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長生き魔法使いは暇を持て余す  作者: 綾瀬 律


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30/101

30.夢を見た

 これは夢か…?まだ私が駆け出しの魔術師だった頃だろうか?10才か11才か。

 その頃はすでに魔塔の養成所で研究に勤しんでいた。


(ルシー早く!これを見て!)

 エリスノーラが呼んでいる。やっぱり夢か。だってノーラはもうとっくの昔に…。


(ルシー早くってば…!)

 急かされてノーラのそばに行く。

(ほら、これよ。小さな妖精なの。妖精の木に寄って来たのよ?偶然見つけて。可愛いわ…)


 妖精の木とは妖精が好むとされる白い木だ。そう言われているだけで、真実がどうかは分からなかったが。

 そして、その妖精との出会いが悲劇の始まりだなんて、分かるはずもなかった。

 妖精は魔力を食べる。ノーラは自分の魔力を与えていたから大丈夫だと、そう考えていた。


 ノーラの研究はズバリ妖精だ。成り立ちや能力、繁殖方法に至るまで全般。もっとも妖精の数が少ないから見つけることすら難しい。

 主に過去の文献を呼んで関連した文章を集める事で、研究を進めていた。

 そこで見つけた妖精だ。ノーラが喜ぶのも分かる。


 花や薬草に溢れた部屋で妖精を飼う。花の蜜を吸ったりしていたから安心していた。

(名前をつけたのよ?リオって言うの、可愛いでしょ?)

 リオは花という意味の古語だ。

 確かに可愛いな。でも気のせいか、妖精の周りの光が弱くなってるような気がする。


(そんな訳無いわ、こんなに元気だもの)

 気のせいならいいが、大丈夫か?

 心配していたが、私も薬草の研究や採取で忙しく、それからしばらくノーラに会えていなかった。

 久しぶりに遠出から戻り、ノーラに会いに行くとそこには変わり果てたノーラがいた。


(ルシー)

 弱々しい声で呟く。そして背を向けて泣き出した。

(見ないで…)

 もう見えてしまった。ノーラの肌は黒ずみ、体や周りに黒いモヤが立ち上っている。

 何が?

(リオが死んだの…)

 ノーラに触れたその途端、ノーラからリオの記憶が流れ込んできた。


(恨んでやる、私を捕まえて邪悪な魔力を注がれた…もう私は邪悪に侵された…捕えられなければ私はまだ…聖なるままでいられたのに)


 妖精の悲痛な叫びだった。

 聖なるものである妖精は人の魔力、欲のある人の魔力を取り込むと邪悪に乗っ取られる。

 そしてリオは妖精の体を維持出来なくなり消滅した。残ったのは恨みと邪悪な呪い。

 それが元凶のノーラに取り憑き、今に至ったようだ。

 知らなかった。人間の魔力が妖精には毒だなんて。


 でも、もうどうすることも出来ない。せめて妖精の魂だけでも救えないか?

 私は探し回ってやっと見つけた妖精の涙を取り出す。せめてその魂だけは清らかに昇天させてやりたい。

 長年探し求めた薬草だ。しかし、これがあればノーラが助かる可能性すらある。

 私は逡巡した。


(ルシー、ダメよ。せっかく見つけたのに…あなたはそれを見つける為にどれだけの思いをしたの?なら私なんかの為に使ってはダメ)


 研究に使う分はまた探せばいい。悩んでいるのは妖精に使うか、ノーラに使うかだ。

(リオの魂に…お願い、私を殺して)

 ルシアーノはその言葉に頷いた。どの道、妖精に使わなければノーラはこれを受け入れないだろう。


 私はすぐに成分の抽出に入った。そして3日3晩掛けて抽出したそれを持ってノーラの元に急いだ。

 ノーラはさらに黒いモヤに包まれ、息苦しいくらいだ。

(ルシー、早く。あなたに会えて良かった。研究頑張って…そして早く私を忘れて…幸せに)

 泣きながらそう言った。俺は頷くと黒いモヤに妖精の涙を降りかける。どうか安らかに…そして人の過ちを許してほしいと願って。


 黒いモヤはやがて薄れて消え、そこにはごく薄く透けた妖精がいた。

(ありがとう、人の子よ…)

 そう言って消えた。そして残されたのはすでに息をしていないノーラだった。その姿はミイラのように干からびていた。



 ノーラ…救えなくてごめん。

(そんな事ないわ、あなたは私の心と妖精の魂を救ってくれた、ありがとう…)

 空から声がふってきてノーラはそのまま朽ちてしまった。


 部屋に光が降り注ぐ。

『人の子よ…私の子供の魂を救ってくれてありがとう』

 そこには美しい妖精の姿があった。

(人の知りたいという欲が妖精を傷付けてしまった)

『人の子よ…お主の魂は澄んでいる…あの者を忘れるか?』

(いえ、覚えていたい…長く私の記憶に)

 そこではじめて涙が溢れてきた。

(生きたその証を…私が生きている限り)

『ならばその望みを叶えてやろう…良き出会いであった』


 涙を拭いて目を開けると、そこには白いふわふわな塊があった。手を触れると顔を上げた。

(白いコウモリ?)

『聖獣の白コウモリ、私の使徒だ。大切にしてくれ…くれ…くれ…』

 エコーのように聞こえた声。その姿はとうに見えない。

(白いコウモリの聖獣?)

 見た目は白くてふわふわしている。つぶらで大きな瞳に頭や羽にはふわふわな産毛。胸元もふさふさでコウモリ感はゼロだ。

 羽を広げるコウモリ。羽も繋がってない。折り重なるようになっていてとてもきれいだ。

 しかもその羽は艶々で虹色に輝いている。

 やっぱりコウモリ感はゼロだ。


(超音波も飛ばせるし、探索は得意だ。魔法だって使えるぞ!)

 喋った…。

(名前を付けてくれ)

 お前は妖精の使徒だろ?名前ないのか?

(お前に下賜されたからリセットされた。生まれ変わったようなもんだ。だから名前がいる)


 そうか…エリスノーラだとそのままだな。リオ…エリス…それならば、

(エリスリオノールはどうだ?)

(俺の名はエリスリオノール)

 ふわんと光ると俺の肩に止まる。

(人から昇華したな…)

 なんだ、と…?


 コウモリを見る。


 種族 白コウモリ 聖獣 

 名前 エリスリオノール

 ルシアーノの従魔 妖精王の使徒

 魔法 風魔法 火魔法 水魔法 土魔法 空間魔法

聖魔法 

 スキル 超音波探知 隠蔽 同化 言語理解 人化 神眼


(俺の能力が見えるだろ?)

 何故だ?

(自分を見てみろ)

 自分の手を見つめる。


 種族 人 聖人

 名前 ルシアーノ・バルディアス

 妖精王の使徒を従えるもの

 従魔 エリスリオノール

 魔法 風魔法 火魔法 水魔法 土魔法 空間魔法 聖魔法

 スキル 超音波探知 隠蔽 神眼 薬生成 薬草採取 薬草育成 テイマー 浄化 

 称号 妖精王に認められし者 妖精の救済者


 なんだこれ…聖人って?俺は人じゃないのか?

(神に近しい存在だな)

 は?なんで…

(覚えていたいと願ったからだ。長く生きれば長く覚えていられる)

 …そう、なのか?よく分からないが、俺は人では無くなったようだ。


 それでも確かにより長く、ノーラが生きたことを覚えていたいと思ったから。それもありかな、なんてこの時は思っていたな。


 増えまくったスキルとエリーのお陰で、妖精の涙も他の貴重な薬草もたくさん育てられるようになった。

 神から頼まれ、樹海から溢れた魔獣たちを封じ込めるのに大変な思いをし、そのまま監視もあって樹海に移り住んだ。

 薬草も良く育つし、いい環境だったが…。


 まぁそこからは引きこもりだ。もっとも従魔は増えて賑やかにはなったが、やっぱり1人は孤独だった。

 それでもノーラとの別れはこたえたし、その後も出会いと別れがあった。

 長生きだから見送るばかりはやはり辛い。


 そしてようやく、また外に出ることにして…エリーも頑張ってくれてるな!

 その調子でレベル早く上げろよー




ルシアーノの回想

エリーの名前の由来

ノーラは女性名

ノールはノーラの男性名



※読んでくださる皆さんにお願い※


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