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転生した大魔王、地球に出現したダンジョンを作ったのが前世の自分であることを思い出す。 〜魔王時代の知識と経験で瞬く間に世界最強になって無双します!〜  作者: 八又ナガト
第二章 大魔王、因縁の宿敵たちを相手に無双する

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73 エピローグ

 周囲の景色が元に戻っていく。

 漆黒の魔力が薄れるにつれ、イレギュラーダンジョンの大広間の姿が戻ってくる。

 同時に、俺の体も大魔王の姿から元の人間の姿へと変化していくのが分かった。

 天力切れによって【天景再現】の効果が切れたのだろう。戻ったのは俺や周囲の環境だけでなく、ゆっくりと地上に降り立った()使()()だった。

 四枚だった翼は再び二枚となり、全身を覆っていた圧倒的な天力も薄れている。


「疑問。何故、私は生存……」


 消え入りそうな声で天使が問いかける。

 その目には純粋な困惑の色が浮かんでいる。

 死を覚悟していたはずなのに、なぜ生きているのか。彼女自身にも理解できないようだ。


「お前の想いは十分に伝わってきた」


 俺はゆっくりと歩み寄りながら、そう答えた。


 最後の攻撃で相手を呑み込む際、不思議なことに天使の記憶と想いが俺に流れ込んできたのだ。

 かつての俺への敗北、幾千年にわたる孤独な修練、そして再戦への執念――それらすべてが俺の心に直接伝わってきた。


 それを踏まえ、俺が抱いた感想はただ一つ。


「あっぱれだ」


 心からの称賛を込めて、俺はそう告げた。


「まさか天使の中にこれほど見どころがある奴がいるとは思わなかった。そんな相手を失うなんて勿体ないこと、できるはずがないだろう?」


 そう言うと、天使の瞳がわずかに揺らいだ。

 どこか硬質だった彼女の表情が、少しずつ崩れていく。

 そして驚くべきことに、その瞳から一筋の雫が零れ落ちた。


「同意。何度でも、私は貴方と戦いたい」


 機械的な口調は変わらないのに、その言葉には確かな感情が宿っていた。


「望むところだ」


 俺は満足げに頷く。



 そんなやり取りを交わしていると、雫たちが駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか、蓮夜さん!?」

「結局どうなったの?」


 少し離れたところから様子を窺っていた皆が、危険が去ったと判断したのか一斉に声をかけてくる。


「決着はついた。もう戦う必要はない」


 俺は簡潔に伝えた。

 それ以上の説明は長くなるし、今は必要ないだろう。


「色々と訊きたいことはあるけれど……蓮夜がそう言うならそうなんでしょうね」


 ミツキが半ば納得したように言う。

 しかし、すぐに別の疑問を口にした。


「けれど、ボスが生きたままだとダンジョンがいつまでも消えないんじゃ……」

「確かにそうだな……ふむ」


 俺は腕を組んで考える。

 イレギュラーダンジョンは基本的にボス討伐によって消滅する。

 今回は天使が生きたままなので、このダンジョンは残り続けてしまうのだ。


 さらに、懸念点が追加で一つ。


「明言。私はこのダンジョンと共に生まれ、縛られている。外界に出ることは不可能」


 とのことだった。

 確かに今見た記憶によると天使はダンジョンの核となっているため、おそらくここから出ることもできないだろう。

 解決策を思案していると、突如として閃いた。


「そうだ、従属契約があるじゃないか」

「従属契約、ですか?」


 雫が首を傾げる。


「ああ。その名の通り、誰かを主人として契約する魔術だ。そうだな、たとえば――」


 説明しながら、俺は手に持っていたグラムを強く握りしめた。

 すると、


『んなぁ!?』


 実体化していたグラムが、驚きの声を上げながら剣の中へと引き戻されていく。

 その光景を見て満足気に頷いた俺は、雫たちに向けて告げる。


「これは特殊な例だが、こんな感じで契約対象に引き寄せる効力がある。コイツの従属先をダンジョンから俺に代えれば、ここから出ることができてダンジョン自体消えるはずだ」


 俺は天使に向き直る。


「天使なら使えるだろ? 本来の使い道とは真逆になるけど……」


 天使と従属契約といえば、一般的には天使が主人として人間や下位の存在と契約を結ぶ。だが今回はその逆だ。天使が従者となり、俺が主人となる。

 本来の使い方とは正反対だが、理論上は不可能ではないはず。

 これでうまくいけば天使はダンジョンから解放され、ダンジョン自体も消滅する。


 天使に尋ねると、彼女はわずかに迷った後、コクリと頷いた。


「肯定。残存天力でも可」

「決まりだな」


 俺が天使との契約を決意したその瞬間、雫、ミツキ、琴美が妙な表情で俺を見つめているのに気付いた。


「「「………………」」」


 三人の視線に、なぜか冷たい風が吹き抜けるような気がする。


「何だ? そんな目で見て」


 不思議に思って尋ねると、琴美が突然声を上げた。


「まだ事情は全然分からないけど、要するに蓮夜くんが天使……? 何でもいいや! とにかく、こんなに綺麗な人を従えるってことだよね!? エッチなことする気だ! 絶対そうだ!」

「何を言ってるんだお前は」


 思わず頭を抱えながら否定する。


「そうよ、琴美。あまり余計なことを言わないの」


 ミツキがクールな声で諭すも、その目は明らかに怪しんでいる。


「そ、そうですよ! そんなこと、蓮夜さんが……」


 雫まで心配そうに俺を見ている。彼女の視線には、「まさか」という疑いと「でも可能性はゼロじゃない」という複雑な感情が混ざっているように見えた。


「馬鹿な勘ぐりはやめろ。純粋に技術的な解決策だ」


 俺はため息をつきながら、改めて天使に向き直る。


「契約を始めるぞ」


 天使は静かに頷くと、右手を俺に差し出した。

 俺もそれに応じて右手を伸ばし、天使の手と重ねる。


 触れ合った瞬間、淡い光が二人の手を包み込んだ。

 天使の口から呪文が零れ、それに応じるように俺の中の魔力が反応する。

 やがて光が収まり、契約は完了した。


「完了。従属契約、成立」


 天使の目に、これまでにない穏やかな光が宿る。

 その直後、ダンジョン全体が微かに震え始めた。


「どうやら成功したようだな。このダンジョンは間もなく消滅するだろう」


 俺の予想通り、従属契約によって天使とダンジョンの繋がりが変化したようだ。


「さあ、全員で出口を目指そう」


 そう言うと、俺たちは大広間を後にした。

 ダンジョンを出る途中、雫たちが小声で呟く。


「蓮夜さんって本当にとんでもない人ですね……」

「結局、あの時の話が本当だったってことよね? ……正気の沙汰じゃないわ」

「これ、録画してあるから編集して投稿しちゃおっかな~」


 そんな彼女たちに続き、優斗や柊たちも「まあ蓮夜だからな」「まだ信じがたいが……」といった感想を口々に零し、俺は琴美から機材を取り上げる。


「………………」


 そんな俺たちの様子を、天使はどこか面白そうに見ていた。

 機械的な表情の中にも、かすかな興味の色が浮かんでいる。


 今回の出来事で色々なことが明らかになったが、それ以上に新たな展開が始まった気がする。

 天使と再会したこと、そして彼女との契約——これからどうなるのか、正直なところ俺にも見当がつかない。


 だが一つだけ確かなことがある。

 俺たちの旅は、まだまだ続いていくということだ。

これにて第二章完結。

そして切りがいいので、本編もいったんここで完結とさせていただきます。

機会があれば続きも書こうと考えているので、引き続きよろしくお願いいたします!

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