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転生した大魔王、地球に出現したダンジョンを作ったのが前世の自分であることを思い出す。 〜魔王時代の知識と経験で瞬く間に世界最強になって無双します!〜  作者: 八又ナガト
第二章 大魔王、因縁の宿敵たちを相手に無双する

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66 イレギュラーダンジョン、再び

 イレギュラーダンジョンを攻略した翌日の早朝。

 自室のベッドで眠っていると、突如としてけたたましい警告音が部屋に響き渡る。


「なんだ……?」


 目を開け、手を伸ばしてスマホを確認すると、画面には緊急アラートのマークが表示されていた。

 内容を見て、俺は思わず目を疑う。

 そこにはなんと、イレギュラーダンジョン発生を知らせるメッセージが刻まれていた。


「昨日の今日で、またイレギュラーダンジョンが発生したのか?」


 しかも、なんとその発生地点は昨日と全く同じ場所だという。

 一般人には避難通告が、中級以上の探索者には至急集まるようにとの指示が書かれている。

 俺はベッドから身を起こし、しばし考え込んだ。


「……ふむ」

『主様、いかがなされますか?』


 グラムの問いかけに、俺の答えは既に決まっていた。

 俺は口元に笑みを浮かべる。


「こんな面白そうな余興、当然行くに決まってるだろ?」

『おおっ、さすが主様!』

「それに少し、気になることもあるしな……」

『気になること、ですか?』


 昨日、ダンジョンのゲートが消失する瞬間に感じた違和感が蘇る。


「いや、何でもない」


 そう誤魔化した俺は、急いで装備を整え現地へと向かうのだった。



 ◇◆◇



 現地に到着すると、そこには昨日のそれを遥かに上回る巨大な渦状のゲートが存在していた。

 さらに驚いたのは、ゲート前には数百人にも及ぶ探索者たちが集結していたこと。

 昨日の緊急召集とは比べ物にならないほどの人数だった。


「……すごい人数だな」


 感心したように呟いた直後、背後から声がかかる。


「蓮夜さん!」


 振り向くと、そこには見覚えのあるクリーム色の長髪の少女がいた。


「……雫か。それに優斗たちも」


 昨日と違うのは、雫と共に彼女のパーティーメンバーである蒼井 優斗と緋村 真司の姿もあったこと。

 前回出会ってからそこまで日にちは立っていないはずなのに、どういうわけか懐かしさを感じる。


「久しぶりだな、蓮夜。昨日は雫が世話になったみたいで悪いな」

「相変わらずの暴走っぷりは話に聞いてるよ」

「失礼な。俺ほど品行方正な奴はそういないぞ」

「「「どこがですか(だ)!」」」


 なぜか三人から一斉に突っ込まれた。そんな悪い噂を広めているのは誰だ。

 不満を抱いていると、また別の声が聞こえてきた。


「やっぱりいたわ。昨日ぶりね、蓮夜」


 黒髪のポニーテールを背中に垂らすミツキが、颯爽と俺たちに近づいてくる。


「ミツキ」


 こちらもまた、ミツキの後ろには彼女のパーティーメンバーが揃っていた。


「確か、神蔵蓮夜と言ったか」


 リーダーの柊は俺に気付くと、真剣な表情で見つめ――直後、深く頭を下げた。


「柊さん!?」


 驚きの声を上げるミツキを置き、彼女はそのまま続ける。


「君には感謝を伝えたいと思っていた」

「……ふむ」


 詳しく聞いたところ、かつて暴走気味だった雫を助けたことや、その後も色々とサポートしたことに対して、リーダーとして直接お礼を伝えなければと思っていたらしい。なんとも義理堅いことだ。

 俺は快くお礼を受け止め、軽く頷いた直後、


「ふっふーん、主役は遅れて登場みたいだねっ!」


 にぎやかな声とともに、金髪の少女が人混みを掻き分けて現れた。

 俺は琴美を見て、「ふむ」と小さく頷く。


「お前だけ一人ぼっちなんだな」

「開口一番にひどすぎる!? それに少し見てたけど、一人なのは蓮夜くんも同じだったよね!?」


 琴美が抗議の声を上げる。

 すると、グラムが俺の頭の中で怒りの声を上げた。


『こやつ、なんと失礼なことを!』

「いや、俺には一応連れ(げぼく)がいるし……」

『そうです! 主様には私という立派な仲間が……おや? 何か言い方がおかしかったような……』


 グラムの叫びを無視していると、琴美がぷくーっと頬を膨らませる。

 可愛いと言えば可愛いが、どこか子供っぽさが抜けない仕草だ。


「ふーんだ! せっかく詳しい情報を集めてきたのに、そんなことを言うんだったら蓮夜くんには教えてあげないよ?」

「ふむ、それは確かに少し困――」


 俺が言葉を続けようとした矢先、周囲に探索者協会の声が響き渡った。


『探索者協会の者です。これより詳細をお伝えします』

「――らないみたいだな」

「そんな!」


 ガーン! と落ち込んでいる琴美を尻目に、俺たちは協会の者に視線を戻す。


「まずは皆様、本日は緊急招集に応じてくださりありがとうございます。連日でのイレギュラーダンジョン発生という異常事態であり、さらに事前調査の結果、ダンジョン内の魔力濃度が昨日より高いことが明らかになりました」


 その言葉に、探索者たちが一斉にざわめきだす。



「嘘だろ!?」

「確か、昨日の時点で100レベル越えの魔物が出たって話じゃなかったか?」

「それ以上だなんて、中級探索者がいくら揃ったところで無駄なんじゃ……」



 ざわつく探索者たちの前で、職員は落ち着いた声で説明を続ける。


「あくまでボス討伐は上級探索者たちが務めます。中級探索者の皆様には入り口付近に散り、外に出てくる魔物を抑えていただきたく思います」


 それだけなら何とかなりそうだと、皆が少し安心した様子で頷き合う。

 しかし、ある探索者が声を上げた。


「けど、肝心のボス討伐を務める上級探索者たちはどこにいるんだ? 並の実力者じゃ返り討ちに遭うだけじゃ――」

「ご安心ください」


 職員はにこやかに笑顔を浮かべた。


「ボス討伐組については別で作戦が伝えられています……来ましたね」


 すると、人垣を分けるようにして、10人以上の探索者たちがゲートに向かって進んでくる。

 その先頭に立つのは、一人の女性だった。


 俺の視線は無意識に彼女に釘付けになる。

 年齢は俺と同じくらいだろうか。艶のある黒色の長髪を伸ばし、深い翡翠の瞳が特徴的な美人な女性。

 背筋は美しくピンと伸び、腰には一振りの刀を携えている。

 少し見ただけでも、強者であることが直感的に理解できた。


「…………」

(……ん?)


 不意に、彼女がこちらを見たような気がした。

 なぜだろうかと考えていると、周囲の者たちが一気に賑わいだす。



逢坂おうさか 陽向ひなたさんだ! 初級ダンジョンと中級ダンジョンの最速攻略記録を持つ!」

「あれ? 初級ダンジョンは更新されてなかったっけ?」

「それは何かの間違いだったって話だろ? とにかく、彼女さえいれば間違いない!」



「……ふむ」


 逢坂 陽向。どこかで聞いたことがあると思えば、確か俺が初級ダンジョンを攻略したことを瀬名に報告した後、彼女の口から聞いたんだった。

 ……あれ? だけど、他にもどこかで聞いた覚えがある気が――


「残念だったな、神蔵蓮夜! 今回の主役はどうやら僕のようだ!」


 ――思考を遮るような声に顔を上げると、上級探索者の集団の中に見覚えのある金髪の青年の姿があった。鷹見だ。

 どこにもいないと思ったらあんなところに……そう言えば、アイツも立派な上級探索者だったか。


(くそっ、こんなことなら昨日の攻略後にでも、とっとと中級ボスを倒しておくべきだった……!)


 後悔しても後の祭り。

 上級探索者たちは先陣を切ってダンジョンの中へと入っていくのを、俺は見届けることしかできないのだった。

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