3.お金を稼ごう
人間も作ったし装備も揃えてお供も決まった。
しかし迷宮に潜るにはまだ足りない。
今の通貨であるお金を稼がなくてはならない。
物を買うのにも飯を食べるのにも迷宮に潜るのにもお金がいるはずだ。
少しなら手持ちの鉱物を売って稼げるが目立ちなくない。なぜなら大深林産の鉱物は少し珍しい。
たくさん売ると目を付けられるから、少しずつ売るしかない。
それだと足りないと思うのだ。
これから向かう中央大陸の王国アルバサルク。
かれこれ300年ほど引きこもっていたので、今の世情を神秘の鏡で見てみる。
神秘の鏡は世界の見たい場所を映す鏡だ。
いわゆる古代文明の発掘品であるアーティファクトを復元した自信作だ。
アルバサルク王国の迷宮がある都市シェイパーを映すと、そこには活気のある街の様子が見えた。
そこで分かったことは
・物を売るためには商業ギルドに登録する必要がある
・ギルド登録には銀貨1枚が必要
・商業ギルドに登録すると場内市場に無料出店出来る
・商業ギルド員のランクはEからAまであり、取引金額と希少品など販売品の等級によるポイントで上がっていく
ランクが上がると中央寄りの場所に出店出来る
などだ。
まずはここでお金を稼ごう。
しかしルシアーノは長いこと引きこもっていたし、人見知りだから商売などしたくない。
何より面倒だ。
暇を持て余して塔を出ようとしてるのに、面倒だから出たくない。
何言ってるんだ?という話だが、本人は至って真面目に面倒だと思っている。
そこでいい事を思いついた!
エリスリオノールを使おう。
あぁ見えて良く気がつくしマメだ。
仕事も丁寧なのでまさに適材適所。
「エリー、仕事だよー!」
呼ばれた白コウモリは無表情ながら嫌そうに飛んできてルシアーノの肩に止まる。
「お金稼いで来てね。面倒なことはしたくないからさ。えーとまずは街に入って、商業ギルドでこれ売って!」
そう言って取り出したのは神秘的な輝きのラピスラズリ。最古の石とも呼ばれるそれは両手でやっと持てるくらいの大きさだった。
「いやいやいやデカ過ぎ!主は人間の貨幣価値分かってる?国王ですら持ってないサイズだよ?ヤバいって」
と言うと
「えーそう?小さいの選んだんだけどな。じゃあこれは?」
そう言って次に取り出したのは拳大のラピスラズリ。
「それもダメ。もっと小さいのはないのか?」
そう返すと逆ギレして
「持ってる中では圧倒的に安そうなの出してるのに!」
とのたまわった。
価値観が違いすぎる。
そもそも王の石とは、その神秘的な青が故に付けられたのだ。群青というのから、鮮やかな青。自然の中から産出される石だが、ルシアーノの持っているラピスラズリは特にその青が濃くて、ほんの少し白や緑が入っている模様が素晴らしいのだ。
しかも、その大きさがまた問題だ。小指の先ほどでもかなり高価だった。それがこの鮮やかな青。
やり過ぎだ、そうエリスリオノールは思った。
実はエリスリオノールが思っていた価値より何倍も高いのだが、本コウモリはそんな事は知らない。
ため息をついてから
「欠片だして」
と言うとやっとマトモなサイズのラピスラズリが出てきた。
だいたい親指大から小指の先くらいの粒が100ほど。
良かった。あんなデカいの売りに出したら価値が高すぎて目を付けられて、即監禁コースだ。全く物騒なもん出しやがって。
心で悪態をつくエリスリオノールだった。
「それから僕が作った人間の名前な、エリスリオノールって長いからリオノールにした」
良いこと言った風に言うけど俺の名前勝手に使うなよ!しかも縮めやがった。
と心の中で突っ込んだのだった。
エリスリオノールは格の高い聖獣で人化出来る。
今回はルシアーノが作った器に入るので正確には人化ではないが。
その器に入り物を売ってお金を稼ぎ、並行して探索者ギルドに登録して迷宮に入れるランクまであげる。
お金を稼ぐのに約1ヶ月。さらに探索者のランク上げと潜る準備もしたらプラス1ヶ月半くらいか。
エリスリオノールはまたため息をつく。
仕方ない。
どうせ言っても聞かないしな、主は。
そして、なんだかんだ言っても主には甘いのだ。その自覚はある。
鼻歌を歌いながら、変な踊りをする主を見つめている…喜びの舞らしい。
手と腰を振ってくにゃくにゃ動くので、不気味なのだが…主にはそれが言えないのだった。
暇なら自分が外に出ればいいのにな…。その手の面倒ごとは大抵自分に回ってくるのだ。なんせ、付き合いが長いからな。人間の思考にある程度は染まっている。
と言っても聖獣だから、やっぱり人とは違う。
この先、それが元で色々と起きるのだがもちろんエリスリオノールはそんな事はまだ知らない。
そして、人間離れしてしまったルシアーノも大概やらかすのだが、やっぱりそんな事はまだ知らないのだった。
こうして出発の日は近づいて来た。
苦労人のエリスリオノール
ちなみに人化したエリスリオノールは銀の髪に銀の目の渋イケメンらしい
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