18.凄いぞ
「ひ、100倍の空間拡張に時間遅延…」
私は今、夢を見ているのだろうか?頬をつねる。普通に痛い。これは現実だ。
目の前のリオはその特徴的な色の大きな目で私を見つめる。曇りのない澄んだ目だ。
「サービスで付けていいものではないぞ?」
「俺の気持ちだ」
私はその袋を手に取る。すると中身と性能が感覚で伝わる。鑑定で見ても間違いない。
なんてことだ。リオはなんて事なく簡単にやっていた。しかもそれ以外にも貴重な薬草が多分、オマケで入っている。いや、オマケにしていい薬草じゃないが。
困惑して
「本当にいいのか?」
と聞くが
「もちろんだ」
即答された。
「…ありがとう、リオ。本部の宝とする」
「ただの袋だろ?」
「空間拡張付与100倍なんて伝説級だ」
「そうなのか?」
首を傾げるリオノール。
「ま、気にするな!」
深く考えないリオノールだった。
「あぁ、有り難く貰うな。お金はどうする?商業ギルドと探索者ギルドの口座に入れることも出来るが?」
「なら金貨50枚を現金で、後は60枚ずつをそれぞれの口座に入れてくれ」
「ではこちらが金貨50枚だ、確認してくれ」
リオノールはコウモリの探索機能で瞬殺。
「大丈夫だ」
驚いたが、まぁリオだしな?
「カードを預かるぞ。帰りに返すから」
2つのギルドカードを預かる。
「魔獣は?」
「そちらはまだ査定が終わってないんだ。先にお金を渡した方がいいと思ってね」
昨日、現金ないって言ってたからな。
「助かる」
「ちなみに、市場では何を売るんだ?」
「短剣と時計、後はアクセサリーだな」
「ん?短剣に時計か。気になるな」
「なかなかいい出来だぞ?」
「そうか、それなら明日覗くかな」
「あぁ来てくれ!そうだ、少し相談していいか?」
そう言ってリオがこちらを見る。
「私で良ければ」
「値段がな、俺は分からなくて短剣はいくらぐらいが相場なんだ?」
「そうだな、探索者が使う物なら大体、小金貨1枚から高くて10枚だな」
「そうか、自分で言うのもなんだがかなりいい物だ。売れるかは分からないが小金貨10枚で勝負する。時計はどうだ?」
「時計なんてそもそもほとんど流通しないからな。それだけで高級品だ。安くても金貨1枚からだな」
「時計も力作なんだ。金貨10枚にしとく」
ヘルフはその金額に驚いたが、リオのことだ。なんかやらかしてそうだし、ある意味適正価格かも、と思った。
「アクセサリーは?」
「ピンキリだが、宝石は付けてるのか?」
「ラピスラズリだな」
「…はっ?ラピスラズリ?王の宝石じゃないか」
ラピスラズリはその神秘的な青色から高貴な石、それが王族が好む石として有名になり、いつしか「王の宝石」の別名をとることになった石だ。
最古の宝石とも呼ばれている。
でも、小さければそこまででもないのか?
「それならかなり高価だな。小金貨1枚は確実にするだろう」
リオはうんうん頷いている。
「小さいのを使ったし、なるべく買いやすい方がいいだろうからな。少し考える。助かった」
「これしきのこと、空間拡張付きの袋を貰ったことと比べればたいしたことじゃない」
相場を伝えるだけなんてお安いご用だ。
「他に何かあるか?」
「それならお願いがある」
少しもじもじとしてこちらを上目遣いで見る。大きなその魅力的な目で見られると断れない。
「何だい?」
「明日は初出店だからな。誰も来なかったら寂しいだろ?だから見て早めに来てくれるか?」
もじもじしてたのはこれか!12才らしい反応に微笑ましくなる。
「あぁ、行くぞ。他の連中にも声を掛けておく。店の名前は?」
「リオノールだ。綴りはRionour」
「ほぉ、綴るとカッコイイな!」
えへへっと言って笑う顔は年相応であどけなかった。
「遅くまで済まなかったな。お詫びに夕食をご馳走様するがどうだろう?」
時間は午後5時だ。宿で夕食が出るからな。
「宿で夕食を頼んでるんだ」
「事前に話をすれば明日のお弁当に替えてくれるぞ?」
ちょうど後ろでルチルが動く気配がした。
「ルチル、リオの宿まで走って夕食を明日の弁当にして欲しいと言ってきてくれ」
「はっ、畏まりました!」
ルチルはバタバタと出て行く。もう大丈夫なのか?
「大丈夫だ。気絶してただけだからな」
爽やかな顔で凄いこと言うなっと思ったリオノールだった。
素直に放置したくせに、と思ったミーシャだった。
「そういえば、聞いたぞ?探索者を吹き飛ばしたって」
何だっけか?あ、薬草採取の金額で何か言ってたヤツな。
「シルバに唸られて尻もち付いてたぞ?少しムカツいたから顔面に軽く風を浴びせただけだ。吹き飛ぶほどの威力じゃないんだけどな?」
リオノールの威力はルシアーノの体を使っているから増幅されている。それでも通常よりかなり抑えているので、なんで吹き飛んだか全く理解できないのだった。
「それに、さっそく依頼をこなしたんだってな」
「ん?あぁ早くレベルをあげないとだからな」
「E級からDへは上がりやすいと聞くがな」
「今日は雑用と採取と納品だ。明日から出店だし、店を閉めてから討伐でも受けれるのかな?」
「低い級だと討伐系は少ないはずだぞ?緊急以外は」
「緊急って?」
「あぁ、魔獣の行進だな」
「あ、あれか。依頼になるのか?」
「もちろんなるぞ?探索者も総出で、魔獣が街に入らないよう警戒や討伐をする。もちろん、衛兵もだ」
「へーそうなんだな」
リオノールの記憶では確か、樹海で10万規模の行進があって、その時は流石にルシアーノも指パッチンとはいかず、従魔も力のあるヤツは駆り出された記憶がある。
確かにあれは危険だ。
それをこの街の人間で?これはかなり強い人がいるんだな。
リオノールは知らない。樹海以外では魔獣もそこまで凶悪ではないし、そもそも規模も最大で1000程度だ。
もちろん、ミーシャもシルバも魔獣の行進は10万規模だと思っている。
だから凄く強い人がいると盛大に勘違いしたのだ。
「それは危険だな」
「あぁ、だからそういう時は皆で食い止める」
「なるほど。そんな機会があれば俺も少しなら役立てるかもな」
リオノール、ミーシャ、シルバでその程度なら瞬殺出来るのだが、本人たちは誰もそのことを知らない。
ミーシャは盛大にやらかすフラグでは?と思った
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