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転生した大魔王、地球に出現したダンジョンを作ったのが前世の自分であることを思い出す。 〜魔王時代の知識と経験で瞬く間に世界最強になって無双します!〜  作者: 八又ナガト
第二章 大魔王、因縁の宿敵たちを相手に無双する

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61 VS白虎

雫視点です。

 蓮夜と別れた後、広間に到着した雫たちは、すぐにその魔物と遭遇した。


「ガルァァァアアアアア!」


 全身を白色の毛並みに覆われた巨大な虎が、強烈な咆哮を上げる。

 僅かに血を流す右前足以外、その姿には傷一つ見当たらない。

 先程の男性探索者たちいわく、死力を尽くした末にようやく与えられたダメージがアレであり、生まれた僅かな隙に命からがら逃げ出したのだという。


 雫は恐る恐る鑑定を使用する。



――――――――――――――


白虎(びゃっこ)

・討伐推奨レベル:85

・高速移動からの鋭い爪や牙による攻撃を得意とし、咆哮による広範囲攻撃手段も持つ。


――――――――――――――



(聞いていた通りの情報ですね……あの時を思い出してしまいます)


 その姿やサイズ、獣型魔物という特徴から、雫は以前パーティーで戦った炎の獅子(イグニス・レオ)を思い出していた。

 しかし、白虎から放たれる圧倒的な威圧感は、あの時とは比べ物にならない。


(でも――)


 雫は深く息を吐き、手に持つ杖を強く握りしめる。


(私たちも、あの時とは違う)


 その決意を胸に秘めていた時、ミツキの力強い声が響く。


「事前の作戦通り、あたしと琴美が前衛で、雫は後ろから援護をお願い! 足にダメージを負っているから、機動力は殺がれているはずよ!」

「おっけー!」

「はい!」


 三人は即座にミツキの指示に従い、態勢を整える。

 本来ならこういった場合、最もレベルの高い琴美か後衛の雫が指揮を執る。

 しかし雫は経験が不足しており、さらにこちらの最大火力である琴美が攻撃に集中できるよう、別れる前に蓮夜から受けたアドバイスによってこの布陣となった。

 また、蓮夜が告げた琴美の性格面も考慮してとの言葉に、琴美が「なぁー!?」と不満を露わにする場面もあったが……それはさておき。


 先ほどの冒険者たちが僅かとはいえ、傷を与えてくれていたのが大きかったのだろう。

 格上である白虎に対しても、ミツキと琴美はなんとか互角に渡り合えていた。


「はっ!」


 ミツキの剣が白虎の前足を狙う。

 それを避けようとした白虎の動きに合わせ、琴美が反対側から斬りかかった。

 息の合った連携に、雫は思わず感心してしまう。


(今です!)


 二人の攻撃で生まれた隙を見逃すまいと、雫は杖を掲げる。


「【逆巻く水砲(ウォーターレーザー)】!」

「ガウッ!?」


 放たれた水の槍が、白虎の脇腹を直撃する。

 逆巻く水砲(ウォーターレーザー)は水属性の中級魔術であり、その貫通力の高さが特徴だ。たとえレベル差があっても、隙を作り出すことくらいはできる。

 雫は正確なタイミングを計りながら、何度も魔術を放っていく。


 そんなやり取りが何度か繰り返されたその時、ついに白虎の体勢が大きく崩れた。


「今よ、琴美!」


 ミツキの指示を受けた琴美は笑みを浮かべながら、一歩前に踏み出した。


「これでも喰らっちゃえ! 術式変換――【地を割る(エクスプロード・)落雷(サンダー)】!」


 先日の配信で暗界の吸血鬼(ナイト・ヴァンパイア)を討伐した、あの雷属性の上級魔術が放たれる。

 眩い光が広間を照らし、轟音と共に白虎に直撃した。


 砂煙が立ち込める中、琴美は満足げな表情を浮かべる。


「ふっふーん、こんなところかな!」


 録画用のカメラに向かって、得意げにポーズを取る琴美。

 しかしその瞬間、雫とミツキは同時にある違和感に気付いた。


「油断しないで、まだ終わっていないわ!」

「レベルアップ音が鳴り響いていません!」

「え? ――――ッ!」


 これだけの格上を倒せば、確実にレベルが上がるはずだ。

 それが起きていないということは、まだ討伐できていないという証。

 そう理解した次の瞬間――



「ガルァァァアアアアアアアアアア!」


「きゃぁっ!」

「っ」

「――――!」



 轟音のような咆哮が広間に響き渡った。

 その衝撃波によって砂埃は一瞬で吹き飛び、雫たちの体にも少なくない衝撃が襲い掛かる。

 近くにいた琴美とミツキは特に大きなダメージを受けたようで、二人とも膝をつく寸前だった。


 咆哮が止んだ時、そこには全身を焦がしながらもなお、闘志を失っていない白虎の姿があった。


「うそ! 今のでも倒せないなんて……」

「想像以上のタフさね……」


 戦々恐々と汗を流す二人。

 雫もまた、冷や汗を流しながら次の手を考える。


(どうしましょう……本来の作戦では、ことみんさんの魔術を命中させることを軸に考えていました。しかしそれでも倒し切れない以上、別の手段を考えないと……)


 だが、ここにいる中で最もレベルが高いのは琴美だ。

 そんな彼女の最大火力が通用しないとなれば、これ以上の作戦なんて――


「……あ」


 その時、雫は自分の手に視線を落とした。

 そこには蓮夜から託された指輪が嵌められており、ある考えが脳裏に浮かぶ。


(これなら、もしかしたら……!)


 突拍子もない作戦が雫の頭に浮かぶ。

 しかし彼女の本能は、それしかないと告げていた。


「時間を稼いでください!」

「……え?」

「雫?」


 突然の指示に、琴美とミツキが首を傾げる。

 しかし雫の真剣な表情を見て、すぐに納得したように頷いた。


「何か考えがあるのね?」

「はい! なのでなんとか時間を稼ぎ、敵の隙を作ってください!」

「わかったわ!」


 ミツキが先陣を切り、それに続く形で琴美も白虎との戦いを再開する。

 先ほどの上級魔術でダメージは確実に与えられていたのか、白虎の動きは以前より鈍くなっていた。


 その間に、雫は思い浮かんだ作戦を実行に移す。

 それはこれまで彼女が見てきた中で最も強く、最も難易度が高く――そして最も美しい魔術。


(まずは……!)


「【逆巻く水砲(ウォーターレーザー)】」


 慣れ親しんだ水の中級魔術を展開する。

 続いて、蓮夜から託された指輪に意識を向ける。


(次は――)


「【渦巻く火焔(フレイムトルネード)】」


 指輪から蓮夜の魔力を引き出しながら、二つ目の術式を展開。

 そしてここからが、真の勝負だった。

 その難易度は非常に高いが、不思議と雫には「できる」という確信があった。


(だって私は一度、これを成功させています)


 あの時は確かに蓮夜の助けがあってこそだった。

 それでも、成功した感覚は確かに自分の身体に刻み込まれている。

 雫はその記憶をなぞるように、二つの術式を組み合わせていく。


「それって、まさか……」

「うそ……」


 雫が何をしようとしているのか理解した二人から、驚きの声が上がる。

 しかし構わず、雫は準備を進める。


「いきます!」


 ミツキと琴美の連携攻撃が見事に決まり、白虎の動きが止まった瞬間を捉えて、雫は力強く宣言する。



術式邂逅(じゅつしきかいこう)――――【絢爛たる蒼炎(ブルーム・バースト)】!」



 重なり合った術式が崩壊し、放たれたのは渦巻く蒼い炎。

 それは白虎の身体を貫き、その場で爆発を巻き起こした。


 吹き荒れる爆風。

 そして、待望のレベルアップ音が鳴り響く。

 それは今度こそ、白虎との戦いに勝利した証だった。


「まさか、貴女がそれを使えるなんて……すごいわね、雫」

「うんうん、見事に勝利、だねっ!」

「はい!」


 驚愕と称賛が入り混じった表情で駆け寄ってくる二人に、雫は満面の笑みを浮かべて頷く。

 そしてここにはいない、あの人物に思いを馳せた。


(そちらは頼みます――蓮夜さん)

【大切なお願い】


先日より新作

『世界最強の<剣神>は、自分を低級剣士だと思い込んだまま無自覚に無双する ~異世界に転生したけど魔力0だったので、1000年間剣技を鍛えたら最強になってた……らしい~』を投稿しました!


大変面白い出来になっていますので、ぜひご一読ください!

それからもし気に入っていただけたなら、『ブックマーク追加』や『ポイント評価』などで応援していただけるとさらに励みになります!

一つの作品の人気が出れば、本作含めて他作品の執筆モチベーションにも繋がりますので、何卒よろしくお願いいたしします!!!


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