2.準備は入念に
魔剣とは何か。
剣に魔力が一定以上たまり、自ら意思を持ったものを魔剣という。何で魔力が溜まるのか…そこは良く分からない。使い手の魔力を吸収するとも、自然魔力を取り込むとも言われる。そもそもが、どれだけの年月をかけて魔剣になるのかも謎だ。
ちなみに聖剣は魔剣の上位互換で魔剣の一種だ。
呪いを斬り傷を癒す究極の剣でもある。
さて、魔剣であるディスタンシアはなかなか煩い。
人格を持つと自主的に動いてくれるから楽ではある。だがいかんせんディスタンシアは喧しいのだ。何かと話しかけてくる。手入れ不要の筈なのに、手入れを要求したり、撫でろと要求したり。
剣を撫でたらスプラッタだろ?血が吹き出す未来しかなさそうだ。
だから休眠させている。
眠っていると持っていてもただの斬れ味のいい剣だが、そもそもカモフラージュなので丁度いい。
後は万能な短剣を2本とナイフ数本。
ルシアーノの万能はルシアーノ基準だ。人に換算すると、聖剣もかくや…なのだが。本人は全くの無自覚だ。
戦闘においては指パッチンでだいたいいけるからな。
過剰な装備は邪魔なだけだ。
最後は旅のお供だ。
せっかくの迷宮だ、どうせなら楽しみを分かち合いたい。たくさんいる従魔の中から誰を選ぶか。
うん、まずは白コウモリ。
あとは白蜘蛛。
癒しにもふもふ系も連れて行くか。
途中で足になりそうな飛獣でも捕まえればいいな。
部屋の中でこちらをジッと見ているコウモリを見やる。
「エリスリオノール」
呼ぶとコウモリなのに凄く嫌そうな顔で
「なんだい?」
と返す。
「お前も冒険したいだろ?」
と聞くと
「一ミリたりともしたくない」
…
「そうか。コウモリのままだと目立つよな?」
(したくないって言ったよな?行くこと確定なのか?ならなぜ聞いたんだよ!)
心で悪態をついたが主は笑顔だ。
これはあかんやつだ。
「白コウモリは聖獣だから目立つな」
……
「ん?お前って聖獣だったのか?」
(知らんかったんかい!)
「聖獣だぞ。白繋がりでネズミとかどうだ?」
「却下だ。もふもふが良き!」
(その顔でもふもふとか言うんやな…)
「じゃあ雪うさぎは?」
「雪うさぎか!良いな。肩に乗るくらいのミニサイズで。それならいつでもスリもふ出来る」
(主のスリもふとかうぜー)
「分かった…」
嫌な予感が的中して溜め息をつくエリスリオノールだった。
一番のお供は白コウモリのエリスリオノールに強制的に決まった。
本コウモリの意志は全無視で。
ちなみに白コウモリは聖獣だ。
ルシアーノはたくさんの従魔がいて、良く使うのが白コウモリ。
コウモリは探索能力に優れ、空間魔法と風魔法が得意で知能の高い魔獣だ。
白コウモリは聖獣なので治癒魔法や結界ももちろん使える。
一家に一匹欲しい聖獣なのだとルシアーノは思っている。
次は白蜘蛛だな。
「ミーシャ?」
そう呼びかけると何もない所から手のひらサイズの白い蜘蛛が現れた。
身体全体が白く輝いていて本体は短い毛で覆われている。
一見すると綿のような見た目の蜘蛛だ。
「何だ?」
見た目にそぐわない低いハスキーボイスで答える。
「外に出る」
…
「そうか…だから何だ?」
と言うとルシアーノこと主はえっという顔をして
「だから外に出るんだよ?」
と言う。
…
「だから何だというのだ?」
と言うと
「一緒に行くんだよ?」
さも当たり前なことを聞くなよ的に返される。
ミーシャはため息をつくと
「だから色々省略し過ぎなんだよ!」
「え?一緒に来てくれないの?」
伏し目がちに聞く。
ミーシャはまたため息をつく。
「行かないとは言ってない?」
腹に響く低音ボイスで答える。
「だよね!子供達も100匹ほど連れて来てね」
…
華麗に色々と全スルーしたルシアーノだった。
白蜘蛛は服に使った糸を作ることが出来る。たくさんいると諜報活動や探索が出来、物作りにも欠かせない。
次のお供もこうして決まった。
ルシアーノは順調に進むお供選びにるんるんだった。
(相変わらず俺の話を聞かねーな、主は)
大きなため息をついたミーシャだった。
お供の実用性と情報能力は万全だ。
となれば最後はザ、癒し。
新しく作った12才の人間より大きな魔獣。抱きついて思いっきりもふるとなると…
あれかな?
「シルバ?」
呼びかけるとドアを開けて銀狼が入って来た。
全体が銀色でお腹側だけ真っ白なもふもふの狼だ。
大きさは1.5mほど。
ふさふさの尻尾が大きく揺れている。
「聞いたぞ!外に出るのだな?連れて行け!」
ハリのある低い声で答える。
輝く毛並みは魔法を弾き爪の攻撃はえげつない。
もふもふと戦闘能力を兼ね備えている最強の魔獣だ。
おわかりだろうが銀狼も聖獣だ。
そもそも人語を話すのだからただの魔獣ではない。
ルシアーノの従魔は特に知能が高く、強力な固体が多い。聖獣自体が強いので従うのならより強者となる。
世界一の魔術師であり聖人であるルシアーノだからこそ出来ることなのだ。
そもそも、魔術とは何か…魔法は自然現象の具現化、その魔法を術として行使することを魔術という…らしい。常には魔法と言ってるが、それでも会話は成立する。
ルシアーノは世界一の魔術師と言われているが、本人的には魔法使いだそうだ。
白コウモリ的には正直どっちでもいいと思っている。
こうして最後のお供は押しかけ?
(win win)で決まった。
抱き枕にもなるなと思いながらシルバの毛を堪能するルシアーノだった。
やはりもふもふは正義だ。
そう思いながらキリっとした顔で首毛に埋もれてご満悦なルシアーノなのであった。
白いコウモリの俺の名前はエリスリオノール
かっけーだろ?ドヤっ
シルバはやる気に満ちていた
どさくさに紛れてお尻に顔面ダイブされて匂いをすんすん嗅がれていたことにも気が付かずに…
ドン引きする白いコウモリと白い蜘蛛がいたとかいないとか?
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