午前は市場だな。あ、ノアの剣はもう出来てるぞ?今渡すか?」
「そうだな、欲しい」
俺はヒメハルコンなる鉱物で強化した二振りの剣を取り出す。
「空間魔法か、リオは魔法特化なんだな」
「まぁな」
実際は物理も人の最強クラス以上に匹敵するのだが、自覚がないリオノールだ。
「おい、これ何の鉱物が使ってあるんだ?オリハルコンは分かるとして、表面に使われてるこれは…」
やはり鑑定持ちか。
「良く分からんがいい物だ」
「良く分からん?俺の鑑定でも分からんな。でも良いものだろう。明日試す」
「あぁ出来れば木とか動かないもので試して貰えるか?感覚がかなり違う筈だ」
ルシアーノが喜んで出張ってきたくらいだからな。
「分かった」
「注文が入っていてな、その分と昨日売り切れた短剣と腕時計は売りたいしな…稼いでおきたいんだ」
「そんなに金に困ってるのか?短剣や腕時計だけでもかなりの儲けだろ?」
そうなんだよな…ただ主がなぁ。
「装備だって相応いい物だし」
そうなのか?俺は脱いだ装備を見る。アイアンリザードあたりを使ってるんだよな。ごく普通だが?
「色々と事情があってな」
「剣の分の金だ」
「おう、毎度ありー」
そうだ、もうパーティー仲間だしポーチ売ってもいいだろう。
「ノア、ポーチ買わないか?お勧めなんだ」
「ポーチ?」
「色々としまえるぞ?」
「?まぁあれば使うな」
「小金貨2枚だ。安くは無いが絶対お得だ」
「そんなに言うならもちろん買う」
ノアは躊躇なくお金を払ってくれる。だから容量を増し増しにして渡した。
受け取ったノアが驚いている。
「えっ?待てリオ…これは、えっ…」
ふふふっ驚いたか?俺自身の能力の限界まで拡張したぞ?500倍ほどだがな、ブースト付けて増し増しにした。最も主のように無限には出来なかったがな。
この国ぐらいなら問題なく入る。ドヤ顔したった。
リオノール自体が聖獣の中でもかなり能力が高いのだが、比較したことがない為に無自覚だ。
「あったら便利だったろ?」
(マジか…?リオ、容量の上限が見えない。しかも持ち主の後追い機能だと?たとえ盗まれても必ず戻ってくるとは…)
「そ、そうだな…」
なんだかとても嬉しそうなリオを見てやり過ぎとは言えなかったノワールだった。
「これ、買ったらいくらだ?間違っても小金貨2枚ではないぞ」
「さあな?俺がいいから問題ない」
どこまでも無自覚にマイペースなリオノールだった。
「話を戻すとだな、午前は市場なんだ。パーティーで活動できるのはしばらく午後だけになる」
「それなら単独で出来そうな依頼があれば午前に済ませるか、一緒に出来る依頼をまとめて受けるか、だな」
「そこはリーダーに任せる」
「リーダー?」
「ノアにしといた」
「はっ、えっ…俺?」
「字は読めるんだろ?」
「いや、その簡単な単語はなんとか」
「今まで依頼はどうしてたんだ?」
「職員に聞いて」
「それで怪我するような依頼を押し付けられてたのか?」
「いや、その…受け手がいないと言われるとな」
「アイツら…死なすか」
「リオ、だ、大丈夫だ…」
「大丈夫じゃないからケガしてんだろ?やっぱり一度殺しておくか…」
「リオ、本当に大丈夫だ」
「ならこれからは俺に聞くかパーティーで受けろ!ケガなんてさせるか」
自分のためにリオが本気で怒ってくれてノワールは嬉しかった。
「なぁ、計算は出来るのか?」
「出来ない」
潔く否定したぞ?かなり厳しい依頼を受けて金は貯めてるんだろうが、搾取した奴らがいるな。
「覚えろ、字もだ」
いつまで一緒にいるか分からないからな、そばにいる間に教えてやろう。
俺は勉強も出来る系のコウモリなのだ。
「急いで依頼を受ける必要が無いなら俺と市場で計算の勉強だな…いい練習になる」
「いいのか?」
「知らないと不便だからな。俺は構わないぞ」
「頼む」
「任せろ!なら明日は起きたら飯食って市場だな。で、午後から依頼を受けるぞ!」
「分かった」
「よし、なら寝よう」
俺はさっさと床に毛布を引いて横になる。
「リ、リオ何してる!お前が借りた部屋だ」
「疲れてるだろ?俺は何もしてないからな…猫でも抱いて寝るさ」
「ダメだ、リオ…俺が床で」
「体使う奴はきちんと休め」
困った。リオは毛布にくるまって寝始めている。早いな…でも俺が床で寝たら絶対怒りそうだ。
はぁ、仕方ない。俺は猫ごとリオの体をそっとそーっと抱き上げる。小さくて軽い。傷付けないようにゆっくりとベットに降ろす。そしてその隣に寝転ぶ。小さな体を後からそっと腕にくるむように。
これならケガをさせないだろう。その髪が顔に触れる。柔らかくて少し冷たい髪だった。
目が覚める。腕の中のリオはまだスヤスヤと眠っている。その少しだけ赤くなった頬をそろりと撫でる。ツヤツヤで柔らかい。リオの首元にいる猫は指で撫でる。気持ち良さそうだ。
自分が、故郷で怪物と言われた自分が、まさかこんな小さな命に触れることがあるなんて…。
リオ、君は本当に不思議な子だな。
あのポーチ、それに剣や腕時計。使っている素材は一級品どころか特級品だ。樹海とはそんなに凄い所なのか?
まだあどけないこの子はいったいどれだけの強さを秘めているのだろうな…
ノアはいい奴だからな…いっぱいオマケだ!
相変わらずやり過ぎなリオノールだった
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