22.次の客
なんやかんやで、ヘルフが買い物をしていたので9時になった。
もう店閉めてもいいくらいは売れてるんだが、初日だしヘルフが知り合いを連れてくると言ってたからな。
もう少し店を開いておこう。
少しずつだが周りの店にも開店準備で人が来始めた。
正面は厳ついオッサンだ。
「おう、今日からか?ナイデルだ!」
大きな手を出してくる。
「リオだ、よろしくな!」
「おう!リオは何を売ってるんだ?」
「短剣と時計とアクセサリーだな」
「また変わった組み合わせだな」
「そうか?それくらいしか思いつかなくてな」
「俺は主に防具だ」
「へー見てもいいか?」
「構わないぞ」
ナイデルの店は盾や胸当て、籠手や膝当てなど本当に防具の専門だ。へー防具か…面白いな。
「何の革だ?」
「これはブラックベアだな」
「魔法防御か?」
「おう、盾はミスリル合金だ」
「豪勢だな」
リオノールはミスリルとオリハルコンの合金だと思っているが、もちろん違う。ミスリルと鋼の合金だ。
「いい品だな」
「買うか?」
笑いながら聞く。
「防具はそれなりのがあるからな…」
「そりゃ残念だ」
じゃあなと手を挙げて店に戻る。じゃまをしたら悪いからな。
すると今度は隣の男が声をかけてくる。
「お隣様に挨拶もなしかよ!」
なんだコイツ。自分で様とか言いやがった。黙って見ていると
「おい、何か言えよ!」
俺は暇じゃないからな。やっぱり無視してると殴りかかって来た。遅!
拳を手で握る。少し強めに…ぐぐっ。
「うわ、痛!離せ…ぐわっ手が…」
「おい、何してる!」
衛兵がかけて来る。
「こ、こいつがいきなり…」
衛兵は俺とソイツを見比べて
「自分の店の中でか?」
ぐっ…男は詰まる。
「コイツが仕掛けたから受けたのか?」
俺に聞くから頷いた。
なら納得だな。そう言って男を連れて行った。ざまあだな。全く。あんなへなちょこパンチなら樹海の蚊の方が強いぞ。
なんたって樹海の蚊は10cmもあるからな!しかも早い。目で見てたら当たられる。それに比べたら、な。
向かいの店主が大丈夫か?と聞いてくれる。あの程度ならいつでも返り討ちにするから平気だと応える。
さて、客でも待つかな。
すると先ほどの衛兵が戻って来た。
まだ何かと思ったら
「ヘルフリッチ様に聞いてな。この店の品が凄くいいと。で、覗きに来たんだ。勤務前だそ?」
笑いながら言う。
「おう、見ていってくれ!どれも自信作なんだ」
短剣をガン見している。
「これは?」
「ミスリル100%の短剣だ。柄は樫で少し魔法付与がしてある。ラピスラズリはただのオシャレだ。決して魔法付与などはしていないぞ」
その衛兵は触っても?と聞くので頷く。
「…素晴らしいな…」
「高いがな…」
「小金貨10枚だろ?剣帯とかポーチも付けて小金貨20枚と聞いた。安いだろ。買うぞ」
「ほんとか?ありがとな。剣帯の色は?」
「青がいい」
短剣セットがまた売れた。
そしてポーチに全部入れて渡すと受け取ってから
「また来る!」
と言って帰って言った。
リオノールはオリハルコンは入ってないよアピールでミスリル100%と言ったが実はそれこそ貴重だと気が付いていない。
比較対象が相変わらずバグっているのだった。
次に店を覗いたのは女性だ。通り過ぎて行こうとし、何かに目を止めて店に入って来た。
「これは…?」
「ラピスラズリのアクセサリー各種だ」
「…なんてきれいな青」
「?」
リオノールの知っているラピスラズリは全部この色だ。しかし、樹海産のラピスラズリが最高品質であることを知らない。
「普通だろ?」
「いいえ、とても鮮やかで美しい…」
「樹海産だからか…?」
「まぁ…でもお高いのかしら?」
「銀貨5枚から10枚だな。頑張った値段だと思うがな」
女性は驚いてアクセサリーを見ている。
「このネックレスも?」
「銀貨10枚だ」
「手に取ってもいいかしら?」
「おう」
そっと触れてから手に取っていろんな角度から見つめる。
「素晴らしい…買うわ」
「おっありがとよ…こっちの指輪もお勧めだそ?小指用でな。ネックレスはプレゼントだろ?自分用にどうだ?」
女性はソワソワと指輪を見る。外にラピスラズリが付いてるものと、内側に隠れているものがある。
「おいくら?」
「石が外にあるのは銀貨7、内にあるのは5だぞ」
「大きさは?」
「自動調整だ」
「嵌めても?」
内側にラピスがついた物を指して言う。
「どうぞ」
右手の小指にはめる。シュンと音がしてサイズ調整が終わる。うん、ピッタリだ。
驚いている。そして頬を染めて
「ではこちらも」
「はめてくか?」
「いえ、外すわ」
指輪を受け取って箱に入れる。ネックレスも箱に入れて布リボンで飾る。
紙袋に入れて盗難防止と帰巣本能を付与した。
簡易な防御とか結界は全てに付いている。
お金(銀貨15枚)を受け取り紙袋を渡す。
「ありがとな!気に入ったらまた来てくれよ」
「そうね、いい買い物が出来たわ」
女性は紙袋を大切そうに腕に抱えて去って行った。
時間は10時になった。
人も増えて来たぞ!まだ少しは売れるかな?
椅子に座ってシルバをもふる。
しっぽがゆらゆらしてて可愛いぞ。
すると店に客が入って来た。
スラリとした青年2人と女性の3人組だ。
「おっ、ここだな」
「あら?武器屋じゃないのね?アクセサリーもあるわ」
「いらっしゃい!」
「おう、見せてもらうぞ」
「あぁ、手に取りたければ声をかけてくれ」
すかさず
「短剣…」
目元まで髪の毛で隠れた男が言う。手近なものを渡してやる。
しげしげと眺めている。
「俺も短剣が見たいな」
もう1人に渡す。
「これは何?」
バングルを指して女性が聞く。俺は自分が腕に嵌めている物を袖をまくって見せる。
「腕につけるのね!素敵だわ」
「じゃまだろ?」
「サイズは自動調整だから邪魔にはならないぞ。軽いしな」
「付けてみたいわ」
「おう」
女性が見ていたバングルを渡す。
手にとって眺めてから付けている。
シュン…
女性は目を開いて固まった。
「凄いわ!ピッタリだし重さを感じない」
「簡単な付与もしてあるからな?」
「付与?」
「魔法付与だ」
リオノール所持金
金貨 214枚
小金貨 20枚
銀貨 58枚
収入
銀貨15枚
魔法付与は高度な魔法なのだが、もちろんリオノールは知らない…
※読んでくださる皆さんにお願いです※
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