25.白の騎士
後書にリオノールのイメージイラスト載せてます
「説明するぞ」
「時計はミスリルとステンレスの合金
文字盤はビックタートルの甲羅
3.6.9.12にラピスラズリで
アイアンリザードの歯に光を魔力に変換して貯めることで常に正確な時を刻む。防汚と魔法反射が付いてる」
「…凄まじいな…」
箱に入れて渡すと嬉しそうに持って
「明日来るよ、またな」
「おう、ありがと」
「私はブランだよ」
「リオだ!」
手を上げて帰って行く。
腕時計も在庫切れだな。
ブランが出て行ってすぐに3人組が戻って来た。
「白の騎士様だ…」
「ブラン様だ…」
ブランは有名なのか?俺には関係ないが。
「出来てるぞ!」
「おう!いや、カッコいいな。お金だ」
皆が支払って帰って行った。
よし、お昼ご飯だ。
シルバとミーシャともぐもぐと食べる。美味いな。
少し出歩くか。
店の幕を降ろして歩き出す。
市場の店で食べ物屋は…おっあの黒いのはノワールだ。あれ?揉めてるのか。
なんか店の店主がお前になんか売らないとか言ってるぞ。遠くてもコウモリイヤーは優秀なんだ。
不吉なヤツめって。なんでだ?黒いだけなのに。
俺はノワールを追い越して店主に
「串焼き20本くれ」
「おうよ」
包んで貰ったそれを手にノワールを追いかける。なんだか避けられてる?
「おい、ノワール!」
振り返ったノワールは淡々とした表情で、でも少し寂しそうだった。
「付き合え!」
そう言って返事も聞かずにノワールの手を掴んで歩き出す。
「お前、嫌われてんの?」
…全く空気の読めないリオノールだった。
「不気味だとか、怖いとか、災いを呼ぶとか…」
「ミクロネシアンは珍しいからな」
「知ってるのか?」
「当たり前だ。そんだけ特徴的なんだからな」
ミクロネシアンは種族名で、ここより遥かに北の国の種族だ。
比較的温暖なこの国と違って極寒の国だ。だからその肌は白く、日に焼けると赤く爛れてしまう。
ノワールが顔を隠しているのはそれが理由だろう。
「なぜこの国に」
「故郷は貧しくてな…」
なるほど。子供を育てられなくなったか、兄弟の為に家を出たかだな。
人が疎らになった所で端に座る。
ノワールも座った。
この国に来てノワールは成功してるのだろう。かなりの金がないと俺の剣は買えない。
上級の探索者か…?
串焼きを15本渡す。彼が買おうとしていた本数だ。
ノワールは驚いて金を渡してきた。受け取ってお釣りを返す。
するとどこからともなくシルバがやってくる。
ノワールは一瞬身構えたが、俺の膝に座るのを見て力を脱いた。店では足元にいたから、気が付かなかったんだろう。
「従魔だ」
頷いて、受け取った串焼きを食べ始めた。ここは日陰だがら大丈夫だろうと選んだ場所だが正解か。
マスクを取った顔は端正で作り物みたいだ。コウモリの俺は人の美醜に興味は無いが、判断はつく。
「作り物みたいな顔だな。無表情だから余計に」
俺をチラッと見ると
「リオもな…」
?俺か?
シルバを見る。コウモリのリオノールには良く分からない。
(それなりに可愛く作ったんだろう)
とはシルバ談。まぁ主のやることだしな。
「その目、聖獣の猫バーマンみたいな目がな…惹きつけられる」
そういえば何か目尻を跳ね上げてとか言ってたか?
しかしなぁバーマンみたいは褒め言葉じゃない。
気ままで自由で言うことを聞かない。リオノールは主の従魔のバーマンが苦手なのだ。
苦笑しか出ないぞ。あんなのに似てるなんて。
*****
その日は市場を歩いていた。予定が無かったから単に流し見だ。
俺は不気味とかいう理由で一般人には避けられることが多い。全身黒で口元まで覆ってるかららしい。
ふと通りを歩いていると濃厚な魔力の気配を感じた。俺は気配に敏感だ。だがこれは異質だ。
とても抑え込まれている。
その気配を探していると店主と目があった。俺と目線を合わせられるものは少ない。威圧がのってるらしくて怖くて目を逸らすのだ。無意識なのだが。
しかしまだ幼い少年の店主は不思議そうに見ている。
そしてごく僅かに魔力が揺らいだ。
ここか…。
店に入ると普通に
「いらっしゃい」
と言われた。何も感じないのか…?
そして短剣と剣を予約をする。ふと変わった時計?を見てると腕に付けると言う。
少年が自分の腕に付けたそれを見せてくれる。思わず握った腕は細くて
「痛っ!」
腕を引いた。あ…つい。
俺が無意識に握ると力が強すぎてケガをさせてしまう。でも少年はケガはしてないという。細い腕だったが大丈夫だろうか。
それでも少年は俺を怖がることもなく、俺はまた見せてもらったその時計も買った。
気分が良くて他の店も見ながら歩き、腹が減って串焼きでも買おうと思ったら拒否された。
特に珍しいことでもない。が、リオが普通に接してくれたから油断してたようだ。なんとなく虚しさを感じる。上げて落とされた、そんな感じだ。
すると後ろから声を掛けられた。
「付き合え!」
まだ小さな手が俺の腕を引っ張る。簡単に振り解けるが着いていくと、人がいない一角で地面に座る。
そして串焼きを渡された。俺が金を渡すと幾らか返された。足りたのなら良かった。
そして俺の種族を言いあてた、不思議な子だ。
するとどこからか大きな狼が来た。身構えたがリオの膝にどしりと座る。
そしてマスクを取った俺の顔を見て
「作りものみたいな顔だな」
と言う。俺からすればリオこそ作り物みたいに見える。
アッシュグレーの瞳に虹彩の縁が青い。跳ね上がった目尻が魅力的だ。同じくアッシュグレーの髪に一部、青が混ざる。オサレなのか?
串焼きを食べ終えて膝に乗った従魔を撫でている。
「リオは探索者なのか?」
従魔がいるならテイマーだろう…。
「あぁ。早く級をあげたいんだがな」
そう言う。何故か、と聞くと迷宮に潜りたいからだと。
一見とても強そうには見えないが、あの濃厚な魔力が気になる。
今のランクは?と聞けばEだと言う。昨日登録したばかりとか。
それはまだまだかかるな。
だからなのか、つい気を許して
「Dに上がったらパーティー組むか?」
と言っていた。あ、断られるか?
「ノワールは俺のこと何も知らないだろ?」
不思議そうに言う。嫌がっていない?
「嫌…じゃないのか?」
「ん?ランクの高いノワールに声を掛けてもらえて嬉しいに決まってる。嫌なわけない」
何故か泣きそうになる。
リオは
「Dまで頑張るから待っててくれよな!」
無表情ながらもその顔は楽しそうだ。
「約束だ」
「あっ、俺は物理が弱いからな」
思わず笑ってしまった。見れば分かる。細いその体だ。
「成長期はこれからなんだ」
口を尖らせて言う。可愛いな…故郷の弟は元気だろうか。
思わずその頭を撫でる。撫でてからあっと思ったがリオはその目を猫のように細めて嬉しそうにしている。
無表情だがこれも分かるぞ。
喜んでいる。そのまま撫でてから手を離す。
「店に戻る!あと少ししたら店を閉めて依頼を探しに行くんだ。ノワールを待たせたら悪いからな!」
そう言ってウインクした。
なんだか心がポカポカした気がする。
リオノール所持金
金貨 274枚
小金貨 130枚
銀貨 102枚
銅貨 95枚
収入
腕時計 金貨15枚
短剣セット3 小金貨54枚
支出
串焼き 銅貨5枚




