24.黒の騎士
出店初日にしてはまぁまぁじゃないかな?
今までに売れたのは
短剣が7本(セット5、単品2)
腕時計が3個
バングル4個
ネックレス1個
指輪2個
短剣はやっぱり人気か。時計は高いからな。
アクセサリーはオマケみたいなものだしな。
そろそろ11時か…さて、今日は何時まで店をやるか。
短剣の柄に模様を描きながら考える。
集中していたのでまた客に気が付かず。
『客だ』
ミーシャに言われて気がつく。
そこにはスラリとしたイケメンが3人いた。
「いらっしゃい」
「これ…これが例の短剣か?」
声を掛けられる。
「?例のってのは知らないが、短剣だ」
「ヘルフリッチ様の…」
「あぁ、ならこれに間違いない」
「模様を?」
「おう、作って来た分が売れてな…補充だ」
「何本作ったんだ?」
「用意したのは5本。でまた2本売れて…時間があるあるから後10本くらい作るかと」
「なら買えるな」
「柄の模様を書くのに少し待って貰うがいいか?」
「どれくらいだ?」
「買うのは誰だ?」
「全員だ」
「なら30分…短剣だけなら」
「剣帯とベルト、ポーチのセットが欲しい」
「それだと45分かな。色は?白、赤、青、緑と茶、黒がある」
「白はヘルフリッチ様が…でも同じ色が欲しいぞ」
「分からなくなったりしないか?」
「そうか、でも白が」
「手馴染みの機能が付いてるから自分の物か人の物かはすぐ分かる」
「「そうなのか?なら白だ!」」
見事にハモったな…。
「今が11時だから12時でいいか?」
「「もちろんだ!」」
1人は喋らずひたすら頷いている。
3本追加で売れたぞ!よし、柄を完成させよう。描きながら空いた手で剣帯を作る。
こうしてああして…、よし。
銘と屋号を刻んでラピスラズリを嵌めて魔法付与をして完成だ。
11時半か…早く終わったな。結局10本作れたし。
やり切って寛いでいると探索者らしい男が歩いて来た。
黒い。装備が全身黒い。そして背が高い。
マントで全身が隠れていてさらに口元までマスクで覆われている。
グレーの髪に淡い水色の作り物のように透き通った目。
威圧感がスゲーな…。
ボケッと見ていると不意にこちらを向いた。
なんだ?
そしてジッと俺を見ると店に入って来た。
「いらっしゃい!」
普通に声を掛ける。男は正面から俺を見ている。
?俺も見返していると視線が時計と短剣を行き来する。
「これは…オリ、ハルコンだと?」
オリハルコンを見極められる鑑定眼の持ち主か…全力で誤魔化すぞ。
目を逸らす。知らないもんなー。足元のシルバをもふる。うん、良きもふもふだな。
「おい、少年!これはいくらだ」
「短剣は小金貨10枚だ」
「…あり得ない…」
「それなりに手がこんでるからな、安くは出来ないぞ!」
「当たり前だ、安過ぎる」
男は睨むように俺を見て言う。安いって文句は普通言わないよな?
「ここにあるだけか?剣は無いなのか?」
「今作り終えたのはそれだけだ。剣も作れるが店に置くつもりは無いぞ」
そう言って、見本用にサクッと作った剣を見せる。
鞘から刀身が少し見えるだけ引き抜く。
男の目が射るようにその刃を見つめる。
「金貨10枚…オマケで魔法付与付けるぞ!」
「2本欲しい」
「これから作るから少し時間かかるぞ」
「仕方ない。いつ出来る?」
「んー明日の昼以降なら大丈夫だ」
「…はっ?」
「だから明日の昼以降だ」
「時間がかかると言っただろ?」
「あぁだから今日は無理だな」
時間の概念が人とは違うリオノールだった。
「明日の午後なら充分だ」
「おう、用意しとく」
「これは?」
腕時計を指して聞く。
「あー腕にする時計だな」
自分の腕に付けたそれを見せる。
男が俺の腕をグッと掴んだ。力が強いな…腕を取り戻すと
「痛いぞ!」
ハッとして手を引き
「悪い、ケガしてないか?」
「ケガはしてないがな、ちと痛かった」
「あぁ良かった。悪いな、力が強くてな。もう一度見たいのだが」
ちゃんと謝れるんだな、黒いがいいヤツかも。
腕を見せる。今度はそっと触れてマジマジと見る。
「駆動は魔石か?」
「いや、アイアンリザードの歯だな。光を集めて魔力に変換しているから駆動部は手入れ不要だ」
「…値段は?」
「金貨15枚」
「大きさは何処で調整するのか?」
「ん?もちろん自動で調整する」
「?」
「腕出してみろ」
男が腕をまくる。白くて筋肉が程よく付いている。
そこに自分のを外して付ける。
シュン
完了。
「…軽いな。これも買う。短剣とこれは今日持って帰る」
「おう、ベルトの色は…黒だな。短剣は剣帯とベルトも付けられるぞ」
「剣帯があるのにベルトも?」
俺はローブを肩にかけて背中を見せる。そこには剣帯とベルトで斜めがけにして背中に短剣が付いている。
「こんな風に装備も出来るし、ベルトだけで太ももにも付けられる」
「なら剣帯とベルトも」
「色は…黒でいいか?」
頷くので用意した。
時計は返して貰い、黒いベルトの腕時計を渡す。
短剣セット 小金貨18枚
時計 金貨15枚
付与してから渡す。
「たくさんありがとな!」
「おう、また来る」
「明日待ってるぞ」
「俺はノワールだ」
「リオだ、じゃあな」
ノワールが店を出る前に今度は全身白いのが来た。
「黒の騎士が市場とはまた似合わないな」
キザな感じの野郎だ。
見た目は普通に爽やかだが。
長い金髪を背中でくくり濃い青の目をしている白い騎士だ。
「ふん、どこに居ようが俺の勝手だ」
そらそうだな。全身黒くたってご飯は食べるし寝るしな…。
思考が明後日の方向を向いてるリオノールだった。
その白い騎士は店に入って来た。入れ違いでノワールは出て行く。
「やぁ、見たことがない子だね。最近かな?」
「今日からだぞ」
驚いた顔をする。そして優しく笑うと
「こんなに小さいのに偉いな!」
「小さいって12だ」
「充分小さいよ」
憮然としていると
「私にも弟がいてな、君より一つ下なんだ。弟みたいな年だから」
「なるほどな」
「これは時計だよな?どうやって使うんだ?」
俺はまた自分の腕を見せる。
「凄いな…その都度取り出さなくていいのか?」
頷く。
「サイズは自動調整だ」
何度も聞かれたから先に言っとくぞ。
「中にはアイアンリザードの歯が入っていて光を魔力に変換するから交換はいらない」
「…いくらだい?」
「金貨15枚」
「ベルトは青だけか?」
「いや、白、赤、青、緑、茶、黒がある」
「白を2つ欲しい」
「二つか?今は一つしかない。明日で良ければ用意するが」
「それなら一つだけ買って明日、また来るよ」
「おう、ありがとな!」
「ん?これって…」
「説明するぞ」
リオノールの所持金
金貨259枚
小金貨 76枚
銀貨 103枚
収入
短剣セット 銀貨18枚
腕時計 金貨15枚
短剣は高いのか?
安過ぎだと気が付かないリオノールだった
明日の投稿にリオノールのイメージイラスト載せます
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