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転生した大魔王、地球に出現したダンジョンを作ったのが前世の自分であることを思い出す。 〜魔王時代の知識と経験で瞬く間に世界最強になって無双します!〜  作者: 八又ナガト
第二章 大魔王、因縁の宿敵たちを相手に無双する

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68 天使との邂逅

 天使とのバトルが開始する。

 目に見えるほどの濃密な純白の魔力が室内、どころかダンジョン全体に行き渡っていく。


「【天罰執行てんばつしっこう】」

「――皆、避けて!」

「っ!」


 頭上から魔力の光が降り注ぐ。

 鷹見を含め、陽向の叫びによってハッと我に返った全員が横に飛ぶ。

 光は各人物がいた場所に降り注ぎ、地面をジュっと蒸発させた。


「なんて熱量……!」


 鷹見は理解する。

 ジャブのように繰り出されたこの攻撃一つとっても、自分の最大火力以上。

 明らかに格の違う存在。上級の領域に足を踏み入れたばかりの自分が戦える相手ではない。


 そう思った直後、


「次はこっち」


 どういう理屈なのか、陽向が空を蹴りながら浮かぶ天使に向かって行く。


「警戒強化」


 すると天使は陽向に狙いを定め、先ほどよりは低火力のレーザーを複数放つ。

 陽向はそれでも戸惑うことなく縦横無尽に空を駆け、とうとう肉薄するに至った。

 そして、


「はあっ!」

「――――」


 放たれた一閃が天使に向かう。

 天使は身をよじりなんとか回避に成功するも、僅かに目を見開くのが分かった。


「逢坂の後に続け!」


 そのタイミングで、上級探索者の一人が叫びながら魔術を放つ。

 鷹見も僅かに遅れてだが【地を割る(エクスプロード・)落雷(サンダー)】を発動すると、様々な種類の魔術が時間差で天使のもとに向かっていった。

 しかし、


「【森羅絶無しんらぜつむ】」


 純白の魔力が巨大な盾となり天使の体を隠す。

 直後、数々の魔術が着弾し大爆発を引き起こす――かと思いきや、プスッと音を立て、全ての魔術は呆気なく消え伏せた。


「「「なっ!」」」


 同時に驚愕の声が上がる。

 圧倒的な魔力量による盾は、その衝撃すら呑み込んでしまう程の性能を有しているのだ。

 もう、こちらに手は残されていな――


「上が隙だらけ」

「――――!」

「【空斬そらきり】」


 ――盾が展開されたのとは逆の遥か頭上から、駆け降りるように陽向が剣を振るう。

 天使は防御に意識をしようとするも間に合わないのが分かったのか、翼をはためかせ横に移動を試みる。

 しかし今度は完全回避に成功せず、斬撃が彼女の翼を浅く切り裂いた。


「っ」

「……浅い」


 僅かに表情を歪める天使と、不満そうな表情のまま地面に着地する陽向。

 彼女は残念そうだが、鷹見たちにとって今の光景は期待を膨れ上がらせるものだった。

 先ほど、陽向に続いて誰よりも早く魔術を放った熟練の探索者が叫ぶ。


「狼狽えるな! 攻撃も守りも圧倒的な実力だが、怯えすぎる必要はない! 逢坂を中心に立ち回れば勝ち目はあるはずだ!」

「「「……はい!」」」

「逢坂、キツイ役目を任せてしまうが、やれるか?」

「もちろん、それが私の役目」


 戸惑うことなく頷く陽向。

 それを見た探索者たちの目にやる気が灯る。


(そうだ。僕だって……!)


 それは鷹見とて例外ではなく、槍を握りしめる力を強める。


「………………」


 そんな中、天使は不自然さを感じるほど無表情のままこちらを見下ろすだけ。

 だとしてもやることは変わらず、戦況は加速していった。



 ◇◆◇



 常軌を逸した魔力量に、触れた物全てを蒸発させる攻撃と、どんな魔術をもかき消してしまう盾。

 場合によっては死者が出かねない程の苦戦が強いられるかと誰もが考えていたが――実際は違った。


「…………」


 今、陽向たちの目の前にいるのは数々の攻防の結果、多くのダメージを負い全身が血に染まった天使。

 対し、こちらは紙一重で攻撃を躱し続けており、死者どころか怪我人すら出ていなかった。

 その圧倒的な威力に対して技術が拙いのか、それとも無表情に反して動揺しているのか、狙いが甘く、それは時間が経つにつれて顕著になっていた。


「勝てるぞ、この調子なら!」


 背後の男性冒険者が力強く叫ぶ。

 そんな中、陽向だけは違和感を覚えていた。


(不可解。纏っている魔力と実力が一致していない。狙いの甘さはもちろん、そもそも威力に至っても例外じゃない。本気を出せばこの広間全てを巻き込むほどの攻撃ができるはず。なのになぜ……)


 思い返せば、その疑問は初めからあった。

 天使は自分たちと遭遇した直後、魔力をダンジョン全体に拡散させた。

 そのような無駄遣いをいったい、何のために行ったというのか。

 考えても答えは出ず、開き直って最後の猛攻に出ようかと陽向が考えた直後――


「――――目標発見」

「ッッッ」


 ――突如、天使が脈絡のない言葉を発した。

 それを聞いた陽向が身震いしたのは、その声からここまでの天使に見られなかった感情が見えたから。

 どこか喜ばしいような、そんな気配すら覚える。


(このままだと、まずい)


 彼女が生まれ持つ優れた本能がそう警鐘を鳴らす。

 一刻も早くトドメを与えなければならない。そう思い地を蹴ろうとした直後、


「っ」


 突如として、大広間全体を覆う魔法陣が展開された。


「これはなんだ!?」

「大規模魔術か!?」


 戸惑いの声がこだまする。

 ここまでで一番の魔力量に、陽向は慌てて口を開く。


「全員、すぐに避難――」


 しかし、それを言い切るよりも早く。



「【座標置換ざひょうちかん】」



 天使の声が響き渡り、大広間全体が眩い光に包まれるのだった。



 ◇◆◇



「――――ん?」


 突然だった。

 俺たちが中広間で魔物たちを殲滅していると、突如として広間全体を覆う魔法陣が展開されたのだ。


「きゃあっ!」

「何、これ!?」


 雫や琴美が戸惑いの声を上げるも、状況を分析する時間すら与えてくれなかった。

 直後、魔法陣からは眩い光が放たれ――


(これ、は――)


 ほんの僅かな浮遊感の後、光が収まる。

 目を見開くと、そこに広がる光景はこれまでと違っていた。

 中広間に比べても遥かに広い空間なのに、いるメンバーは先ほどまでと全く同じ。


「今の、まるでダンジョン間を転移した時みたいな……」


 心当たりがある様子でミツキがそう呟く。

 彼女の言う通り、今のは間違いなく転移だろう。

 そして、


「おい、アレを見ろ!」


 俺が魔力を感じ上を見上げた直後、柊が叫ぶ。

 そんな中、俺の視線はその存在に釘付けとなっていた。


 上空に浮かぶは、純白の翼を持ち、なぜか全身が血で染まっている少女の見た目をした何か。

 ダンジョンに入った時から感じている圧倒的な魔力の持ち主であることからここのダンジョンボスであり、恐らく今の今まで上級探索者たちが戦っていたこと、彼らと位置を入れ替えられたことを悟る。


「アレはいったい……!」

「この感じからしてボスだよね!? そんで多分、戦ってた上級探索者たちと入れ替えられて感じ!?」

「っ、じゃあ俺たちが倒し切らないといけないってことか!? 既にかなりダメージは負っているみたいだけど……」


 同じ予想に至った様子のミツキ、琴美、優斗が口々にそう叫ぶ。

 もっともそれらの情報は今、俺にとって重要ではなく――


「アイツは……そうか、昨日から感じていた違和感の正体はやっぱり……っ」


 ――瞬間、突如として体が急激に重くなり、俺は片膝をついた。


(まさか、()()は――)


「目標補足――計略実行」


 俺がその答えに至りかけた次の瞬間、シュッと何かが空を駆ける音がした。


「だ、大丈夫です! どんな相手だろうと、こちらに蓮夜さんが――」


 ピタリと、雫の声が止まる。

 彼女は俺を――()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を見て、目を見開きながら再び口を開いた。


「……蓮夜、さん?」

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