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その日の夕刻…
売れ残った野菜を店頭から、
撤去しようと作業していた僕に、
友人の野口から声を掛けられる。
「今夜、お前の家に行ってもいいか?
折り入って頼みがある。」
僕は、分かったよ♪と、彼に返事をする。
夜になる。
晩飯を食べ終えた僕は、
一人、ワインを飲みながらポチと戯れていた。
すると、
野口が、やってくる。
彼にワインを勧めると、
彼も飲みだし、
彼は話を切り出した。
僕らは、
『商業組合 青年部』の会員であった。
その上には、
商業、全てを統括する、
『真 商業組合』があった。
真の会員は、長年の青年部から選出されるという取り決めがあった。
野口は言う。
「今年、真に、
青年部から行ける者は、
2名……どうしても和菓子屋の、こしちゃんを、俺は行かせたい!
森川、こしちゃんに何とぞ、1票、頼む!」
僕は必ず、そのように、こしちゃんに1票、入れると野口と約束した。
聞けば彼は己の仕事と家庭で忙しい。
己が真に、行くのは無理だという。
野口から見て、
一番、己よりだと思う男を、
真に入会させるため、
選出日まで、まだ、すごく日があるけど、
自身の信頼できる青年部に所属する男達へ、
時間を見つけては、
こしちゃんに一票を入れてくれるよう、根回ししているとのことであった…。
僕は、そんな野口に再度、言った。
「必ず、こしちゃんに1票、入れる!」と…。